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March 13, 2016

恋文(1953年新東宝)

実際のところ、この作品については積極的に「これ見たい!」と思ったわけではなく

きっかけになったのは、この写真であった。
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盛岡出身の映画女優、新東宝のお色気路線のスターだった三原葉子

今、このひとを再発見しようという取り組みをやっている。
そのなかで同級生だった方から分けていただいたのがこの写真。
とある催事のパブリシティにも使いました。
背景にあるのは旧盛岡中央劇場で、ここで上映されていた三原葉子も出演したこのシャシンはたしていったい何と言うタイトルのものだろうか?という疑問がそもそものきっかけ。三原葉子だから新東宝らしいということまではわかるけど…

丹羽文雄の原作で木下恵介の脚本ということから調べてみたら、これは1953年に制作された「恋文」という作品だったと判明。
中身を確認してみたら、なんとまぁゴージャスな作品だった。
監督は田中絹代。第1回監督作品であります。制作は永島一朗(香川京子の叔父にあたる方)
助監督がなんと石井輝男。
田中絹代の初監督作品ということもあってか脚本は木下恵介が担当し、これに成瀬巳喜男が手を入れたそうな。
もともとは彼女に監督させてみようという発想をしたのは小津安二郎だったって(^_^;)それに難癖つけたのが溝口健二という、裏話の段階でもはやオールスター。
キャストもオールスターというか、田中先生のためなら、と松竹・大映・東宝の俳優陣が勢ぞろい。
で、物語はというと

ビビアン・リーの「哀愁」となんか似てるよ。

弟・洋のアパートに居候している真弓礼吉は元将校の復員兵。英語とフランス語が得意ということで、洋の持ってくる翻訳の仕事を請け負ったりしている。その合間に礼吉は街に出ては誰かの姿を探している様子。
渋谷まで出向いた礼吉は旧友の山路と出会う。礼吉は、山路に自分の仕事を手伝ってほしいと言われたが、それは米兵の女になっている女性のラブレターの代筆。
家にいてじっとしているよりは、と考えて礼吉は手伝いを引き受ける。三原葉子はこの山路の店の向かいにあるだんご屋で大騒ぎしながらだんご食ってました。
山路の仕事を手伝う礼吉の様子を見た洋、山路の仕事場のあるすずらん横丁で自分の古本屋を開業することを決意。とんかつ屋の一部を借りて小さな店を仕立てます。
そんな折、山路の客としてやってきた女の声に礼吉は聞き覚えがありました。その女の後を追う礼吉、井の頭線の渋谷駅で彼女を見つけ出します。彼女は久保田道子。礼吉の幼馴染で、礼吉がひそかに愛していた女性でした。礼吉は街に出ては彼女の姿を捜していたのでした。礼吉が外地にいた戦時中に、道子は親の決めた相手と結婚していたけど夫は亡くなっています。
かわいさ余って憎さ百倍、ってわけでもないけど、自分が好きだったのによその男の嫁になったあげく米兵のオンリーにまでなった道子を礼吉はなじってしまいます。
生きるためには仕方なかったとはいえ、礼吉の言葉に道子は嘆き悲しみます。礼吉は礼吉で、自分の想い人が自分が生活のため客として相手にしているズベ公のオンリーみたいになってしまったことで酒に逃げちまいました。そのズベ公オンリーのラスボス的に、物語の中盤で登場するのは田中絹代先生です。
一方で弟の洋はそんな兄の様子を見かねて、道子の元を訪ねます。道子は一生懸命に求職活動していました。そして、やっととある立派なレストランのクロークとして就職します。
洋はそんな道子を礼吉と一緒にお祝いしようと考えますが、礼吉は意固地になってしまって「行かない」ということを聞きません。そんな礼吉を山路が張り倒します。それでやっと目が覚めた礼吉、山路と一緒に道子の下宿先を訪ねきついことをいったことを詫びることに。
かたや洋と一緒にいた道子、礼吉にお祝いしてもらえないことで「自分は許してもらっていない」とへこんで泣いちゃうところに、かつての「同業者」たちにまで出くわし汚れた自身の身の上を嘆き車道に飛び出してしまいます。
道子の帰りを待っていた山路と礼吉の前に警官が現れ、道子が事故に遭ったことを伝えます。タクシーに乗り、道子の運ばれた病院へ向かう途上、やはり道子が大切な存在であると再認識した礼吉はひたすらに道子の無事を祈り続けるのでした。

