July 16, 2008

ゴールドフィンガー

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007シリーズは偉大である。
とにかく世界的に影響が大きいのだなぁ、と、先日みなもと太郎が監修した手塚治虫の作品集「手塚治虫WORLD これがホントの最終回だ!少年マンガ編」読んでしみじみ思った。とにかく悪の秘密組織と戦うエージェントみたいなヒーロー像がこの時期の少年マンガには多く描かれているのだけど、そのひな型はまちがいなくジェームズ・ボンドなんだもの。特殊装備の数々を武器にする発想は「ロシアより愛をこめて」のアタッシェと「ゴールドフィンガー」のアストンマーチンDB5から出ている。「電撃フリント」みたいな類似品も多く作られているのはいいとしても、はるか日本の少年マンガにも多大に影響を与え、それらを読んで育ったわしらのような世代にはやはり007は偉大な映画シリーズなのである。
やっぱりこの特殊装備のアストンマーチンDB5が登場する「ゴールドフィンガー」はインパクトが強かった。小学館の化学図鑑みたいな読み物でも紹介されていたくらいだったし。でも、なかなか見ることはかなわず、結局初めて見たのはテレビの「月曜ロードショー」でだったと記憶しているが、やっぱアストンマーチンは感動ものだったなぁ。

今にして思うと、「何のための装備なの?」と思うところもあるけど。

そんなことはともかく、この「ゴールドフィンガー」は後々のシリーズのひな型になった、そういう意味でも重要だぞ。
今回もきちんとソフトを買ったけど、007シリーズの場合はおまけが面白いのでありがたい。出演者のインタビューで構成されたメイキングはかなり面白かったよ。
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ゴールドフィンガー GOLDFINGER
1964年英 
監督 ガイ・ハミルトン
製作 アルバート・R・ブロッコリ、ハリー・サルツマン
音楽 ジョン・バリー
美術 ケン・アダム
主題歌 シャーリー・バッシー

まぁ、いまさら物語をまじめに辿ってもしかたないのでテキトーに
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メキシコでの任務を成功させた007・ジェームズ・ボンド(ショーン・コネリー)は続く任務としてイギリスの実業家、オーリック・ゴールドフィンガー(ゲルト・フレーベ)の監視を命じられマイアミにて休暇がてらテキトーにフェリックス・ライター(セック・リンダー)とともに遂行しておったが、ゴールドフィンガーがカードのイカサマをやっていることに気付いたことから調子に乗って彼の泊まる部屋に乗り込み、イカサマの片棒かついでいた秘書のジル・マスターソン(シャーリー・イートン)をたらしこんでゴールドフィンガーを負けさせてしまう。
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その夜、ボンドが部屋でジルとイイことしてたところ何者かが侵入、ボンドが気を失っている間にジルは全身に金粉を塗られて絶命していた。実行犯はゴールドフィンガーの用心棒、オッド・ジョブ(ハロルド坂田
本国に戻ったボンドはM(バーナード・リー)から叱責され、今回の任務を正式に伝えられる。ゴールドフィンガーはかなりの量の金塊を保有しているが、その金塊をなぜかイギリス国内から不法に海外に持ち出している。その目的である「グランドスラム計画」を探り出すことが任務。マネペニー(ロイス・マクスウェル)にいつもどおりに送り出され、Q(デズモンド・リュウェリン)から今回のスベシャルガジェット、アストンマーチンDB5を受け取り改めてゴールドフィンガーに接近。イカサマゴルフに勝利して彼をへこませる。Goldfinger11_2
自分の会社のあるスイスに車ごと移動したゴールドフィンガーを追うボンドを謎の美女が追い越していく。彼女はティリー・マスターソン(タニア・マレット)姉のジルを殺されたことで、ゴールドフィンガーへの復讐を果たそうとしていたが失敗。ゴールドフィンガーの工場に侵入し、車の外装を溶かして金を取り出していたことを突き止めたボンドとともに逃げ回ったがオッド・ジョブに殺されてしまう。ボンドはさらに逃亡しようとして失敗し捕らわれる。
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殺されそうになるボンドだったが何とかグランドスラム計画をダシに助けられ、プッシー・ガロア(オナー・ブラックマン)の操縦する飛行機でケンタッキーまで連れて行かれる。牧場の中に監禁されたボンドだったが部屋から脱走し、グランドスラム計画についてゴールドフィンガーが説明する部屋の下に侵入、計画の全貌を知る。彼はフォートノックスに貯蔵されている金を放射能で汚染し、金の相場をつり上げて自身の保有する金の価格を上昇させ莫大な利益を得ようとするものだった。
見つかって連れ戻されるボンドだったが、ガロアを何とか説得しようとしてまたまたガロアとラブラブに。エッチなやっちゃ。
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いよいよグランドスラム計画決行の日。計画は成功したかに見えたが、実はガロアが裏切っていて土壇場でゴールドフィンガーの計画は台無しになる。金の貯蔵室に核爆弾とともに置き去りにされたボンドはオッド・ジョブと激闘の末に彼を倒し、核爆弾の時限装置をギリギリで停止させることに成功。
アメリカ大統領に招待されたボンドだったが、乗った飛行機には逃亡したゴールドフィンガーが乗り込んでいた。ボンドを倒そうとするゴールドフィンガーだったが、発砲した機関銃の弾丸で飛行機の窓が割れ彼は空に吸い出されてしまう。
一方のボンドとガロアは無事パラシュートで降下に成功、またイチャイチャするのでありました。


いつもだけど007シリーズのDVDはおまけが充実してて、本編よりも自分的にはこっちの特典のほうが面白かった。メイキングのインタビューではまずガイ・ハミルトンが演出のポイントを語っているが、
「まずは本編とは関係ないエピソードで笑いをとり、こっちのほうに観客を引き込むんだ」との話。
これって、「寅さん」のイントロダクションの夢オチと同じじゃないか。長寿シリーズのキモは相通じていたのだと知った一瞬だった。いきなりカモのかぶりものをして現れるボンドは確かにとぼけている。現場もとぼけてて、今回ゴールドフィンガーを演じたゲルト・フレーベは実は英語がさっぱり話せなかった。最初にエージェントに確認したら「英語は問題ない」という話だったのに、実はダメだったんで大変だった。現場で彼の下手な英語に合わせて台詞を出すときに、共演者は笑いをこらえるのに大変だったらしい。完成本編ではマイケル・コリンズにより吹き替えられた。
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他にいろいろと笑えるかもしれんのは、最初のマイアミでのボンドとゴールドフィンガーの登場シーンは明らかにセットでの撮影という、演じている本人たちには気の毒なのがバレバレなところとかゴールドフィンガーの手下が東洋系の野郎ばかりという点とか。自家用機のアテンドもアジアンだってのは、好みの問題なのか?ゴールドフィンガーがアメリカのギャング相手にグランドスラム計画を説明してるけど、そのためにあんな大掛かりな部屋が要りようなのかなぁ?
そういえば、ゲルト・フレーベは「忘れ得ぬ慕情」で岸恵子とかと日本で共演していたぞ。この作品もソフト化してほしい。ジャン・マレーとかダニエル・ダリューも出演している、イブ・シャンピ監督の作品。
ゲルト・フレーベはすごい人格者だったそうで、ナチ党員資格を隠れみのに大戦中ユダヤ人の救済活動をしていたという話を聞いたけど、結構な本数でドイツ軍人を演じていたことを考えると心中複雑なものもあったかもしれんなぁ

