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March 09, 2010

ベビーギャングとお姐ちゃん

某ソフトストック施設を覗いて回ると面白いこともたまにはあるもので、普通は映画ソフトといえば通常はトールケースに入ったDVDが並んでいるのに、なぜか通常のCDサイズの、しかもジャケットのないのが二つあったので不思議に思い手にとって見た。
見ると、テプラで作ったタイトル名が貼り付けてあって一つには「アッちゃんのベビーギャング」もう一つには「ベビーギャングとお姐ちゃん」と書いてある。
お姐ちゃんものなの?お姐ちゃんシリーズは東宝の喜劇シリーズだけど、これらはまだソフトになっていないはずなので、何でこんなものがあるのか判らなかった。
あとで調べてみたら、これは十八代目中村勘三郎の襲名記念DVDボックス「勘九郎箱」全14枚組に含まれるものだった。歌舞伎の演目が10(うち2つがディスク2枚仕様)で、子役として出演した映画が2本。これが「アッちゃんのベビーギャング」とこの「ベビーギャングとお姐ちゃん」
ということは、この勘九郎箱は他のディスクもこの施設では揃えてあるはずだけど、そちらは今回はパス。
にしても、この「勘九郎箱」は松竹ホームビデオから発売されているのにその中の映画は東宝というのは、なぜ?
って考えてみたら、東宝と先代の勘三郎のつながりがあった関係もあるらしい。まぁ、東宝の映画に出てんだから仕方ない。でも、それをこういう形でもソフト化した松竹と東宝の仕事に敬意を表します。
なんつってもお姐ちゃんシリーズだしなぁ。このシリーズからのスピンオフみたいな形で始まったのが「無責任」シリーズということを考えると、無視しちゃいけないと思うのになぜかソフトにならない。
かといって、みんなパターン同じようなのだと並べても仕方ないか。
お姐ちゃんシリーズのタイトルを並べてみると
大学のお姐ちゃん」「銀座のお姐ちゃん」「お姐ちゃん罷り通る」「侍とお姐ちゃん」「お姐ちゃんに任しとキ!」「お姐ちゃんはツイてるぜ」「ベビーギャングとお姐ちゃん」「お姐ちゃん三代記」と番外編で「ニッポン無責任時代」。

タイトルを並べてみると気づくのが、若大将シリーズとの近似性(「大学の若大将」「銀座の若大将」がありました)
東宝の青春喜劇は見事にパターン化しているらしい。

ベビーギャングとお姐ちゃん(1961年東宝)
 監督 杉江敏男
 製作 藤本真澄
 脚本 井出俊郎

物語自体はたいしたことない(失礼)ほのぼのコメディなので、さらっと。
アッちゃん(中村勘九郎、現18代目中村勘三郎)の家の朝。
些細なことからパパ(小林桂樹)とママ(淡路恵子)はささいなことから口げんか。アッちゃんにはやし立てられた二人は「実は仲がいいんだよ」などと言って仲のいいところみせてあげるよ、ごまかすんだけど、この辺のやりとりはちょっと面白い。

