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July 01, 2017

狼は天使の匂い

 大昔の思い出。
その昔TBSでは「月曜ロードショー」という番組が月曜夜9時から放送されていて、これが日テレなら「水曜ロードショー」(のちに金曜日に引っ越した)自分の生まれ育った盛岡ではリアルタイムに見られなかったフジテレビなら土曜夜の「ゴールデン洋画劇場」、同様にテレ朝が「日曜洋画劇場」だったけどこちらはすごく遅れて土曜の夜遅くにローカル局で放送してたので、リアルタイムと言えば言えないこともない。
謎の円盤UFO」が土曜の夜8時に放映されていた当時その後の夜9時にはなぜか邦画(しかも東宝の特撮映画の比率が高い。「海底軍艦」「空の大怪獣ラドン」「サンダ対ガイラ」を見た記憶がある)ばかりかけていた映画番組枠があったけど、あれは何だったのだろう。
調べるとどうも「土曜映画招待席」だったみたいだけど、それだと土曜8時の枠(雨傘番組)で「UFO」の後の後の番組なんだよな。オイラの記憶が違っているということだろうか。…と思ったら、どうもオイラの記憶違いだったみたい。この「土曜映画招待席」で間違いないらしい。これについてはまた改めて触れたい。

東京にいたころはテレ東も見られたわけで夜は「木曜洋画劇場」があり昼間だと「2時のロードショー」(のちの「午後のロードショー」)なんてのがあって、キー局ごとに独自の映画枠があった。もっとも東京にいたころはバブル景気の頃で、深夜の映画枠がものすごく充実してたなぁ。今はなきシネヴィヴァン六本木で単館上映だった「天使」なんて前衛的なのをテレビでもやってたような時代。
「蜘蛛女のキス」もなんでか深夜の放送枠だった。しかも吹き替えなしの字幕。
シネヴィヴァン六本木、懐かしいな。「コヤニスカッティ」(コヤニスカッツィ、と今は正しい発音表記になってる)も見に行ったなぁ。
キー局それぞれに映画解説者がいて、月曜は荻昌弘、水曜だと水野晴郎、土曜は高島忠夫、日曜はもう、淀川長治。木曜洋画劇場だとあの当時は木村奈保子だった。懐かしい。
生家にいたころはもっぱら月曜ロードショーを見ていたわけで、それで見た映画はなぜか記憶が比較的鮮明だったりする。この「狼は天使の匂い」もそんな作品で、兄姉どもが放映の時に真面目に見ててそれに付き合わされる形で小生も見ていた。レーザーディスクのソフトは以前出ていたけど長いことDVDにはならず、発売になるとわかったときにしっかり予約して買った。

見てみたら、放映の時にはえらく編集して端折ってあったのだということをものすごく理解できました。

狼は天使の匂い [LA COURSE DU LIÈVRE À TRAVERS LES CHAMPS](1972)
監督:ルネ・クレマン
音楽:フランシス・レイ
出演:ロバート・ライアン、ジャン=ルイ・トランティニアン

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パリで元本屋の建物に引っ越し作業中の母子。母が「ティトゥ、遊んでおいで」と男の子をその辺にたむろってる子供たち(主にロマ=ジプシー)のところにビー玉の入った網になっている袋を持たせて行かせるが、当然男の子はすぐに仲間に入れるわけじゃない。そのビー玉の入った袋をさしだすんだけど、ロマの年長の男の子がその袋をナイフで切り裂くと階段をビー玉が散らばりながら、跳ねながら落ちていく印象的なカットにルイス・キャロルの言葉が重なる。
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愛しいものよ、僕たちは、もう寝る時間なのに寝るのをいやがってむずかる年老いた子供にすぎない