最初の「ドクター・ノォ」は制作費90万ドルの低予算だったが、これが「ロシアより愛をこめて」が大ヒットしたことから第3作「ゴールドフィンガー」は一気に300万ドルまで予算が増えた。この結果、小道具などに予算を回すのが楽になったことからスペシャル・ガジェットとして車を改造することになり、アストンマーチンにオファーしたところOKとなり作られたのがこのDB5カスタム。
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アストンマーチンは正式にはアストンマーチン・ラゴンダ社というそうで、1959年のル・マン24時間で優勝し英国車で初めてワールドスポーツカーチャンピオンシップを獲得したことからスポーツカーのメーカーとしてネームバリューが高かった。オリジナルの設定ではボンドの愛車はベントレーで、本作でも会話に出てくるが「あれは引退だ」とQに切って捨てられちゃってる。4リッター直6エンジンで282bhp/5500rpm、288lbs-ft/3850rpmと高性能。
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で、登場したDB5はフロントおよびサイドウィンドウは防弾ガラス装備、前部ウィンカーに2丁の機関銃を内蔵、ホイルからは併走する車を破壊するカッターが伸びて出てくるし後部には防弾板、テールランプからはオイルを噴出させ煙幕も張れる。ナンバープレートもスイッチ一つで切り替え可能で車内には発信機を追尾するレーダーを装備し、一番の目玉は助手席の射出装置。「サンダーボール作戦」で登場したときには高圧放水までやっていた。
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映像特典で初めて知ったのは、実はこれ以外の装備があること。本編では使われなかったが電話も載っていたし、バンパーが伸縮し、座席の下には武器を収納していた。

で、その実際はというとナンバープレートの回転機能は実際に使えたけど前面の機関銃は寸法的に入らなかったので圧縮空気で発射しているように見える仕掛けだけだった。防弾版とオイル噴射も実際に使用可能だったけどこの二つは一緒にはトランク内に収まらなかったので、撮影現場でこの二つを入れ替えしながら使った。ホイルから伸びるカッターは全くの別撮りで機能はなし。これって、ああいう状況になると確信して装備していたとしか思えない装備なんだけどな~。座席の射出装置も本当使えたけど、さすがに人が乗っている状態での発射はムリだったとのこと。でも、実際に使える装備が結構あるのには驚いた。「私を愛したスパイ」で出てくるロータスエスプリなんてまさに特撮で実際には使えない車だったことを考えると、これはすばらしい。えらいぞアストンマーチン。
このギミックのおかげでDB5は大人気。本作の撮影用に2台改造され(正確にはアップ撮影などで使うためのギミックに凝ったのを1台とスタント用でそんな大掛かりな改装をしていないのを1台)撮影終了後にプロモーションにも使われたものがさらに2台あった。アップの撮影に使われた、仕掛けに凝ったほう(通称"star")は1968年に擬装を外され、普通の中古車として売却されたけど実はこの車DB4の改造型だそうで、サイドエンブレムなどがDB5とは微妙に異なる。車の素性を知っていたバイヤーが手に入れた後に再度改造してギミックを施し、コレクターの元を転々としていたが1997年に盗難に遭い、いまだ行方不明。シャシ番号はDP/216/1

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スタントに使われたのは本当のDB5で、劇中ハードに乗られていたもの。現在コレクターが所有。イオンプロダクションで所有しPRに使われた2台のうち1台は2006年にオークションで210万ドルで落札され、スモーキーマウンテン自動車博物館に展示。もう1台はオランダの博物館で所有しているそうな。
通常のクーペボディは886台製造されたけど、こんだけ映画で人気が出たことを考えるとちょっと少ないような気もする。後のシリーズでも登場してるし。

この次作が「二度死ぬ」なんだけど、ここで登場するのが我らが日本代表のトヨタ2000GTオープンカー。でも、考えてみるとDB5が4リッターエンジンなのに2000GTはその名の通り2リッター、282英国馬力に対して150馬力と悔しいほどの性能差。ル・マンでの優勝は日本メーカーでは1991年のマツダで、アストンマーチンは1959年。その差は32年。
バックボーンの差が大きいことを実感してしまう。しかもマツダの後には日本勢の優勝がない。F1でも、ホンダの参戦が1964年から始まりホンダエンジンがウィリアムズに供給されてタイトルを獲るまでが27年かかった。

モータリゼーションの伝統と格式の差がしみじみ感じられるなぁ。
エンツォとかブガッティからチンクチェントとかのミニカーまで、間口の広さでも差がある。自動車の文化という点で考えると面白い気もします。
FIAがアジアンに意地悪なのは面白くないけど。

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もし次に日本で007を撮るとして(「赤い刺青の男」は日本が舞台)ボンドカーには何がいいか?と考えると現状ではGT-Rくらいになってしまうかな?それもちょっとつまんないけど、あとはLF-AとかNSXぐらいが間に合うか。ジミに行動するはずのスパイが高級スポーツカー乗り回すはずはないんだけど。

個人的には、それでもやっぱりトヨタ2000GT、買えるなら欲しいっす。
トヨ2はやはり、日本の自動車の宝だ。

ヤマハ2000GTという人もいるけれど。

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June 26, 2008

女ガンマン 皆殺しのメロディ

ひさびさにホームグラウンドに帰ってきたような感じであります。

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このソフトだって、出るとすぐ喜んで買ったのになぜか見てると中断せざるを得ないことがたびたびあって、そうなると結局見るのが面倒くさくなってしまう。
それでもやっと今回見ることができた。
やっぱ(若い頃の)ラクエル・ウェルチ好みです~

ラクエル・ウェルチの出てる西部劇というと「100挺のライフル」ってのがあるけど、これも日本国内ではDVDにはなっていない。こっちも見てみたいんだけどなぁ~輸入版を見るのは前回「マイラ」でやったけどだいぶ疲れたから、できれば避けたい。
どうも西部劇というと我々日本人にはいわゆる「マカロニウエスタン」のイメージが強い。だいたいパターンは決まってて、腕利きの主人公が敵役に陥れられて復讐をとげるまでのお話が多い(と思う)
本家の西部劇でもやっぱジョン・ウェインの主演作なんかでは明るく楽しく敵と戦って勝利するようなのとか、徹底的に勧善懲悪のお話という感じがあるんだけど(自分だけか?)ニューシネマ以降の西部劇はこの辺がガラッと変わって、徐々にシリアスなドラマ志向になっていったがこれは当然の帰結かもしれない。
能天気にネイティブアメリカンをやっつける話ばかりでも良いのか?あっちのほうが元々は先に住んでいた人々なのに?という、アメリカ人のアイデンティティの根幹に疑問が出てきたことが一番の問題なのかもしれないなぁ。
勝手に先住民族を悪者扱いするのは間違ってると、ワタシも思う。そりゃぁ、自分達の住んでるところにいきなり変な奴らが現れて勝手なことされたら普通怒るだろ?ケンカになっても仕方ないだろうよ。物事をフェアに見ることがやっとできるようになってきた成熟の現われだろうなぁ、と勝手に分析してみる。

