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September 22, 2010

東京暗黒街 竹の家

サミュエル・フラーはアメリカ人の監督なのにヨーロッパで人気が高かった。その理由はいろいろ言われているけど、自分的には把握していない。
ゴダールの「気狂いピエロ」には本人の役で出演もしていて、そこでは新作の話題にふれている。
実際にこの時点では「悪の華」の企画が進行中だったそうだけど、結局は実現しなかった。
興味のある監督さんだったけど、昔はいかんせん作品がよくわからなくてやっと見ることができたのが「最前線物語」だった。超大作とはいえない作品だったが、リー・マーヴィン演じる第一次大戦から従軍していた古参軍曹のもと転戦する4人の若い兵士たちの物語。
サミュエル・フラーは実際に従軍経験のある人だったので、その経験がかなり色濃く反映されていた作品だったと思う。ユダヤ人収容所の解放のくだりは、とにかくセリフが少ないのにそのメッセージ性が色濃く感じられた。
脚本も書く人だったから、岡本喜八みたいな人だったのだな。撮ってるのはアクション映画が多いしな。
「戦場では生き残ることがモラルだ」という言葉がこの作品ではキーワード。
戦争を個の問題で切り抜けるか、友人関係みたいな小さな社会だとしてもその社会全体の問題として受け止めるかの違いはあるけど、サミュエル・フラーも岡本喜八も同じものを見ていたのかな、と考えた。どちらも全体主義への反発がベースになってるような気がする。

喜八と同様にサミュエル・フラーは娯楽作を戦後すぐから監督となり作品を送り出していたわけだが、その初期作品はなかなか見る機会がない。考えてみたら喜八も同じで「結婚のすべて」なんてソフトにならんしなぁ。そんなこともあり、この「東京暗黒街 竹の家」がDVDになると聞いたときは喜んだ。
うわさにはいろいろ聞いていたのです。日本の描写がとんでもないということだからね。
でも発売が急遽延期されて、やっとこさ発売されたのが去年だったか。
見てみたら、なるほど確かにすごい作品でありました。
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東京暗黒街 竹の家
1954年アメリカ
監督 サミュエル・フラー

富士山の見える富士吉田。雪の積もっていた冬の頃。アメリカ軍の補給物資を東京に運んでいた列車が線路の近辺で農作業していた連中に襲撃され、列車の警護についていた軍曹が射殺されてしまう。盗まれたのは武器弾薬。なぜか東京の警視庁が捜査にあたっていて(富士吉田なら静岡県警だと思うけど)捜査に当たるのはキタ警部(早川雪舟)とハンスン大尉(ブラッド・デクスター
事件から5週間後、アメリカ人グループによる強盗事件が発生。その現場に仲間に撃たれたウェッバーという男が置き去りにされていたが、彼を撃った拳銃と富士吉田の事件で軍曹を撃った拳銃が同一のワルサーP38と判明。すっかり虫の息のウェッバーを尋問するハンスン大尉。彼が持っていたのは戦友だったエディ・スパニアという男がもうすぐ日本に来て一味に加わることが記されていた手紙。House_of_bamboo8
そして、妻のマリコ(シャーリー山口山口淑子)の写真だった。そのままウェッバーは何も語らないで死んでしまう。
3週間後にシスコから来た貨物船でエディ・スパニア(ロバート・スタック)が来日。彼がまず探したのはマリコ。
逃げるマリコをようやくつかまえたエディは、彼女からウェッバーが死んだと知る。マリコはエディが夫を殺した連中の仲間と思っていたのだ。マリコにしてみれば、夫が強盗の片棒担いでいたとは知らなかったのでとにかく驚きでいつ一味に襲われるかとびくびくしていた。エディも友人はてっきり浅草のパチンコ屋のオーナーとして稼いでいたと思っていたので、強盗仲間に射殺されたとは驚きであった。

エディは浅草のパチンコ屋に乗り込み、用心棒代をたかる。そしたらすぐにぶちのめされ、ボスのサンディ(ロバート・ライアン)の前に引き出されてたかった用心棒代を取り返され、「東京から出てけ」と放り出される。
店を出て浅草辺りをぶらぶらしていたエディ、スリの濡れ衣を着せられ警察へ連れて行かれてキタ警部の尋問を受ける。旅券も持っていなかったエディは大変疑わしい人物。留置所に入れられそうになったところで、なぜかスリの訴えが取り下げられ彼は放免。
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実はこれはサンディの差し金。エディはサンディのもとへ連れて行かれる。
サンディに「うちで働かないか?大金が稼げる仕事がある」と誘われたエディはその話に乗る。
サンディはエディの数多い前科のある経歴をなぜか知っていて、こいつなら荒事に使えるってんで彼を気に入ったのでした。
「もっといい服を着ろ」とサンディから金をもらって、エディは散髪と新しいスーツを買いに行くがそのあとを尾けるキタ警部とハンソン大尉。
エディは軍警察からサンディのもとに送り込まれた潜入捜査官だったのである。鶴岡八幡宮で大尉に状況報告をするんだけど、このために帰りが遅かったエディをサンディは怪しむが(そりゃわざわざ鎌倉まで行くんだもん)マリコのところにいたことにして何とかごまかすのに成功。