パパの真似してお菓子をもらうのに失敗したアッちゃんはお向かいのソメコちゃん(須田玲子)の家に遊びに行ってみたけど、ソメコちゃんは幼稚園に出かけるところ。ソメコちゃんのママ(久慈あさみ)にまたあとで、といわれちゃう。
ソメコちゃんを幼稚園まで送る途中、真っ赤なカニ目のスプライトで颯爽と現れたのはピンチこと川島ヒナ子(中島そのみ)たまたま通りかかったので彼女の荷物運びを手伝うことになったアッちゃんは、上がったアパートでパンチこと水野ラン子(団令子)とセンチこと村山トリ子(重山規子)を紹介される。パンチとセンチは二人でこのアパートに越してきたばかり。
ピンチの声を注意しにとなりの部屋から出てきたイケメン学生・荒井(船戸順)にピンチは一目ぼれ。実は荒井はアッちゃんのパパの後輩で、アッちゃんを探しに来たママとは顔見知りだった。
荒井の情報収集にとなりの青山(山田吾一)の部屋に行った3人は、荒井がアパートを追い出されて青山の部屋に転がり込んできていて住み込みのバイトを探していることを聞き出す。
パパの家でお茶などご馳走になっていた荒井は、ママから向かいの金田さん(パパの会社の専務さんで、ソメコちゃんのお父さん)が住み込みの家庭教師を探していることを聞いてさっそく金田さんちにごあいさつ。藤子まま(ソメコちゃんのママ)に気に入られあっさり採用決定。送別会をしよう!とお姐ちゃんトリオに誘われ青山とクラブに行った荒井は実はものすごい下戸。酔っ払って絡んで転ばせた相手が、実は住み込み先の金田専務(有島一郎)でありました。
パンチ・ピンチ・センチは荒井にアタック開始。でも、どうしてもアッちゃんはじめとする子どもたちのおまけがついてきてしまい、さんざんな結果で全員失敗。
そんなこんなしてたら、荒井くんがデパートでママと二人で買い物しているところを三人で目撃してしまう。荒井くんは背広を作るのにママに相談して見立ててもらってただけなのだが「あの二人はデキていたのか!だまされた!」と怒った三人がクラブで荒井くんをとっちめる方法を相談していたところに専務さんとパパがやってきた。あの旦那さん誘惑しちゃえ~、と企んだ三人はパパにママが荒井くんと浮気してると吹き込んだついでに、パンチがパパのワイシャツに口紅をつけ自分のハンカチを背広のポケットにねじ込んでおいたので、家に帰ったパパは思いっきりママからとっちめられる。おまえだって荒井とできてるんだろ!と夫婦ゲンカになってしまったところに、寝ていたアッちゃんが起きてきて「夫婦ゲンカやってよ~」などというので二人でおとなしくなったのであった。
アッちゃんちの夫婦ゲンカの話を聞いた荒井くん、パンチのところに乗り込んで聞いたところ彼女らのしわざと判明。背広を作る相談だったら、私たちにすればいいじゃないの!と言うパンチたちと全くその気のない荒井くんは大喧嘩。しこたまやられた荒井くんは、あのままだとアッちゃんがかわいそうだから何とかしたいと演劇青年の青山に相談。
ママとケンカしてしまったアッちゃん、家を出てふらふら歩いていたらパンチたちと出くわす。アッちゃんの話で、パパとママの夫婦ゲンカのせいでアッちゃんに迷惑かけてしまったと知ったパンチたちはお詫びにアッちゃんに手料理をふるまうのでした。
家に帰ったアッちゃんがたまたまお土産でもらったパンチたち手製のコロッケとママ手作りのコロッケが夕食でかぶっちゃったことから、味見してみたパパがママのコロッケを美味しいとほめてくれたことでパパとママは仲直り。
パンチたちのアパートでは、青山のこさえた台本で荒井くんがひと芝居を打っていた。婚約者が田舎から出てきて話し合っている、ということだったけどこれに荒井くんは女たらしだと怒ったパンチたちがその場に乱入。でもそこに荒井くんあての速達を持ってきたママとアッちゃんがやってくる。
荒井くんはアメリカ留学のセレクションを通過したので、アメリカ留学が決まったのでありました。
めでたしめでたしと(何がだ?)みんなでそろってお芝居(中村勘九郎出演の東宝歌舞伎)を見に行きましたとさ、というお話。

団令子は東宝の専属だったけど、専属のニューフェイスの若い面々は主に特撮やらコメディやらの仕事が多く結局そればかりになる場合も多かったのに対して彼女は文芸作の出演も結構あり、成瀬巳喜男との仕事も何本かある。小津が東宝でバーターで撮った「小早川家の秋」にも出演しているし黒澤の「椿三十郎」にも出てるので、当時の東宝の若手としては珍しい位置にいる人だったのね。演技の間口は広かったという証左。
そういう点で考えると、こんなん軽い軽い作品の主演級というのは良かったのか悪かったのか。
小林信彦が「プログラムピクチャーはふらっと、気楽に見るもの」と何かで書いていたと記憶してるけど、まさにそういう作品なのでデキをどうこう言うのも野暮なんだよなぁ。
パンチ・センチ・ピンチの三人が荒井くんにアタック失敗するたびに夢オチのシーンが出てくるんだけど、そのすんごいハンドメイド感は泣けてくるし、あまりにも若い山田吾一の姿が驚きだし、小林桂樹と淡路恵子の夫婦って安定感ありまくりでツッこみようもないし、そんなとこかなぁ。
そのくせ、不思議な背景があるこのソフト化。
なぜ松竹に所属する歌舞伎役者が東宝の映画に出てるのか?
たぶん、先代の勘三郎は一時期東宝劇団に参加していて(最後の芝居見物のシーンで、団令子の後ろにいて軽く会釈する男性が十七代目勘三郎)その縁があったためなんだろう。
まぁ、本当に軽く見て軽く楽しむのにヨイ映画でありました。

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