日本でも活劇ばかりの時代劇だったのに深刻な物語ばかりになってしまったもんな。大河内傳次郎から片岡千恵蔵、嵐寛寿郎らの主演作のごとく明るい剣戟映画から大川橋蔵の主演作あたりまでの明るい勧善懲悪(あるいは怪談物)の一家揃って見に行けるような娯楽作から、どんどんリアリズム志向になって結果的にはその反動で作られたんかなぁと思う東映のポルノ時代劇にいたるまでの変遷がある。最近のはとにかく藤沢周平の原作ものばかりで、それなら山本周五郎ももっとピックアップしてほしいんだけどな。
西部劇もニューシネマの傑作「明日に向かって撃て!」に始まり「ソルジャー・ブルー」なんて問題作からどんどんかつてのヒーロー像のたそがれを描くものが増えてしまい、「ロング・ライダース」「許されざる者」なんてドラマ志向へ変遷していった。不思議なもんで、こちらはあまりお笑いとか艶笑系には流れていないな。
まぁ、そんな映画史の分析してもしょうがないんで話を「女ガンマン」に戻すと、製作されたのが1971年だからそれこそニューシネマの大きなうねりがアメリカ映画を洗っていた時期なのに、こんなマカロニテイストの西部劇を作ろうってんだからその心意気は買おう。何と言ってもラクエル・ウェルチが主演だし

そう、すべては(基本的に)その点につきるのであります。
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女ガンマン 皆殺しのメロディ 
Hannie Caulder 1971年英 
監督 バート・ケネディ
音楽 ケン・ソーン
出演 ラクエル・ウェルチ ロバート・カルプ 
アーネスト・ボーグナイン クリストファー・リー他

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メキシコとの国境に近い街でフランク(ジャック・イーラム)、エメット(アーネスト・ボーグナイン)、ルーファス(ストローター・マーティン)のクレメンス三兄弟が銀行強盗に押し入るが、失敗。ほうほうのていで逃げついた先の小さな牧場で馬を盗もうとするが牧場主のジム・コールダーに見つかってしまう。それをジャックとエメットがごまかそうとしていたら、ちょっとイカれたルーファスがジムを撃ち殺してしまった。三人はジムの家に押し入り、そこにいたハニー(ラクエル・ウェルチ)はレイプされてしまい、家も焼かれてしまったのだった。今風の行きずりの犯罪ですな。
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夫も家も、着る服も失ったハニーはポンチョ一枚で夜を明かしていたが、そこにトマス・ルーサー・プライス(ロバート・カルプ)が馬のための水を求めて立ち寄る。警戒して彼を寄せ付けないハニーだが、プライスの方が一枚上でジムの銃を取り上げられたハニー。それでも隙をみてトマスを殴り倒し、気絶させてしまう。これに乗じて馬を奪おうとするハニーはプライスの馬には死体が乗っているの発見。馬を盗むのをやめ、そのまま朝を待つことにした。
翌朝、プライスの銃を使っていたハニーは彼にとがめられる。
プライスは腕利きの賞金稼ぎだったのだ。射撃の腕前はプロフェッショナル。ハニーはクレメンス兄弟への復讐のため、自分の体を代償にプライスに射撃を教えてくれるように頼むのだが、プライスはそれを断る。
「君はウソをつく。触ろうとすればウィンチェスターで撃たれるんだろ?」

