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May 30, 2016

超高層のあけぼの

DVDのソフトを買うにあたって、発売日を忘れていることが多い。
おかげで、けっこう後になって手に入れようとしたら絶版になっていて探し回るということになるケースが、自分の場合けっこう多い。忘れている期間が長すぎである。
一回こっきりのプレスということが最近は多いので、気がついたら本当に入手が難しくなっていることも多々ある。逆にこうなるとあきらめがかえってつかなくなってしまって、何とかして手に入れようとネットオークションなど目を皿のようにしてチェックをしてしまう。
この「超高層のあけぼの」も、発売になるけっこう前から情報は押さえていたつもりだったのにいざ発売になったらすっかり忘れていて、気がついたのは3年位前。ちなみに発売は2009年だったから、都合3年ほど買い忘れに気付かなかったことになる。気づいたときにはもう遅かった。すっかりプレミア価格で取引されていたのでありました。アマゾンなんかだと2万円超えてた時期もあったので、仕方なく気長にオークションで探して今回やっとこさゲット。その間にCSでも放映されてて一応そっちも録画したにはしたけど、出先じゃ見られないし何とかしてDVDが欲しかったのです。
いくらで買ったかは、やぼだから言わない。

 物語はというと、つまりは日本初の超高層ビルである霞が関ビルの建設工事を描いた群像劇。一応、メインになっているのは池辺良が演じる江尻所長なんだが、それ以外のキャストもとても豪華である。
見てみたかった理由は、一番はこの豪華なキャスト。そして、すんごい大作だったのに制作されてから30年あまり忘れられた存在になっていた不思議さ。
制作は日本技術映画という鹿島建設の系列会社で、現在はカシマビジョンと名を変えている。同じ会社で同じタイトルの短編記録映画も撮っているので、検索するとちょっとややこしい。