物語はまぁ、こんな感じで。
おそらくは礼吉と道子はハッピーエンドを迎えることができるんだろうなぁ、という感じの結末になってます。

大蔵体制以前の新東宝の映画はプロデューサーシステムでの制作が多いので、自前の俳優がいても外部から監督やら俳優やらを迎えての作品作りをしていたわけで、この作品もそんな流れの中の一本。
田中絹代の初監督作ってことで、出演者はゴージャスです。判明したのはだいたい以下の通り

真弓礼吉(森雅之)=大映
真弓洋(道三重三=国方伝
久保田道子(久我美子)=大映
山路直人(宇野重吉
山路の奥さん(たぶん高野由美)
古本屋の主人(沢村貞子
その娘・保子(香川京子
山路の店の向かいのだんご屋のおばさん(おそらく出雲八枝子
手紙かいてもらってるオンリーの女(北原文枝
だんごの差し入れする美人のオンリー(安西郷子
十本もだんご食ってるオンリー(三原葉子

礼吉の母(夏川静江
道子の継母(坪内美子
道子の父(高田稔
とんかつ屋の主人(花井蘭子
洋の女友達(関智恵子)なんか北原文枝に似てる
洋の店の手伝い(小倉繁
道子の下宿のおかあさん(入江たか子
ちょっとだけ出てくる洋の古本屋の客(安部徹
古株のえらくすれたオンリーの女(田中絹代
ケーキ持ってくるオンリー(月丘雪路
犬を抱いてるオンリーのおばさん(たぶん清川玉枝
レストランの支配人風の女(岡村文子
レストランの客(笠智衆 一瞬だけ登場 だと思う。一緒にいるのは三宅邦子?)
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流しの歌うたいにちょっとだけリクエストする客(佐野周二
横須賀のマリー(中北千枝子)あと二人いっしょにいるけど、ちょっとわからん。
クレジットにいる花岡菊子と井川邦子が見つからない。
木下恵介も、クレジットには名前があるけど「写真屋」って役自体がないような。
あと、久保菜穂子も(予告編のナレはやっているらしい)

今作では監督やってる田中絹代ですが、やはり役者としても登場。で、やっぱ格の違いというか女優の心意気というか、見せてくれてます。ものすごいどうしようもなくズブズブの状態の、齢をくったオンリーを演じてるけど森雅之じゃなくても説教したくなる雰囲気満点。それにしても真弓礼吉は説教しすぎだよ、と思う。こんな男、理屈っぽすぎてモテないだろなー。演技と言えば、今作での道三重三こと国方伝、この当時は俳優座の所属なんだが森雅之の弟として彼にからむ機会が多いのはちょっと気の毒。あんま芝居できないんだもん。のちに新東宝の専属になる訳だが、これがある意味で新東宝クオリティかも。

田中絹代の監督作品は全部で6つあるんだそうで、その第一回作品がこれ。監督やるのを薦めたのは小津安二郎らしい。その映画的な勘のよさを高く評価してのことだったというけど、この作品見てる限りで監督としてのセンスはどうかというと、問題ないと思った。尺はともかく、本作についていうならこじんまりとまとまっていてツッコミどころもない感じ。これが初めての監督作ということを考えると合格点でしょう。とはいってもこの時代はまだ小津・成瀬・溝口ほか多くの名匠が活躍していた時代だから、それらに比べるのはちょっとつらいかな。でもこの人のセンスなんだろうが、コメディリリーフ的な女優の配置がうまいと思った。
とにかく、田中絹代の存在の大きさがよくわかった作品でありました。

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Comments

はじめまして。田中絹代監督作品初回の恋文より ものすごい豪華配役にお祝いご祝儀出演を見ました、ケーキを運んだのは月丘夢路です 笠さんの前を歩くのは 井川邦子さんです  私も花岡菊子さんと久保菜穂子さんわかりませんでした、私も初回にしてはそこそこできていると思いました。 ビビアンリーの哀愁に似ていると書いている人もいましたがまるで違うわ、水島あやめさんの発言に 田中絹代さんはとてもりこうな人です、これわかる気がします。思った通りに生きた生き抜いた女優です。失礼しました。

Posted by: あるものずき | January 30, 2017 12:35 AM

コメントありがとうございます。
どうも井川邦子さんと三宅邦子さんの区別が小生あやしくなってまして、いかんですな。
「哀愁」と似てる部分はちょこちょこあると思います。
ヒロインが娼婦に身を落とすこととか、最後にヒロインが車に身を投げて自殺を図るところとか。
ビリケン人形は出てきませんが。

Posted by: 最上屋 | March 20, 2017 12:46 AM

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