ひたすらプライスの馬を追い教えを乞うハニー、でも答えは「断る」
それでもプライスはハニーを疎んじるわけでもなく一緒に夜営してるんだが、その彼女がうなされているのに気付く。プライスは彼女の身に何が起こったかを聞き、結局は彼女の気持ちをくんで銃の使い方を教えることに。
道中、町でハニーの服を整えつつ二人はメキシコに住む腕のいい銃職人ベイリー(クリストファー・リー)の元へ向かう。
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プライスはハニーのため、スペシャルメイドの銃をベイリーに作らせ、いよいよ射撃のコーチが始められる。一方のクレメンス兄弟、やることなすことなんでか上手くいかない。
ある日、無口な牧師(スティーブン・ボイド)がベイリーの元に銃の修理を頼みにやってくる。ここではこれだけ。
ベイリーの家で彼の子供たちと楽しく遊びながら、ひたすら銃の修練を積むハニー。その彼女を見守るプライスの思いにベイリーは気付いているのだが、何もしてあげられない。そんなある日、山賊風のヤバい集団がベイリーの家を襲う。応戦するプライス、ベイリー、それにハニー。
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「とどめを刺すんだ!」初めて銃で人を撃ったハニーにプライスが叫ぶ。でもやっぱ、初めて人を撃ったハニーにはそこまではできなかった。プライスが止めを刺してくれた。しっかりと相手を倒さなければ自分の命が危ない、そのことを実戦の場でやっと理解したハニーであった。
とうとうクレメンス兄弟に復讐を果たすときがきた。町に入るプライスとハニーの二人を見つめる牧師。またしても銀行強盗に失敗したクレメンス兄弟がこの町にもうすぐやってくる。でも、プライスはハニーに
「どうしてもやるのか?…今からでも遅くない。負けたら死んでしまうんだぞ」と提案。
「俺も男だ、下心があったから君に手を貸した。きみは俺を利用したのか?」
ハニーの身を案じてのプライスの言葉なんだけどハニーはそれを受け入れない。もっと上手い言いかたしろよなぁ。
ハニーも「もうあなたは用なしよ」と突っ返すもんだから二人は別行動。
それでも、プライスは街中でフランクを発見。彼の身柄を確保しようとしたが他の二人にその様子を見られ、エメットの投げたナイフがプライスの腹に命中。三兄弟はこの隙に逃げてしまう。その姿を見つけたハニーは倒されたプライスをホテルに運ぶ。
「死なないと約束してくれ、ハニー」との言葉を残し、プライスは息絶える。
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いよいよハニーの復讐開始。女郎屋にいたフランクをまず倒し、さらにエメットとルーファスの二人分の墓穴を掘らせる。これを知った二人は怒り心頭、まずルーファスが店にいたハニーを襲うが返り討ちにあってしまう。
街中でドンパチやったもんだから保安官は「お願いだから街を出て行ってくれ」とハニーに告げる。彼女は保安官に残るエメットへ街はずれの刑務所跡で待つとの伝言を頼み、そこでエメットを待つことに。
最後の決闘の場にやってきたエメットはハニーに気付かれないうちに彼女を得意の投げナイフで倒そうとするが、なぜかそこにいる牧師にジャマされて自分の居場所がバレてしまった。この人何者?
サシでの拳銃勝負の結果、ハニーはエメットを倒しついに復讐を遂げるのだった。
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この作品、実はアメリカ製でなくてイギリス製の西部劇。そのせいか少し毛色が違っていて、自分的にまず思ったのは派手な血のりの色。アメリカ製でないとこんな色出すのね。ともすればオタ的に主人公を美少女にしてもいい感じのこの物語のプロットは後にタランティーノが「キル・ビル」でいただいてきたものだそうで、それを頭に入れて実際に見てみると「なるほどねぇ」と納得してしまう。イギリス製の西部劇ってのは珍しいのかと思ったらそうでもないらしく、チャールズ・ブロンソン主演作の「チャトズ・ランド」もイギリス製だったとは意外。
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イタリア製西部劇を称する「マカロニ・ウエスタン」ってのは和製英語で、本当は「スパゲティ・ウエスタン」というそうな。開祖はセルジオ・レオーネで彼の監督した「荒野の用心棒」からイタリア製の低予算西部劇が一気にブレイク。よく見たなぁ、月曜ロードショーで「荒野の1ドル銀貨」とか「夕陽のガンマン」とか、仲代達也の出てた「野獣暁に死す」とか。制作費安く上げるのにユーゴスラビアとかスペインの原野でロケしてて、ドラマ性とか叙情性なんてのは二の次にして乾いた雰囲気にニヒルな主人公、残虐性の高い描写に派手なアクションとガンファイトというのが定番なんだけど、これって「モンド映画」に通ずるところがあるよな。でも、70年代初期のイタリア製アクション映画ってのはいかにも「金かかってません」という感じのばかりだったな~。「黄金の七人」とかセンスいいのもあったのに、70年代に入るとそんなセンスの良さもどこかにいってしまった。しいて言うなら、この「女ガンマン」はユーロウエスタンってことになるのかな。プライスのキャラクターが古きよき人物なのが英国風。
でも、不思議なもんでアメリカン・ニューシネマの台頭につれ、マカロニウエスタンもしぼんでいく。なぜなのだろう?どうしても飽きられてしまったというのはあるだろうけど、手軽な娯楽性はテレビにとられてしまっていたせいなのかもしれない。
結果、イタリア製のモンド映画とかホラーとかはどんどん過激路線にシフトしていったのかな。
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小難しいことはいいとして、とにかくラクエル・ウェルチのサービスカットが多くてうれしいなぁ。まず序盤の、レイプされて家を焼かれてしまうところからしばらくは毛布をポンチョに仕立てたのを羽織っているのだけど、この下はほんとに何にも着てないじゃないか!すごいぞラクエル・ウェルチ。すばらしい役作りだ。この後、プライスにズボンを買ってもらうのだがそのズボンも大きいから、店員に「濡れたまま穿いてればなじみますよ」といわれてこれを着たまま入浴するシーンもある。当然、下着はつけていないのでわくわく~
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銃に興味のある向きには、登場する銃器も面白い。これはプライス役のロバート・カルプがかなりのガンマニアで、どうも彼がいろいろとディレクションした結果らしい。ダブルアクションのリボルバーとか、おなじみのウィンチェスターでも銃身の短いトラッパーズ・カービンM92とか、なじみのないものばかり。ソフトについてくるライナーには使われた銃器の詳細が記してあるので、読み物としても面白かった。個人的に面白かったのはプライスが使っていたフロントホルスター。左腰に挿してあるこんなホルスターは西部劇では見たことないぞ。ハニーの使う専用銃もダブルトリガーの変わった銃で、えらい口径がでかいけどほんとにこれで女性向のスペシャルメイドなの?
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役者としては、あまりにハマり具合が微妙なクリストファー・リーが何か面白い。それと一番のキャストは謎の牧師を演じたスティーブン・ボイド。この人、よく見たら「ミクロの決死圏」で主役だったし、ここでもラクエル・ウェルチと共演してたじゃないか。今回は台詞もないし、見事なまでの「敵でもなく味方でもなさそうな男ぶり」
悪役ではアーネスト・ボーグナインがやっぱりいい感じだったけど、クレメンス兄弟のほかの二人もいい味出してる。特にジャック・イーラムの不敵なふんいきがステキだった。ジャック・ストローターは一番この中で芝居がじょうずそうだから、他の芝居が見てみたいな。
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てなわけで、ほんとに見るのも難儀してこうやってブログに上げるのも難儀したな、今回は。
見て損はしなかったんだけどな。

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June 01, 2008

異母兄弟

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三国連太郎の出演作は実はさっぱり見ていないのだけど、その昔、西田敏行が確か読売新聞だったと思うけど連載記事を書いていて、釣りバカ日誌の映画化にあたり三国連太郎と共演することについて書いていた文に「三国連太郎は老け役のために歯を抜いた」という記述があった。
なにもそこまで、と思ったけど実際にはその映画でどんな役を演じたのか見ていなかった。が、どうもそれがこの「異母兄弟」だったらしいと聞き、独立プロの作品には興味もあったので見てみました。

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異母兄弟 1957年 独立プロ作品
監督 家城巳代治
撮影 宮島義勇
原作 田宮虎彦
出演 三国連太郎 田中絹代 中村賀津雄 南原伸二 高千穂ひずる他

大正10年 鬼隊長として恐れられる陸軍大尉、鬼頭範太郎(三国連太郎)の家に住み込みの女中としてお利江(田中絹代)がやってくる。範太郎の妻・つた(豊島八重子)は病に臥せっていたが、この範太郎、とにかく子供たちに軍人になる教育ばかりでしつけは厳しい。範太郎の家には住み込みでもう一人マス(飯田蝶子)もいて家事を行っていたけれどまだ若いお利江に範太郎ムラムラしてしまい、馬小屋で手ごめにしてしまう。そしたら身ごもってしまい、このことが連隊長(永井智雄)にも知れてしまい、範太郎すごーい体裁が悪い。Ade04626
とにかく上官にはへいこらとしているのに部下にはとことん威張り散らす性格の悪い男なのだ。連隊長にどうするのか聞かれた範太郎は、妻も亡くなっていたこともあり後妻に迎えますぅ、と答えてしまう。
お利江はまず良利を産み、後に智秀を産むのだけどこの二人と長男の一郎司・次男の剛次郎への範太郎の扱いの差はこれまたひどいのだ。