舞台は変わってカナダのモントリオール近郊。小さな駅に降り立ったアントワーヌ(ジャン=ルイ・トランティニアン)を待ち伏せていたロマの男たちが取り囲む。彼は飛行機事故でロマの子供を死なせてしまい、それを恨む男たちに追われていた。すきを見て逃げるアントワーヌはヒッチハイクなどしてなんとかモントリオールまでたどり着くが、それでもロマの男たちの追跡は止まない。
逃げ込んだもとは万博のパビリオンでアントワーヌは殺人に出くわす。撃たれた男、レンナーを介抱しに駆け寄ると、男はアントワーヌにいまわのきわに最期の言葉をかける。
チャーリーは抜け目ないが、トボガンは死んだ。…わかるか、自殺したんだ!
男はポケットにあった大金をアントワーヌにやり、息絶える。その場から逃げようとする彼を二人の男が呼び止め銃を向ける。男たちは彼に手錠をかけ連れ去るが彼らが警官ではないと判ったアントワーヌは乗せられていた車から一人を突き落とし、運転するもう一人の首を絞め抵抗するけど失敗。落された男とともに船に乗せられ、もとはレストランか何かだった小さな島の家にいるチャーリー(ロバート・ライアン)のもとへ連れて行かれる。出迎えたのはボクサー崩れのマットーネ(アルド・レイ)とシュガーという女(レア・マッサリ)。アントワーヌを連れてきた男はリッツィオ(ジャン・ガヴァン)。車から落とされて重傷なのはポール(ダニエル・ブレトン)というのがチャーリー一味。彼らはこの家で何かの目的をもって共同生活を送っているらしい。殺されたレンナーも彼らの仲間だった。
アントワーヌは自分が追われていた理由を、刑事を殺して追われていたとウソの話をして彼らを信じさせるけど、チャーリーは10ドルだけ渡してこの島から出ていくよう諭す。手錠を外され一度は外に出るんだけどやっぱロマの男たちが待ち伏せていて、彼は結局チャーリーのもとに戻る。チャーリーは金のありかを聞き出すため、彼をとどめておくことに。カードで遊ぶのに誘われたアントワーヌ、自分の腕時計をリッツィオに売るんだがリッツィオはこれを気に入ったみたいで右腕にはめたんで彼は両腕に時計してる変な人になった。
チャーリーは彼をフロッギーと名付け、「きれいな景色だろ。明朝までに金を返さなかったらあそこに埋めてやるよ」
と脅す。でも居ついた彼はチャーリーたちとちょこっと親しくなる。
翌朝、チャーリーたちは彼をどうやって殺すか朝食の場で話し合っているともう一人この家に住むペッパー(ティサ・ファロー)が騒ぎ出す。ポールの妹の彼女、かなり精神的に不安定ならしくなにかあるとすぐ銃をぶっ放すんだが彼女が言うには「ポールが死んだ」
神父を呼んでポールのための祈りを要求して立てこもるペッパーをアントワーヌは説得するのに成功。チャーリーが埋葬されるポールに祈りの言葉をささげてこの場はなんとか一件落着。
皆が留守にしている間にアントワーヌは納屋になぜか大きな消防車(はしご車)があるのを発見。見張りに残ったシュガーからチャーリーとの関係とかを語られる。
一方出かけていたマットーネはホントの目的のついでにマーチングバンドのリーダーの女につきまとい、彼女の恋人をぶちのめしてしまう。今でいうところのストーカー行為ですな。戻ってきたチャーリーにアントワーヌは金のありかを教えるから仲間にしろと告げる。肝心の金はポールの上着に隠しておいたのをペッパーが見つけていたが、チャーリーはアントワーヌと彼のパリの部屋の鍵をかけて賭けをして、結局は彼を仲間にする。
このあたりから主人公はトニーという名前が通り名になってくるんだけど、まぁそんなことは些細なことだ。
シュガーはトニーになんか惚れてしまったみたい。今回の仕事を終えた後のそれぞれの今後を語るふたり。トニーはオーストラリアに行くのが夢らしい。ペッパーの本当の名前がミルナということもこの辺で判明。
武器屋のマストラゴス(ドン・アレス)がチャーリーのもとに仕事で使う銃器類を届けに来た。彼は「レンナーは死んだしポールもいない、なんだか不安だな」なんて言うんだけど、リッツィオは彼を殺してしまう。リッツィオの提案でチャーリー以下全員でポラロイドカメラで記念撮影をすると、なんでか真ん中にあのマーチングバンドのリーダーがはさまって写っていた。前日マットーネが使って二重露光しちまったからなんだけど、そこに写っていた女、イゾラ(ナディーヌ・ナボコフ)は同じころ刑事に尋問されていた。マットーネが彼女のボーイフレンドを殴り倒した一件のためだけど、彼女は犯人の二人の男の特徴として「ひとり、両腕に腕時計してたの」と証言していた。マットーネ頭悪すぎるぞ。
チャーリーたちの計画が実行されることになり、チャーリー以下の男性陣は車でモントリオールへ。シュガーだけが島の家に残っていたらロマの男たちがそこに現れて胡散臭ーく水をもらっていくんだけど、そこで何か起こるのかと思ったら、何も起こらなかった。チャーリーは警視庁の18階から何かを盗み出すらしい。何を?と問うトニーに
「値段はつけられない。…俺たちには100万ドルだ」と答えるチャーリー。トニーは子どもの頃、パリであの日一緒に遊んだ少年の言っていたことを思い出す。