その晩、なんだかものすごいあばら家に寝泊りしているエディのもとを訪ねるマリコ。エディが夫を殺したであろう一味に入り込んで夫の死の事情を知ろうとしていると知り、協力を申し出て結局押しかけ女房みたいに一緒に暮らして夫の死の真相を探ろうとするのでした。
この後の朝ごはんと風呂のくだりは、開いた口がふさがらないんだよなぁsmile必見のシーン。
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寝起きする部屋のすぐ隣に仕切りもなしに風呂があるわけ無いだろっ!
布団にはマクラが縫い付けてあるという、すごい寝具も登場。
山口淑子さん、このシーンなんかはクレームつけたそうだけどそれは容れてもらえませんでした(-_-;)
目玉焼きとベーコンのっけた(いわゆるポーチド)パンを風呂に入ったまま箸で食べるってなぁ(^^ゞ

まぁそんなことはともかく
アメリカ人と暮らし始めたマリコには周辺の住民からの偏見がキビシくなって、もう耐えられないってんで家に戻ろうとした矢先に、グリフ(キャメロン・ミッチェル)がエディを呼びにやってくる。コンクリート工場を襲って現金を強奪する計画にエディも呼ばれたのでした。
このグリフはもともとサンディの右腕なんだけど、最初からエディのことが気に入らない。
事前の打ち合わせの席上「負傷者はおれ達のだれかが殺す」とのサンディの言葉がエディに告げられる。で、作戦開始。
直前に武器を渡されるんだけど、このうちサンディの拳銃だけがワルサーP38というお約束。速攻で現金を奪って逃げる途中、反撃にあって一味の一人が撃たれた。当然、これはグリフに射殺されてしまう。エディも足に被弾してしまったがこれをなぜかサンディが助けて連れ帰る。負傷したエディの身の回りの世話をするのにマリコもサンディの屋敷にやってきたが、エディ的には「二人揃ってここに住んでいたら危険だ」とブゼンとしている。
実は本物のエディは本国で服役中で、エディとしてやってきた彼は「自分はサンディを逮捕するためにやってきた軍警察の軍曹だ」と告げる。驚くマリコだが、それでも彼に協力することを決意。
で、成功祝いだってんでいきなり宴会になるんだがこの宴会もすごい。日本風がキッチュすぎる。
畳敷きの部屋でいきなり革靴はいたままツイスト踊りだすんかい!和服コンパニオンのおねいさんたちはいきなり着物をほどくとスカート姿になっちゃうし、はっぴ姿のバンドもいるっていうセンスがなかなか。外人さんご一行の慰安旅行以外の何者でもないぞ(~o~)コンパニさんにいじられて会場を飛び出したマリコをエディが慰めたことで二人の親密感はいっそう強くなるのであった。
サンディさんの次なる作戦は輸送車からの現金強奪計画。内容を説明して人員配置を決めてたらグリフがキレる。「何でおれの名前がないんだ!」
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これにサンディは「おまえは今回は疲れてるみたいだから休養しろ」っていったらグリフはさらに激怒してその場を去っていった。一方で計画を知ったエディことケナー軍曹はマリコに強奪計画を記した手紙を託し、ハンソン大尉に渡すよう頼む。ところが彼女がハンソン大尉を訪ねたところを(旧帝国ホテル)たまたま居合わせたサンディ一味のチャーリーに見られてしまい、サンディ屋敷に戻ってみたら「エディを悲しませるな!二股かけるんなら出て行け!」とマリコはサンディに思いっきり説教されてしまうのでした。サンディさんは人格者です。
でも、何か方向が間違ってるような気がします。

エディ=ケナーのメモから警察は特別警戒を敷く。サンディさんは作戦開始したけど、警察内部に送り込んであったスパイ役から特別警戒が敷かれていることを伝えられ、急遽作戦を中止。
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今回の計画から外した腹いせにグリフが警察に密告したと勘違いしたサンディさん、その足でグリフの家に向かい昼間から風呂に入っていたグリフを射殺してしまう。よくこんな小さい風呂入れるなぁ。
サンディが自宅に戻ったところ、さっきのスパイ役が待っていた。彼から告げられた密告者の名前はエディ・スパニア。サンディさんの勘違いのおかげでスクリューボールコメディの一歩手前のここでのやりとり、笑いそうになったけどサンディさんは超ショック。
サンディさんは次回予定の真珠店襲撃を思いっきり繰り上げて、今これから実行する!とわがまま言って早速みんなで行動開始。
店に乗り込んだのはサンディ、チャーリー、そしてエディの3人。
店主らを殴り倒して、真珠をかっぱらうところでサンディはエディを嵌めるため警察に電話。気絶させたエディを強盗に仕立てて警察に撃ち殺させようとしたが、そうこうしているうちに警察が来てしまい結局銃撃戦になってしまいます。
チャーリーは撃たれてしまい、逃げるサンディが階段を上った先にあったのは