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時は流れて昭和17年。範太郎も少将で退役して田舎に引っ込んでいる。その街を通過する列車に乗っていたのは海軍士官になった良利(南原伸二)停車した車両に智秀(中村賀津雄)がかけより母からの差し入れを兄に手渡すがこのとき長男・一郎司(西田昭市)と次男・剛次郎(近藤宏)の出征祝いが開かれていた。
帰り道で智秀は女中のハル(高千穂ひずる)と行き会い、家に戻ると母のお利江は忙しく立ち働いている。
範太郎は息子たちにまた昔の武勇伝を聞かせて自慢ばかりしている。
宴も終わり、飲み足りない一郎司と剛次郎ははるに酒を持ってこさせるがそのハルに「帝国軍人を慰めんかぁ」と手篭めにしようと襲いかかる。見ていた智秀は剛次郎にくってかかるが、何度も投げ飛ばされてしまい頭にきた智秀はお銚子で殴りかかろうと、したところにお利江が間に入りなんとかとりなす。剛次郎は以前からお利江の子供たちに反感を持っていたから、ムキになるんだよな。
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ある日、在郷軍人会の会合に範太郎が出かけて留守だったとき(お利江も留守)家に帰ってきた智秀はハルの家事を手伝い、実はお互いにラブラブなもんだから二人でくっついて仲良く歌を歌っているところに範太郎が帰宅。二人の姿を見た範太郎は激怒してハルを追い出し、智秀に井戸からくんだ水をドバドバとかけたもんだから智秀は高熱を出して入院。退院して家に帰ると通っていた中学は退学させられ、暇をもらって田舎に引っ込んでいたマスの元へ所払いされてしまう。気楽にマスのもとに行った智秀は先に帰っていたはずのハル(ハルはマスの姪だった)は女郎屋に売られてしまっていた。ショック大きい智秀はそのまま家出して消息不明になる。
良利にもついに前線に出動命令が出た。

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そしてまた、終戦の翌年。出征した一郎司も剛次郎も、良利も戦死していた。範太郎の家では家財を売ってお利江が食べ物を買出ししていたが、手に入れた酒を一郎司と剛次郎の写真に供えただただ悲嘆にくれる範太郎。お利江は良利の遺影をたんすに飾り、お供え物をしていた。そこへ智秀が帰ってきた。家出してからは飯場を渡り歩き生計を立てていたのだという。喜ぶお利江だが、範太郎はそんなことはどうでもいいことと言い放ち良利の写真もいろりの灰に投げ捨てる。「もうこんな家からは出て行こう!」と言う智秀に、お利江は言う。
「ここは私の家です。出て行きません。この子はあなたの子です。…今だから言わせてもらいます。私は女中ではありません」
とうとう腕力でも智秀に負けた範太郎は、ただただ一郎司と剛次郎の思い出に浸り涙する。
それに対して生き生きと立ち働くお利江と智秀の姿があった。


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田中絹代ってすごいなぁ、と思ったのはまず、もともとのお利江は16歳で範太郎の家に来たことになってたそうだから序盤では16歳の役を演じていたわけで、思いっきり無理があると思いきやそうでもないこと。立ち居ぶるまいがちゃんと若い娘のと変わらないのに感心。表情は…まぁ仕方ない。それに対しての三国連太郎の老け役だけど、これはこれで悪くないんだけどやはりまだ老けきっていないのが判るのだな。細かい所作とか、背中の丸まり具合とか細かい細かいポイントなんだけど見てて思ったのはこの所作が重要なのだということ。そういう意味では、何も歯を抜くまでしなくても…というのが正直な感想だった。まぁたしかに、顔はだいぶ老けますが。それでも熱演には変わりなくて、田中絹代と中村賀津雄に水をばしゃばしゃとかけるシーンは凄い顔だし、かけられるほうも良くやったなぁ。
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この範太郎ってとにかく上には弱く下には威張りまくりの、典型的な軍人のキャラなのだが結局体制が変わるとよりどころがなくなっちゃうから完全に腑抜けになる。これはホント、男性の一典型。こんな風に終戦による価値観の変化についてけなかった家は結構あったと思うな。愛憎劇のどろどろなんだけど、これを家城巳代治は変にくどくない演出で見せてくれている。プロダクションムービーから離れて撮りたい作品を撮るために独立プロを興した中心人物と考えると、もっと作品にはくどい思い入れが濃く出てくると思いきやそんなこともないというのが好感持てます。
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この作品には協定で本当は出られないはずの高千穂ひずるも出てるけど、本人は「お姫様役はもうたくさん」と思って東映との契約をあえて更新していない時期にこの作品に出演。でもとても楽しそうにハルの役を演じていて、映画の流れ的には見事にリリーフ的な役割。

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この作品の撮影を担当した宮島義勇は「天皇」なんてあだ名をもらってた人で、略して「宮天」。東宝争議の中心人物の一人だったけど、後に東宝を離れてフリーになっていた。現場には下駄履きで現れて、監督に対して真っ向ケンカを売るタイプの人だったそうな。だいたい監督に対して「映画の撮影をオレが教えてやる」と言い放つ人だもん。この作品の後、東映で「裸の太陽」という作品を撮ったときにロケ終了し東京に戻ろうかというとき、東宝争議の際に会社側にたって対立した監督の渡辺邦男(こちらも新東宝で「渡辺天皇」との渾名をもつ)がたまたま「おこんの初恋 花嫁七変化」を撮っていたので「来なかったのは軍艦だけ」と言われた東宝争議の中心人物の「両天皇」の鉢合わせを避けるべく、東映のスタッフが宮島義勇を「裸の太陽」のスタッフともどもロケ地の小野新町に足止めさせて1ヶ月毎日焼酎飲みながらの反省会。結局現地の店の焼酎を飲みつくしてしまったので帰らざるを得なくなり、帰ってきたら渡辺邦男と宮島義勇がばったり。すわ一触即発か、と思ったら二人で談笑していたのを見て周囲は大騒ぎして損したとくさりまくったという逸話もあるそうな。
プログラムピクチャーでなく、物語としての映画を撮ろうとした志は結果的にはこの後に行き詰るけど、結果的には後のATG作品などの独立系作品の下地を作った。当時の映画会社の了見は狭かったのね。
製作する方々は、もっと「いい映画を提供しよう」というサービス精神を持ってほしいもんである。

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May 13, 2008

洲崎パラダイス 赤信号

幕末太陽傳」が一般には代表作の川島雄三が、本人としては一番気に入っていた作品だったと聞いてソフトだけは去年から確保してあったのに、今頃になって見ているのがダメダメだなぁ。
見てみたら、これが面白いんだ。でも、こうやって感想などテキトーに書いてるのは気が重い。
劇中の三橋達也のダメダメっぷりが自分みたいで、こればかりに思いが至ってしまうのよね。
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洲崎パラダイス 赤信号
1956年日活
監督 川島雄三
出演 新珠三千代 三橋達也 河津清三郎 轟夕起子 芦川いづみ 小沢昭一ほか



