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November 28, 2013

女競輪王(無敵の前田通子)

 くだらないくらいにささやかな希望だったのが、この映画を見ることだったんだけど

 ほんとにくだらない望みだよなー

 なんでこれが見たかったかというと、最近はとにかく昔の新東宝映画をなかなか見る機会がなくてCSで見るくらいになってる上に、DVD買って見るにもかつて新東宝の作品をリリースしてたテックコミュニケーションズは廃盤にしちまった(その後バップが出してるのもあるけど)おかげで、過去に流通してたソフトは中古市場でもどえらい高値で取引されてる(というか、値付けが異常すぎ)のでなかなか手が出ない。そのひとつがこの「女競輪王」
おかげで、見る機会はないかもと思ってたがたまたま借りて見ることができたのはありがたいかぎり

 ではあるのだが

 見たからってどうというもんでもなかったかも(笑)

 主人公の椎野美樹(前田通子)は千葉の魚屋の娘。将来を誓い合った婚約者・五十嵐健一(杉江広太郎)がいてラブラブなんだけどいきなりの意思表明。
「わたし、競輪選手になるの」
結婚をあえて遅らせてまで何で競輪選手になりたいのかよくわからないけど、とにかく競輪選手になることに決めた前田通子は杉江広太郎の父・五十嵐源造(小倉繁)に頼みこんで競輪学校の入学費用など15万円を借り、入学する。
ちなみに家には父親はいないみたいで、母の友枝(花岡菊子)が主に家の切り盛りしてて、家業の手伝いは妹の正枝(北沢典子)にまかせて前田通子は競輪学校に。
競輪学校の実地見学でダービーの行われている後楽園競輪場まで行って、優勝したスター選手の渋井三枝子(阿部寿美子)に会ってさらに気持ちは舞い上がる。「お姉さま」となついている姿は何なんだろうか。強くなるための方法を教えてほしいとか何とかお願いするんだけど、お姉さまには「それは自分で考えることよ」とソデにされる。そりゃそうだろ。
めでたく同期の小西好子(江畑絢子)と原慧子(遠山幸子)といっしょに卒業しB級選手になった前田通子、千葉でのレース開催に出場が決まったんで自主トレ開始。ここでスター選手の倉本信也(沼田曜一)が同じく自主トレしていたので、彼の後追いでさらに強化自主トレに励む。でも倉本=沼田曜一はいかにも前田通子のカラダだけに興味があるみたい。それを生殺しみたいにあしらう前田通子は何なんだか。
好子や慧子と開催地の旅館で風呂など入ってサービスカットを提供していると古参選手の河野菊(加藤欣子)に呼び出され、今回のレースで負けると15連敗になり選手を辞めさせられてしまう秋山久子(宮田文子)のために勝ちを譲るように強要される。そんなこと気にせずに前田通子はぶっちぎりで勝利。加藤欣子に覚えとけよとすごまれつつも、負けた宮田文子は子どもを抱えたまま選手をクビになるわけで、その姿を見て涙を流しつつも気持ちを引き締めるのであった。
そんな姿を見て声をかけるスター選手の倉本、つまり下心丸出しとすぐ分かる沼田曜一は一緒に祝杯をあげようなんつって夜に会う約束をするんだけど、次戦のためマッサージで調整するため約束をブッチした美樹=前田通子の代わりにやってきたのは倉本に気のある慧子。代わりにそのまま慧子とむにゃむにゃしてしまいます。
 美樹はそれからは連戦連勝。27連勝(ほんとかよ)してあっさり借金も返済。
一方の倉本信ちゃん=沼田曜一、健一の父の取引先でもある御手洗(江川宇礼雄)に恩義をタテに八百長を強要される。ここで登場する御手洗の子分には泉田洋志に広瀬康治がおりますな。
これをきっぱりと断ろうとする沼田曜一はちょっとかっこいいんだけど、結局は従わざるをえないみたい。
次回のレースではわざと転倒してしまいます。いやいやながら御手洗のいうことに従った倉本、選手控室でくさってるところで美樹に励まされます。スランプの厄払いに今夜付き合ってくれという倉本に、美樹は
「それであなたの気が済むのなら」と応じるんだけど、これに「殊勝だねぇ」という倉本に対して
「敗者をあわれんでるだけよ」などとすげぇ斜め上からの発言。なんだこいつ。
そこに健一から電話で、北海道に転勤になるので今日中に出発することになった、今夜会えないか、と請われるけど
「行かれそうもないわ」と倉本との約束を優先するんだよな。ますます「なんだこいつ」感が強まります。
行った先のダンスホールで前田通子は「体が破裂するまで愛し合おうぜ」なんてすごい言葉で言い寄られますが、そこに倉本に惚れている慧子が登場。今夜は美樹ちゃんなの?なんてイヤミを言う慧子に
「勘違いしないで。私はレースに負けた信ちゃんをあわれんでいたのよ。敗北を知らない私自身を誇っていたの
などとすんげー受け答えをするのでした。ますます「なんだこいつ」感は強くなります。
慧子が来たことで美樹はさっさと退場、思い直して上野駅まで行き旅立つ健一を見送るのでした。
婚約者のことなんだからさっさと上野駅に行けよと言いたくなります。