浅草松屋デパートの屋上遊園地であった。

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来場者でにぎわう松屋の屋上でサンディと警察との銃撃戦が始まり、お客さんはいっせいに避難。気がついたエディ=ケナー軍曹も屋上に到着。警察に包囲される中、水平観覧車スカイクルーザーの上ででサンディとの対決。なかなかこのシーンはかっこいい。
サンディを倒したケナー軍曹は、マリコと結ばれてめでたしめでたしなのでありました。


本編でのエディとサンディとのやおい的な交流は、ヘタすると同性愛的な描写に思われちゃうが、公開当時そんな指摘はなかったのかなぁ、なんてまず考えた。
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主に浅草辺りで大々的にロケしたのが昭和で言うと29年。ゴジラが公開された年。その当時のリアルな東京の風景がカラーで見られるというのが個人的には興味深かった。川に留められてるべか船やら船の上での暮らしやらは興味しんしん。東京の街中の様子も興味深い。雷門のない浅草の様子が活写されてる。あと、昔の背広ってこんな明るい色のばっかりだったのかしらん。
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あと興味深く観たのがサミュエル・フラーの演出。この人はたしかにB級の監督かもしれん。けど、画面的なこだわりはところどころでしっかりと発揮されている。たとえばマリコが買い物に出たときの帰り道をドリー移動のワンカットで見せるところとか、輸送車襲撃失敗後のサンディを追う画面で、サンディが長く暗い通路を歩いてくる画を長回しにしてるところにこの人なりのこだわりが感じられた。セットでやっているならともかくロケでもワンシーンワンカットで撮っているのは、手間ひまを考えるとすごいこと。全体はとにかく流れで構成された本編の画面は見ていて感心してしまった。「画」へのこだわりの監督さんなのだな。
おかげで内容の演出はというと、アクション以外はだいぶ省力化してるけど(^^ゞ
スカイクルーザーでの銃撃戦は緊迫感あふれたものになっている。やけくそになったサンディが地上に集まった野次馬に発砲するシーンもあるが、これもやはり一般市民を巻き込んでの戦闘を経験してる感覚なのかなとも考えたり。
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ほんとうに、タイトな演出をしちゃう人なんだろうと思う。でも、もともとの発想がフツーのアメリカンではないところがこの人のこの人たる所以でありましょう。「裸のランチ」なんて、あらすじ聞いただけで変だと思うし。
作品は実は1948年制作の「情無用の街」という作品のリメイクなんだけど、単なるリメイクにせずに舞台を日本に移した。おかげでツッコミどころあふれる楽しい作品になっております。警官はみんな日本語ヘタ。警官の一人がサミュエル・フラー本人なんだけど、どこにいるんだろ?
ドリー撮影を基本にしているこの流れの画面構成は、この作品が20世紀フォックスが開発した「シネマスコープ」を最初に使用した3つの作品のうちの一つであることが理由か。いわゆる「シネスコ」というやつですね。
終盤ロバート・スタックが警察に電話したとき「英語の話せる奴はいないか?」と言われて代わった奴がいきなりウルトラ流暢な英語を語りだしたのはコントにしか見えないし、輸送車襲撃作戦では3人工事人夫に変装して道路工事やってるけど、この人たちアメリカ人だから背は高いし彫りは深いしでえらく目立つと思うしなぁ。
マリコの買い物のくだり、オバサンから干物を買うんだけど、ひとくさり会話した後に日本人の助監督だと思うけど「仕事続けて」と思い切りディレクション入れる声も残ってるし(しかもオバサン返事してるし)
どっかで見たようなひともそこここにいて、チャーリー役は「スター・トレック」シリーズでドクターマッコイを演じたデフォレスト・ケリーだし、マリコの伯父さんはボガート主演の「東京ジョー」でハンフリー・ボガートと再会後すぐ柔道の組み手をやり始めた旧友イトウの役をやってた。真珠店のミスター本丸を演じたボブ・オカザキは「ブレードランナー」のスシバーのおやじ。

「映画とは戦場のようなものだ。それは愛、憎しみ、アクション、暴力、死。一言で言えばエモーションだ」
サミュエル・フラーはいいこと言うなぁ。映画は活劇でないといかんよね。

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