超高層のあけぼの 1969年
監督:関川秀雄
原作:菊島隆三
脚本:岩佐氏寿・工藤栄一
音楽:伊福部昭

昭和三十八年二月。東京大学で工学部の古川善二教授(中村伸郎)の最終講義が行われていた。そこで教授が説く。「過密都市となった東京は再開発の必要があり、そのためには超高層ビルの建設が必要である。しかし現状では法令でも、資金的にも、そして技術的にも課題がある。私の夢である超高層ビルの実現を若い世代に託すことになるだろう(だいたいこんな内容)」
講義を終え、研究室に戻った古川教授は来し方を振り返る「あれから40年が経った」
それは1923年(大正十二年)九月一日の関東大震災。帝大の学生だった若き日の古川教授(山本豊三)が昼飯のため下宿に戻ったところを震災が襲った。ちなみに下宿のおばさんは関京子であった。
多くの家屋が倒壊し火災が発生。そんな中で古川青年は医師である兄(平幹二郎)が懸命に救命活動をしているところにでくわす。兄の無事を素直に喜んだ古川青年だったが「よかったじゃない!亡くなったのは五万十万ではすまないんだ!」と叱られる。そのすぐそばで失われる命。そんな時、古川青年は大きな余震にも耐えてそびえ立つ上野五重塔に衝撃を受ける。五重塔の構造を徹底的に調べた古川教授は、地震に対抗するのではなく受け流す柔構造理論にたどりつく。しかしその新たな理論はなかなか学会では認められず、ようやく認知されつつあった状況ではあった。
そんなことを思い出していた教授のもとに来客。鹿島建設会長の鹿島守之助(佐野周二)とその妻であり副会長の卯女(三宅邦子)が訪ねてきたのだった。
「三井不動産から内々に依頼があったのですが、日本初の超高層ビルを作りたいのです。先生になにとぞご協力をお願いしたい」と鹿島はオファー、古川教授は理論的には可能だが解決すべき問題は多いとはじめは渋るのですが、鹿島の「いずれ誰かが日本の都市問題を解決するのに超高層ビルを作らなくてはなりません。先生のお力添えをお願いできませんか」と熱く語るのでした。その熱意にほだされ古川教授は鹿島建設入りを決意します。
古川教授は早速、持論の柔構造を導入し構造設計にとりかかります。彼を支えるのは教え子たちの面々、構造設計課長の佐伯(木村功)、課員の大原(池田駿介)、そして工事事務所長に内定していた江尻(池辺良)などなど。教え子のひとりとして、通りがかりの木下工事部長(丹波哲郎)はおまけ的に出てきます。
古川教授のもと、三井不動産への提案としてまとめられたのは36階建て、総工費180億円の建造物。
これに対して三井不動産の役員たちはこれを受け入れることを渋ります。しかし三井不動産社長の川島(八代目松本幸四郎)の鶴の一声で36階建て、総工費150億円で決定し建設がスタートすることになります。ちなみに三井不動産首脳陣は水野専務(花柳喜章)、芝常務(根上淳)、鮫島常務(永井秀明)などなど、けっこうな重量感。
時間と経費の問題で、主な構造材にH型鋼を導入しようということになり理論的にも使用可能であるとしてH型鋼を調達しようということになります。富士製鉄広畑の大型工事部長の竹本(渡辺文雄)に相談してみた所、ここでも高精度のH型鋼を多量に作るのはコストの問題から難しいと言われてしまうため、ここでも難題に直面します。
しかし江尻所長はH型鋼の使用を強く推します。結果として当初の予算に合わせるよう、工法などを工夫することを考えていたのでした。
正式に発令し江尻所長以下のメンツが決まります。というわけで江尻所長の家で工事担当者が集まり決起集会が開かれます。お世話するのは江尻の妻・佐知子(新珠三千代)。構造設計班と共に現場のスタッフとなったのは松本所長代理(鈴木瑞穂)、菊池工務部長(河合絃司)、佐々木第一工務課長(寺島達夫)、宮本第二工務課長(南廣)という面々。
佐伯が家族でスキーに行ったときに、転んだ拍子に新たな工法を思いつき、これで一気にコストダウンのめどが立ちます。しかしそのためには新しい形式のデッキプレートを開発する必要があり、ここでもまた江尻以下のスタッフは苦労することになります。同時に他の素材についても開発がすすめられます。表面のガラスは旭硝子、高速エレベータは日立製作所、建物全体のシミュレーションを石川島播磨で試験がすすめられていました。
で、これらの開発にかかるコストは松本幸四郎から値切られてしまい、これを承知する佐野周二の表情はほとんどコントです。
この辺での物語の小ヤマは、公開試験のためのH型鋼をなんとか調達しようというくだり。試験的に製造したものは試験用に細断されてしまったため、大急ぎで再製造を渡辺文雄に頼み込む木村功。その熱意にこたえ、工場のスケジュールを調整して大急ぎでH型鋼を作り至急便で送り出します。いつもと違うとてもいい人の渡辺文雄が印象的です。しかし、このH型鋼が試験に間に合うのかどうかで木村功ほかの面々はものすごくやきもき。悪天候のために予定の時刻に着くかどうか心配になって会社で各方面に問い合わせていた木村功はたまらなくなり試験場へ車で向かいますがその途中で事故を起こし、重傷を負ってしまうのでした。
公開試験の結果は大成功。その報を佐伯こと木村功は妻の直子(佐久間良子)に看病されつつ、病院で聞きました。この結果を受けて、ついに霞が関ビルの建設工事が着工されます。同時に広畑製鉄所ではH型鋼の量産を開始し、その第一便が東京に向けて出発、それを見送る渡辺文雄らのの姿で第一部が終わります。
見てから気づいたけど、これって実は二部構成の長い映画だったのね。ランタイムは2時間40分でした(^_^;)
とにかく伊福部さんの音楽がこれでもかと言わんばかりに響きます。