達治(三橋達也)と蔦枝(新珠三千代)が二人で眺めているのは、勝鬨橋の下を流れる隅田川。
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「ねぇ、…どこ行く?」と尋ねる蔦枝に達治は答えがないまま。仕事もなく、所持金も60円しかない。
しびれを切らした蔦枝はバスに飛び乗る。後を追って達治も乗り、着いた先は洲崎弁天町。赤線があるこの町には「洲崎パラダイス」のネオンが輝いていた。
「また前のお前に戻っちまってもいいのか?」
達治の問いに答えず、洲崎遊郭の手前の橋のたもとにある一杯飲み屋・千草へ蔦枝は入る。
「おかみさん、何か仕事ありませんか?」
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千草の窓には「女中入り用」の紙があった。おかみのお徳(轟夕起子)はあまり乗り気ではなかったが蔦枝がいつの間にか店の仕事を手伝っていたのでそのまま働いてもらうことに。客の落合(河津清三郎)がさっそく蔦枝を見つけて、口説いたりしてるがそれにノリノリの蔦枝の姿を眺める達治は面白くない。
翌日、そんな達治に蔦枝は「二人で住み込みは無理だから、しばらく別々に働いてみましょうよ。そうすれば住むところも借りられるわよ」と提案するんだけど、そう言われると達治としては自分の役立たず加減を知らされてやっぱり面白くない。
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お徳が達治に見つけてきてくれた仕事は近くのそば屋・だまされやの出前持ち。気乗りしなくても、ちっとは男の甲斐性を上げたい達治はその仕事を受けることにした。そば屋の従業員はしっかり者の玉子(芦川いづみ)と出前持ちの先輩である三吉(小沢昭一)その夜、隣に達治がいない蔦枝は仕事に気が入らない。
翌日、達治の様子を見に行った蔦枝は玉子と対面、その存在が気になる。達治に給金を何とか前借できないかと相談する蔦枝だが、そんなことできないと困る達治。それでも夜に千草に行くと告げる。その夜、落合がまた千草にやってきて蔦枝とはすっかりいい仲になってしまい、一緒にすしを食べに行ってしまう。一方の達治、金に困って店の売り上げをちょろまかし雨の中を蔦枝の元に行ってみると彼女はいない。必死になってそこいら中を探し回る達治だが、どうしても蔦枝は見つけられなかったので「だまされや」に戻ると玉子がやさしく達治を迎えてくれたのだったが、そのことにいたたまれない達治はまた雨の中に飛び出していく。千草で飲んで荒れる達治だが、お徳にとがめられたことからまた雨の中へ。
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翌日、蔦枝はけろっと千草に戻ってくる。
「あの後また飲んじゃって、雨だったし、その代わり日本橋でこの着物買わしてやりましたわ」
そんなところに玉子が訪ねてくる「達治さん、来てませんか?夕べから帰らないんです」
あんな奴のことなんか知らないわ、とクサる蔦枝。そこに千草の客の運転手、信夫(牧真介)が初江(津田朝子)と現れる。遊郭でまだ客をとらないうちに初江にまともな仕事につかせてやりたい、とお徳に相談するのだった。
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義治を近所で探すお徳と蔦枝だが、彼は見つからない。そこに落合が現れて蔦枝を住まわせるのにいいアパートが見つかったから見てみないか、と告げる。蔦枝はそのまま落合とともに行ってしまうのだが、その後に達治が現れ蔦枝の行方をお徳に尋ねる。神田のあたりに行ったらしいと教えられた達治は半分狂ったように神田へ向かう。その晩、洲崎の女と逃げて行ったお徳の夫・傳七(植村謙二郎)がひょっこり帰ってきたのでお徳は嬉しさに涙してしまう。
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食うものも食わずに神田の電気街(アキバですな)で落合を捜して回る達治だったが、どうしても落合を見つけられない。結局、ぼろぼろになって千草に戻ってきた達治を迎えたのは留守番していた玉子だった。彼女に諭され、達治はだまされやの出前持ちの仕事に打ち込むことに。

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しばらく経って、千草に蔦枝が現れる。落合とくっついても、やはり達治のことが気になって仕方がなかったから会いに来たのだが、お徳は何とか二人を遠ざけたかったので達治はもうこの街にいないと蔦枝に告げるが、たまたま達治と行き会った傳七から達治がまだあの「だまされや」で働いていることを知る蔦枝。玉子のとりなしでうまくいっていると教えられて蔦枝はなおさら面白くない。「だまされや」に乗りこんだ蔦枝はその玉子に出くわすが、達治がなかなか帰ってこない(千草で足止めされたため)ので、そば屋を出て街をさまようことに。
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日が暮れるまで洲崎のあちらこちらを歩き回っていた蔦枝は、橋の上で血相変えて走る信夫に出くわす。初江がいなくなったのを捜しに行こうとしていたのだが、それをからかった蔦枝は信夫にびんたを食らう。また雨が降りだしたなか、パトカーが盛大に現れる。なんと殺人事件発生、集まるやじ馬の中にはお徳の姿もあった。犯人は女だって、と話している声の中、倒れてムシロかけられていたのはなんと傳七。傳七は駆け落ちした女に殺されてしまったのだった。
その女につかみかかろうとするお徳を介抱していた達治と、事件を聞き千草に現れた蔦枝は再会してしまう。

千草で語る落合とお徳。結局、達治と蔦枝はまたどこかへ行ってしまった。
「都合、10万の損だったな」と笑う落合だが、女遊びに懲りた様子はない。
達治と蔦枝はまたまた勝鬨橋の上で川を眺めている。
「これからどうするの?ねぇ、あんた決めてよ」と蔦枝の問いに達治はよぉし!と即決してバスに乗り込む。
蔦枝も彼を追ってバスに乗りこむ。何となく、何かが変わりそうなエンディング。


川島雄三というと、45歳で亡くなるまでに51本の監督作があるという結構な多作でその作品がみんな粒ぞろいということもなく、はっきり言って玉石混合(プログラムピクチャも「生活のため」と平然とやっていたのは有名)代表作は「幕末太陽傳」になるのかなぁ、と思っていたけどこの「赤信号」見たらこっちのほうが気に入った。とにかく、演出に無駄がなくて物語の流れがぴたっと決まっているのが気持ちいい。でも、気に入ったけど、今の自分にはイタい映画だな~
とにかく達治のダメ男さが自分と重なっちゃう。「あぁ、これってオレと同じ行動パターンだ」と思うことばかり。蔦枝に言われるセリフも、おかげできっついんだな~。
あたしを養うことも殺すこともできないんだから」なんて身もフタもない言われよう。男より女のほうがとにかく生活力あるのは、もう良くわかってるけどその現実をこうやって見せ付けられると切ないよな。自分のヨメの姿見ててもそう思うし。そのことを納得したつもりでも、いざ自分が無視されちゃうともう気が気でないわけで、あぁ、自分もこんなことやったやった、と複雑な気持ちになった。
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このダメ男を三橋達也が好演。新珠三千代もいいなぁ。男に対してなめてかかる部分のある(信夫に叩かれて自分のこういう思い込みがやっつけられるのが印象的)結構複雑な蔦枝のキャラをちゃんと立たせている演技は感動もの。この蔦枝と対になる玉子という女性の存在が達治と蔦枝の関係にはアクセントなのだな。このころの川島作品で清純な女の子といえば芦川いづみだし、このかわいさがいい材料なのです。お徳を演じた轟夕起子って実は新珠三千代の宝塚の先輩なんだが、とてもそんな感じしないけどお徳を演じたときの年齢はまだ30代だったのね~。Suzaki_paradise4