のちのレースでも相変わらず美樹は勝利するも、同走の慧子はビリになっちまいます。どうしたの?なんて話しかけてるところに、以前負けるよう脅してきた菊が登場。決勝で二人は走ることになってたのね。どうみてもこないだの仕返しを考えているようにしか見えない、変な気合の入り方してる菊さん。
宿に戻ると慧子はつわり発症。倉本の子供を妊娠していたのだった。(いつも通りの沼田曜一キャラの)倉本が最近は会ってもくれないと涙する慧子のため、美樹は倉本に慧子の妊娠の事実を告げに行きます。倉本に慧子との結婚を確約させようとする美樹、でも倉本は「慧子も赤ん坊もいらない、おれが好きなのは美樹ちゃんなんだよ」とにべもなく断るのであった。私のよく知る沼田曜一キャラです。
言う通りにしないと競輪の主催元である自転車振興会にことのすべてをバラすと美樹におどされても倉本は言うことをききゃぁしない。
そこに好子がやってきて、慧子が流産して病院に担ぎ込まれたことを美樹に告げます。振興会に自分の名前が漏れていないと知り「じゃあいいや」などと言う沼田曜一を美樹=前田通子は「人でなし」などとなじり2発ばかり顔を張って去っていくのでした。

翌日の女子競輪決勝、レースで勝つことが難しいと知った菊はやけになって美樹に体当たりをかましてしまうもんだから、二人は接触して転倒。美樹は軽傷だったけど菊さんは重傷を負って気を失ったまま担架で運ばれていく。その姿をにらむ美樹でありました。
 病院に運ばれた美樹には好子とその兄・英治(鮎川浩)が付き添ってくれています。
(転倒したもんだから)「これでダービーには失格しちゃったわ」という美樹に、英治は失格したのは河野菊の方で美樹はダービーに出られることを教えるのであった。ダービーとは、つまりは日本選手権(なのか?)全国争覇競輪というのが正式名称(らしい)ここでついに美樹はスター選手の渋井のお姉さまと戦うのである。
胸の目立つトレーニングウェアで、美樹は好子を従えてレースに向けて自主トレを開始。そこで好子は選手を辞めて結婚しようと思っていると美樹に告げます。
「倉本さんも慧ちゃんも、みんな脱落するわね。わたしそんなのキライ!」
倉本さんが脱落したのは、うーん、まあいいか。
それに対して「わたしはミス競輪なんかなれっこない。美樹ちゃんは強い人。勝ち続ける力がある」と励ます好子ですが、美樹の胸中は複雑です。
一方で、源造さんとこの息子の許嫁が美樹だと知った御手洗、源造に美樹に八百長をさせるように脅しをかけるのであります。源造は御手洗に借金もあり、すぱっと断ることができないまま。そしてダービーが開幕。
選手控室で美樹=前田通子は渋井のお姉さまと言葉をかわし、正々堂々戦うことを誓い合います。車券持って大騒ぎする、いかにもギャンブラーなおじさんのガヤにまじって沼田曜一が新聞かなんか持ってアツくなっている姿が映るけど、私の知る沼田曜一がここでやっと本来の姿になった気がする。
激戦のレースを制して、ミス競輪となったのは美樹。
レースの後、渋井のお姉さまから祝福されるとともに自身は引退すると告げられる美樹。来年もダービーで戦いたいと思っていた美樹にはショックな話。
「これからはあなたが競輪界のヒロインよ。わたしの分までがんばって」と励まし、寂しげに去っていくお姉さまの後姿を見て胸中はさらに複雑になります。そこに競輪学校の女子生徒がわやわやとやってくる。敗けたお姉さまは無視され、前田通子を皆「お姉さま」と囲む。一人の女の子(田原知佐子(原知佐子))が進み出て「競輪学校の木下百合子という者です。お姉さまに教えていただきたいんです」と燃える瞳で美樹を見つめる。
これに対して美樹は渋井のお姉さまの言っていた「来年のことはわからない。すばらしい新人が出現するかもしれない。あなたはわたしのライバルよ」という言葉をかみしめつつ、静かにその場を去るのでありました。
そのあと、美樹は八百長させることを断ったため御手洗たちにボコボコにされた源造にどういうわけか出くわし、彼を病院に運んだあとひとり後楽園競輪場にいきこれまでの出来事をかみしめ、ある決意をするのでした。