舞台は変わって、長野県の山中。東京電力の奈川渡ダムの工事現場。クレーンオペレーターの島村(田村正和)のもとを恋人の土橋道子(藤井まゆみ)が訪ねてきます。その間柄をなんとか聞き出そうとする飯場のおばちゃんは北林谷栄でありました。二人はラブラブなんですが道子は東京、島村は長野の山の中。遠距離です。でも島村は「今度、東京のど真ん中にでっかいビルができるんだ。そこの新型クレーンのオペレーターになって俺は東京に行くんだ」と告げ、ふたりは盛り上がるのでした。
ちなみに、問題のH型鋼はどう使われるのか?というのがこの後しばらくわかりやすく説明されるくだりが続きます。これの加工を請け負ってたのは横河橋梁だったのを知り、こないだそういえば橋梁が落ちた事故も横河だったたなぁ、と思い出したりしたのは個人的なことです。
鉄骨の組み立ての予定工期は台風シーズンを交わすために200日と設定されていて、そのためには何と言っても安全第一。現場のとび職人たちに下請けの磯部建設社長(菅井一郎)はその大切さを説きます。
「日本で147メートルの鉄骨をくんだとび職は一人もおらんのや。おまえらは超高層のスターや!」
とハッパをかけ、彼らをとび職の大番頭の小森(小林昭二)が率いることになります。現場のシーンでの映像は、この映画の制作当時に同じ工法で施工中だった浜松町の世界貿易センタービルの現場で撮影したそうで、実際にここで芝居もやってるんだけど高所恐怖症にはかなりこわい現場だったろうなー。
クレーンのオペは島村がやってます。で、ここで出稼ぎのとび職人・星野(伴淳三郎)が登場。
物語は現場レベルの人々によって展開していきます。
鉄骨の組み上げの作業自体は大変快調に進行していったのですが、ある日、島村のクレーンオペのミスでとび職を怪我させてしまいます。へこんだ島村=田村正和はすっかりくすぶり状態。そんな田村正和をやさしく励ましてくれるのは山形から出稼ぎのとび職人、星野=伴淳三郎であります。だけどその星野は星野で、デッキプレートの掃除をしてて落ちてたボルトをポイっと階下に投げ捨ててしまい、トラックの屋根に穴をあけてしまう騒動を起こします。もちろん江尻は星野をしかりつけるんだけど、素直に申し出てあやまる星野の様子を見て笑って許してあげます。
現場は年末年始のの休暇に入り、星野の帰省とか島村=田村正和が道子の両親にあいさつしに行くくだりが入ります。ちなみに伴淳三郎のヨメさんは利根はる恵。道子の父は中村是好とシブいキャストの配置です。
そんなこんなのタイミングでインドネシアから帰ってきた木下=丹波哲郎が登場。毒にも薬にもなりません。
三井不動産サイドでも、新しい超高層ビルのテナントを確保するためセールス活動を活発化させています。トップセールスで河島社長が東西石油の岡林社長(柳永二郎)を訪問、営業活動を行います。
雪のせいで工期が押してしまったり、さらに雷がバリバリ鳴り響く中での作業には島村がパニックを起こしたりします。

そしてついに、霞が関ビルは上棟式の日を迎えることになりますが、当然のごとくこのシーンはメインキャストのほぼ全員がそろっているシーンなのですごいことになっています。完成した霞が関ビルを仰ぐ人々の姿をとらえ、物語は幕をとじるのでした。

のっけから「この映画は讃える」なんて字幕に伊福部昭の重厚なテーマソングでそのヘヴィさに負けそうになります。そして、この作品には悪い人はぜんぜん出てこない。みんなビルを建てるのに一生懸命です。実際はドキュメンタリー的な作品なんで実名でやっても良かったんじゃないかと思うのですが、三井不動産の社長は川島ではなく江戸英雄会長だし、霞が関ビルの発案者で鹿島建設に副社長として招かれたのは古川教授ではなく武藤清。江尻所長は実は二階盛さんという具合に、いろいろ実在の方をモデルにして設定が変えられています。
「産業芸術映画」という新しいジャンルを作ったという鹿島守之助会長、この映画にはたいへん熱意をもって取り組んだことがよくわかる。えらい。この作品が制作されていた当時、ほぼ同時に進行していたのがあの「トラ・トラ・トラ!」だったそうで、ちょうど黒澤が降板してキャストの組み変えをしてたもんで有名どころの俳優さんを確保するのが大変だったというのもすごい裏話。今の作品とか見てても、こんな重量感のあるキャストはいないもんなぁ。
とにかく、人が人を動かすというのはその人の実直さがあってこそということを教えてくれる良い作品でありました。

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