とにかく川島雄三って群集を使ってのアンサンブルが上手いのに感心。タイトルバックの画面なんてその典型だし、傳七のなきがらに集まるやじ馬の画はとてもきっちり作っている。今はもう、こんな技術のある監督はいないと思う。この作品の続編も撮りたいと思ってたそうで、早死にしたのがとにかくもったいない。小沢昭一も本作では気のいい出前持ちだし、何もしていないのがもったいない。

それにしても、最近えらく河津清三郎づいてるのを発見。「世界大戦争」「猪の鹿お蝶」ときて、本作。ちょっと困った気になった。
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May 12, 2008

君も出世ができる

ついにDVDが出る!
7/25発売だぁ~

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May 06, 2008

不良姐御伝 猪の鹿お蝶

いろいろ見てみた映画をこうしてブログ形式でネタバレバレにしつつ見た感想など書き込んでおりますが、まぁ備忘録なんで。読み返してみるとたいした感想書いてない。恥ずかしいものであります。
最近はあまり面白い洋画のソフトもないもんで、つらつらと邦画のDVDばかり見てるけど以前は邦画なんかぜんぜん見なかった。「幻の湖」を見たあたりから邦画にもたいへんな作品があることを知り、東宝・新東宝・大蔵・大映・と大手製作会社の作品を適当に見ているわけです。でも、とうとう東映の劇映画に手を出すことになろうとは思わなかったなぁ。「東映まんがまつり」しか見ていなかった自分もオトナになったということをこんなことで自覚するのも何だかなぁ、ではあります。
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もともと東映劇映画といえばだいたいは任侠ものとお色気というイメージが強くて、そのせいであまり見ていなかったのだな。そういう方面にも好き嫌いなくとっつけるようになったんだから、うん、オトナになったな、自分。
で、今回の「猪の鹿お蝶」はなぜ見ようと思ったのかは…何でだったかな?
確か、どこだったかのサイトを見てて池玲子が全裸で殺陣やってるとかいうからだったと思うけど、まぁそんなのはどうでもいいや。とにかく池玲子見たさだったはず。
見てみたら、高度な「お約束」を楽しめるのでそこそこ面白かったな。

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不良姐御伝 猪の鹿お蝶 1973年東映
監督 鈴木則文
原作 梵天太郎
音楽 荒木一郎
出演 池玲子 根岸明美 成瀬正孝 名和宏ほか

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明治19年の東京
刑事の葛西徳造(殿山泰司)は一人娘を連れて七五三のお参りから帰る途上、男たちに刺し殺され持っていた書類を奪われてしまう。犯人の手がかりは徳造の手に残された猪鹿蝶の三枚の花札。それから十八年後、残された娘・杏子はスリの仕立て屋お銀に拾われ猪の鹿お蝶(池玲子)を名乗る一流のスリになっていた。父親の仇を探し金沢に来ていたお蝶は政治家・黒川(河津清三郎)を襲った若い男・柊修之助(成瀬正孝)を助ける。ついつい彼からスってしまったペンダントには白人の若い女の写真があった。
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稲村組に立ち寄ったお蝶は組長(遠藤辰雄)に誘われ賭場をのぞくが、そこでイカサマをした胴元がオトシマエつけるため殺されるのに出くわす。彼は今わの際に貯金通帳をお蝶に託し、浅草にいるゆきという妹を身請けしてくれるよう頼むが、それを知った稲村親分は風呂に入っているお蝶を襲い殺そうとする。ここで池玲子、全裸で大立ち回りです。稲村組全員を返り討ちにして浅草に戻ったお蝶は修之助に再会(修之助は民友党総裁の遺児だった)、ペンダントを返しゆき(早乙女りえ)の売られたキズ源(内田勝正)が束ねる加納組に乗り込みゆきを身請けしようとするが彼女は加納組の後ろ盾である岩倉(名和宏)に慰み者にされようとしていた!ゆきちゃんピンチ。お蝶の申し出に対し岩倉は「君も博打打ちなら博打で勝負しよう」と提案。イギリス人ギネスの屋敷で代打ちと勝負することになったがその相手クリスチーナ(クリスチナ・リンドバーグ)は修之助のペンダントの写真の女だった。
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屋敷には黒川もいたんで、このポーカー勝負の最中に黒川を狙うチーム修之助が乱入。しかし彼らを拳銃で撃退するクリスチーナ。しかし、修之助はこの場で彼女と再会。愛し合った記憶がよみがえるのだった。
なんかよく判らんうちに勝負再開、お蝶は心乱れてしまったクリスチーナに勝利しゆきを身請けすることになったが岩倉は約束を守らずゆきを手篭めにしてゆきをお蝶に引き渡す。そのゆきから岩倉の背中には鹿の彫り物があることを教えられたお蝶は、岩倉が父の仇の一人だと確信する。
一方のクリスチーナ、修之助のいる日本に来るために諜報員になった身の上がここで語られる。ようやく日本に来たのに言葉も交わせなかったことを悔いている最中にギネスがやってきて「我々の使命を忘れるな!これからお前を本物のスパイにするレッスンを始める!」とむにゃむにゃな行為が始まるのであった。
黒川は岩倉と自宅で昔話。実は岩倉は黒川の妻、八重路(三原葉子)とデキているのね。葛西刑事を殺し書類を奪ったことから彼らの出世物語が始まっていたのだった。それには八重路も一枚かんでいたらしい。
修之助は同志といたアジトを突き止められ、逃亡し逃げ込んだ先は仕立て屋お銀の家。お蝶にかくまわれた修之助は身の上話を語る。黒川と岩倉は政心会の汚職を捜査していた葛西刑事から捜査書類を奪い、政心会に売りつけていたのだ。そんな二人に陥れられた修之助の父は憤死し、修之助は復讐の機会を狙い続けていた。葛西刑事ははお蝶の父ではないか!
黒川と岩倉の命を受けたキズ源一家に仕立て屋お銀一味が捕らえられた。お蝶は彼女たちを助け出し身代わりに人質になり「どうせかわいがられるなら岩倉さんにこの体は差し上げたいねぇ」と啖呵を切る。で、岩倉はさっそくお蝶をおいしくいただこうとする(※サービスカット満載)のだが彼女に毒を盛られ岩倉は絶命。体に毒塗って無事なお蝶の皮膚はタフだ。父を殺した三人の男のうち一人は岩倉、もう一人は黒川、そしてあと一人は?Drtd0272412

クリスチーナは日本の軍事機密を探るため、黒川に取り入って体で情報を探るよう命じられる。黒川邸に入ったクリスチーナ、なんかレズプレイなど大々的に披露しているがその様子は修之助にしっかり目撃されてしまった。屋敷に侵入した修之助はクリスチーナから黒川の所在を聞き出そうとするが、ここでこの二人の恋話が語られる。クリスチーナは留学していた修之助と恋に落ち妊娠したダンサーだった。日本に帰った修之助にその恨みをぶつけようと、スパイになって日本にやってきたクリスチーナだったが修之助がまだ自分の写真を持っていたことを知り、やっぱまだ好きなのに気づいちゃうのね。黒川を狙うなら翌日の大阪行きの列車で、と彼女は修之助にアドバイスする。Drtd0272415
翌日の列車にお蝶と修之助は黒川の命を奪うべく乗り込むが、修之助は列車から落とされお蝶はボディガードのシスター軍団に阻止され捕らえられる。なぜシスター?