「アメリカで摩天楼を襲撃して街中のデカどもと戦うんだ…」
決行は今夜。男性陣はいったん船で島に戻る。その途中、ペッパーに二人でニューオーリンズへ行こうと誘われるトニーは何となくうなずく。というか、その気になってるのか?
チャーリーから、盗むものは女だとトニーは教えられる。マッカーシーというギャングの裁判の証人として警視庁の18階の特別病棟に入院している18歳の娘なのだが、13歳のころに精神に異常をきたしてしまい語る内容はわからない。そんなんでも証人になるのか?ともかくマッカーシーにとっては100万ドルの価値がある女だとのこと。
しかしレンナーが「彼女は死んだ」と言っていた。チャーリーは身代わりを仕立ててマッカーシーから100万ドルせしめるつもりなのだ。ロマの連中から話を聞いたシュガーは、トニーに一緒に海外に逃げよう、とトニーに懇願するんだがこれにもトニーは何となくうなずく。どうすんだトニー。
いよいよ計画実行。チャーリーさんの御一行はまず劇場にピアノのコンサートを聴きに行くわけだがここで誤算が発生。彼らのいるボックスのすぐそばにあのイゾラがいて、マットーネの姿を見つけちまったのでホールの保安係に警察に連絡するように通報。そんなことは知らないままチャーリーたちは劇場の奈落へ移動。残った女性陣でトニーの取り合い。ペッパーが「彼は私と行くの」とシュガーに行ったもんだからシュガーは落胆。そのまま手伝いのためにペッパーが席を立ってシュガー一人になったところに警察が来て、シュガーは連れて行かれてしまう。
チャーリーたちは劇場の地下の奈落を抜けて駐車場に行き、地下の壁を車でぶち破って隣の立体駐車場のビルに行き、その18階に停めてある例の消防車のはしごを使ってさらに隣の警視庁ビルの18階に直接のりこみ女をさらってくるという算段。この計画、ちょっと乱暴だと思う。
やはりトボガンは死んでいたので、仕方なしに彼女の服と愛用品だった変なぬいぐるみの人形を持っていこうとしたところ警備の人間の交代時間になってしまい、銃撃戦になってしまう。リッツィオはここで警察に捕まり、3人だけペッパーは回収することになった。で、ペッパーをトボガンに仕立て上げることにする。捕まったリッツィオはアジトに警察を案内するふりをしてウソの場所に連れて行き、そこでささやかに抵抗した結果射殺されてしまう。
あくる日、トボガンと現金との交換の場所に行ったチャーリーたちは当然のごとく相手と銃撃戦。全員倒して金を手に入れることに成功するが、マットーネは敵の銃弾を受け死んでしまうのだった。金を持っていこうとしたチャーリーだったが、敵でひとり生き残りの奴がいて彼の銃弾をくらう。トニーがそいつを撃ち倒し、瀕死のチャーリーともども車に乗って逃亡。死んだ仲間の面通しのために連れてこられたシュガーはチャーリーが重傷を負っていることを知り、残った仲間がどこに行ったかを警察に教える。
島の家に戻った3人、チャーリーはほとんど動けないけど酒を飲んでいる。ペッパーが医者を呼ぼうとしたけど電話が通じない。それを知ったチャーリーは自分たちが追いつめられていることを知り、「お前の本名は」とトニーに問います。
「アントワーヌ・カルド」
「俺はチャーリー・エリス」
外の様子を見に行ったペッパーが戻ってきて「誰か河から来る」と告げる。チャーリーは彼らを迎え撃つために銃を取り出そうとするするけど、もう体がいうことを聞かない状態。無理やりものにした金の半分をトニーとペッパーに渡し、「出ていけ!」と追い出してしまう。なぜか銃のほかに酒とポラロイドカメラ、そしてビー玉の入った袋を持って二階に這うようにして上がっていくんだけど、ビー玉がこぼれてしまう。
車で外に出たトニーとペッパーだったけどロマの男の待ち伏せにあい、トニーは深手を負うことに。トニーはそのことを隠してペッパーを先に行かせる。
「彼を放っておけない。約束する。明日必ず行くから、航空券をくれ、ミルナ」
よたよたとトニーはチャーリーのもとに戻る。彼が見たのは床に転がるライフルと多数のビー玉。
そのビー玉を集めてトニーは上階のチャーリーのもとに行く。ここでまたチャーリーは自分の爺さんの思い出話をちょいと語る。
「じいさんは野ウサギを飼い慣らしてた。耳の大きい本当の野ウサギさ。そいつが逃げたんで、漁師の出番になった。ところが、逃げ回るんだ。3日間も。漁師たちは3日間荒野を駆けまわった。ウサギは罠を見つけるとその上を飛び越えて走る。もっと速く」
「結局、捕まったのかい?」
「いや。じいさんが知恵をつけすぎた」なんて原題「うさぎは野を駈ける」にまつわるお話がここで語られる。
そして、チャーリーが「なぜ戻った」とトニーに問うと
ビー玉のためさ
この映画で一番の決め台詞が出てくるんだな。
「勝負するか、お客も来るしな。店を開こう」
チャーリーの言葉で、ビー玉をかけた勝負が始まるのであった。表の看板を的にして
「あれに当てたら2個だ」とビー玉をかけた勝負。だけど銃声ひびかせてこんなことやってると当然警察との銃撃戦になるわけで、そのさなかにトニーはまた少年時代のあの日を思い出す。パリで年長の少年と別れたときのことを。