 後日、また実家の魚屋の手伝いをする美樹の姿が千葉の海辺に。
美樹は競輪選手を辞めていたのであった。そこに現れる健一に「約束じゃないの、結婚するのよ」と抱きつきます。
「勝手な美樹だって、叱る?」と甘える彼女に
「そ、そんな」
「ごめんなさい、うふっ」ますます「なんだこいつ」感が強いまま、ラブラブな二人が海を見下ろす画でエンドタイトル。


 平たく言うとスポ根ドラマなんだけど、もともと主役が和風美人の前田通子で本編通じてとても胸が目立つので、一応お色気路線はギリギリキープしてる、そんな感じ。女の幸せとは何か?と問いかけたかったのかもしれんけど、まずこんな美人が何故競輪選手になろうと決意したのかは語られず、ストーリーにからむ要素がとてもステレオタイプなのが面白い部分。からんでくるイジワル河野菊が太めの関西弁のおばはん風とか、同期の選手が妊娠させられるやら結婚して辞めていくやらという様子、あるいは自分が打ち破った渋井のお姉さまが引退していく姿に自分を重ねて前田通子が感じる失望感とか焦燥感の表現がそんなところの現れ。
そのくせ「勝つことが全てです」とか「勝負の世界は厳しいのです」とかものすごーい割り切ったこと言っていたのに、思いのほかあっさり選手を辞めてしまう。あれは嘘だったのか?とツッコミをいれたくなります。ツッコミどころはいっぱいあるんだが、マメに書くとすごい長くなる。
割り切りがすごいっていえば、借りた金を返しにいったときに1万円の利子をつけて返すんだけど「これで貸借関係はきれいさっぱりね」だと。なんだこいつ。
だいたい婚約者も気長だよなー。草食系男子のはしりといっても過言ではないかも。競輪学校の卒業式にお祝いに仕事休んで来てくれたってのに「これから行きたいところがあるの」って自転車やら荷物やら預けられて、そのまま家まで持って帰ってあげるなんてただの良い人じゃないか。
それでいて沼田曜一をなんだか自分から誘ってたじゃないかとも思うし。この主人公の描写のおかげで、八百長を強要する悪役の江川宇礼雄もすっかり影が薄くなってるし鮎川浩はとても善良な役だし、前田通子が演じる美樹という主人公はすごい存在です。
ここで舞台となっている女子競輪は1964年まで行われていたもので、今はガールズケイリンという名前で2012年からまた女子の競輪が開催されてるんだそうな。今のケイリンでは、先輩選手を「お姉さま」とかって呼んだりはたぶんしないんだろうなあ。

女競輪王
1956年新東宝
監督 小森白

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