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黒川の屋敷に連れて行かれ拷問されるお蝶だったが、「お蝶の実の母は自分である」と伝えたうえで八重路がお蝶を逃がそうとする。でもそれも黒川にみつかってしまい、黒川から父の死の真相が語られる。もうひとりの共犯、猪鹿蝶の蝶は実は八重路だったのだ。八重路は葛西徳造の妻であり、お蝶の実の母だった!あぁなんということ。八重路の背中には隠し彫りの蝶の刺青があった。秘密を知る八重路を、黒川は絞め殺してしまう。Drtd0272418
一方、クリスチーナと修之助は共に呼び出されギネスとその一味の罠にかかってしまう。撃たれたクリスチーナの姿にかぶるBGMはなんなんだ?修之助はギネス一味と激闘を繰り広げるが、ついにギネスに撃たれ倒れる。しかしそのギネスも瀕死のクリスチーナの刀に刺され絶命。クリスチーナも修之助と共に息絶える。
お蝶はなんとか縛っている縄を切り、黒川に逆襲。何発か弾丸あたってるけど血まみれになりながらついに黒川を倒し復讐をとげるのだった。最後に雪の地面を歩いてる画面見るとホントの雪なんだよな。はだしじゃ寒かったろうになぁ。
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とにかく、東映ってのは何でもありなんだなぁ。徹底的に娯楽の方向へ走りまくり。話題づくりのためには海外からも女優をつれてきちゃうんだからすごいとしか言えない。まずキャストありで物語を作ってしまうその能力に敬意を表したい。ただ、そのおかげで監督のもつ色があまり出てこないのはちょっと淋しい気もする。自分にはまだ鈴木則文を評価する能力がないというか、この人もあまりに娯楽作の監督作が多くて多岐にわたるので評価するのは難しいなぁ。
今回出演のクリスチナ・リンドバーグはスウェーデンの人で「露出」というポルノ作品で日本でも名が知れていたそうな。東映だとこの人のほかにサンドラ・ジュリアンも招かれて出てたな。
とにかく気楽にお色気とアクションとロマンスをほどほどに楽しめるこの世界に、やっと自分も馴染めるようになったということのほうが自分的には一大事でありました。東宝とはまた違う、遠藤辰雄とか名和宏といった「いつもの奴ら」の演技に注目しよう。

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April 25, 2008

黒い十人の女

今頃になって個人的に市川崑を追悼するため、選んだのがこれ。ほかに「穴」もあったけどそれはまたの機会にしよう。それにしても最近、白黒の大映作品しか見ていないなぁ。

市川崑はとにかく実験精神の旺盛な人だったから、なかなかに前衛的といわれる本作の評判だけは聞いてはいたけれど果たしてどんなものやらと興味津々で見てみたが、とにかく不思議な作品だった、というのが正直な感想。

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黒い十人の女
1961年大映
監督 市川崑
主演 船越英二・山本富士子
    岸恵子・岸田今日子

物語の冒頭は夜の人気の無い通り。その道を一人歩くのは風双葉(山本富士子)その後をつけていく女たちが一人二人と増えていく。そのうちにある廃墟のそばで女たちに双葉はつかまり、「あれはどういうことなの!」と詰問されるところからこのお話はスタート。

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VTVテレビの編成局に勤務するプロデューサーの風松吉(船越英二)には妻の双葉がいるほかになんとなくデキている間柄の女たちがいた。女優の石ノ下市子(岸恵子)にテレビ局出入りの印刷所・アート社の未亡人の三岸三輪子(宮城まり子)、生コマーシャルの担当女子アナ四村塩(中村玉緒)、局員の後藤五夜子(岸田今日子)などで松吉には都合十人の女がいることになる。で、女たちはお互いに自分以外の女の存在を知っててときおり喧嘩にもなったりする。
「あんな男のどこがいいの?」なんて口では言うんだけど、誰か他の女とくっついてたりすると思いっきりヤキモチ焼いたりするわけで…。
どうしても松吉と結婚したい三輪子は双葉の経営するレストラン・カチューシャにやってきて「何とか別れてください」とお願いするほどの思い込みの強さ。それでも双葉はそんな三輪子に「あの人は誰にでも優しいから次々と女ができてしまうけど、誰にでも優しいっていうことは誰にも優しくないっていうことですわ…気にしないですめばいいのに」などと語りかける。「いっそ死んでしまえばいいのに」という双葉に「流感にでもかかってしまえばいいんでしょうけど」と三輪子。
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もともと付き合いのあった双葉と市子はカチューシャで松吉を殺すにはどうするかを相談。毒殺とか、ピストルとかといろいろ話が弾む。で、この相談の内容は松吉に関係する女性の皆さんにも伝わっている。三輪子の家に泊まっていた松吉に、三輪子が結婚してくれと懇願したとき「あなたみんなに殺されるのよ」と口を滑らせてしまったもんだから松吉はすっかり疑心暗鬼になってしまった。で、本妻の双葉に直談判。いろいろ誤解があるみたいだけど、みんな自分の愛人って訳じゃない。いっそこれを機に清算しよう、と双葉に提案しまだ誰がボクを殺すか決まっていないんなら女たちの前で双葉にやってもらえばいいんじゃないか?という考えのもと芝居をうつことに。
女たちをカチューシャの別室に集め、その目の前で松吉が双葉に撃ち殺されることに段取り決定。どこからか本物のピストルも手に入れて実弾も使おうとしていたが、直前におじけづいた松吉はタマを空砲に入れ替えた。一芝居打ったのは何とかその場ではうまくいった。女たちは自分は関係ないから、と逃げ出す。「あれは話だから面白かったのに」と市子。松吉が死んだと思い込んでショックでかかった三輪子は自殺してしまう。

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そんなこんなしてたら松吉が実は生きているということが女たちにバレていた。あの人がまた会社に出てきて元通りになるのはイヤだ、という女たちにとっちめられる双葉は「あの人を閉じ込めておきたいなら、私は離婚するからあとはあなたたちにおまかせするわ」と言い放つ。それならワタシがあの人をもらう、と申し出たのは市子だった。
「煮て食おうと焼いて食おうと勝手でしょう?」
会社には病気で休職との届出を出していた松吉だったが、市子と出歩いているのを本町芸能局長(永井智雄)に目撃されたり、ロケ隊にも見られていたもんだから仮病を使って休んでいるとみなされVTVでは彼を依願退職とすることに決定。