とにかく、今回ちゃんと見て思ったのは尺の長さ。ランタイムが2時間15分ある。なので、正直テンポがゆったりしてる作品だということ。月曜ロードショーでやったということは、だいたい1時間30分くらいに尺を短くしていたはずだから、かなり大ナタふるって編集していたことになる。でもそのおかげでかえってタイトになっていい感じだったような気がする。えらいぞTBS。その印象があるもんだからかなりのんびりした感じの流れの作品に感じられた。で、考えたのは、どの部分を詰めるともっとテンポのいい作品になるんだろう?というあまり作品愛の感じられないことでした。雰囲気はものすごいいい。フランシス・レイのテーマ曲はとてもいい。でも、ここまで長い尺はいらないと思う。全体的にカットのおしりが長めに引っ張ってる傾向があるから、それを詰めるだけでもかなり尺は短くなるだろなぁ。
フィルムノワールとして見た場合はちょっと理屈っぽすぎる。でも、このセバスチャン・ジャブリゾの脚本は大人の世界とその大人が通り抜けてきた子供時代とを並列に並べて作品世界を構成しようとするもの。その重要なアイテムがルイス・キャロルであり「不思議の国のアリス」ということに、なるんだろうな。登場人物たちが死ぬ間際に少年時代を思い出す、それもとるにたらない日常的な光景を思い出すカットがはさまるのがその表れだし、この物語でチャーリーとトニーとが実は以前に会ったことがあるという描写、そしてチェシャ猫の顔。そのおかげでどえらい哲学的な雰囲気をもつ作品になってしまった。そのくせいい大人がビー玉賭けて命がけのゲームをするというエンディングがかっこよすぎる。とにかく、この空気感がすべての作品であった。ルネ・クレマンにはもともと「太陽がいっぱい」というノワール作品の傑作があるわけで、この人はこういうノワール的作品を撮りたかったのだろうなぁ。この作品の前には「パリは燃えているか」なんて超大作も手掛けてるけど、そういう大がかりなのはあまり肌に合わなかったのかもしれない。でも、この後のキャリアを考えるとこの作品の時期までが精いっぱいだったかも。

役者について言うと、ロバート・ライアンさんがこのブログでも二度目の登場。また男同士のやおいチックな交流を描く作品ってどういうことなのだろうか。ジャン=ルイ・トランティニアン演じるトニーだかフロッギーだかアントワーヌだかは、ちょっとはっきりしないキャラクターだなぁ。結局若い女を選ぶとことかでそう思ってしまう。ちょっと優柔不断なキャラクターなんで見てるとなんかすっきりしないんだな。精神的に不安定な女を選ぶとは。

自分の兄姉たちがこの作品がテレビでかかったときに喜んで見てたのはチェシャ猫とこのハードボイルドなお話のためだったはず。ここで出てくるチェシャ猫の顔はテニエルの描いたチェシャ猫の顔だった。
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冒頭の引っ越しの光景にも
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物語の最後にやっとわかる、チャーリーたちが暮らしていたこの建物の入り口の看板にもこのチェシャ猫がいた。
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子どもと大人、という別の人種として見るのか子どもから成長して変化したのだとする流れのものとしてとらえるか、ということなのかもしれない。そのどちらを選ぶかは見ているこちら側に任されている。

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