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September 29, 2008

手紙 -殺しへの招待-(その2)

今回は長いぞ。
長いのキライなんだけど、なんつってもこのドラマ面白いから。
物語はこの後半部ですごい展開を見せる。展開が速いよ。


三重子(中島葵)の亡くなった状況は自殺と思われるものの、事情を聞かれた沖田(村野武範)は何かを隠している様子で井原警部補(草薙幸二郎)は沖田に対し不審感を抱く。家政婦の山石さん(水城蘭子)が閉めたというガスの元栓、なぜか指紋がでてこない。また、自殺する動機が見当たらない。沖田の夫婦生活も奇妙だし、なにしろ婿に入った身の上。財産目当てでことを起こした可能性も高いし、YZからの手紙についても語らないので井原警部補はじめとする警察の心象は悪いまま。

Tegami21
そうこうして1週間が過ぎた。
自殺説の弱点は、ガスの元栓に三重子の指紋がないこと。
他殺説の弱点は、ガスのホースを三重子にくわえさせることの手順。どうしても無理があること。
どうしても当日沖田家に泊まった吉岡みどり(ひし美ゆり子)とは連絡がとれず、沖田の供述もあいまいな点が多い。
ということから、この手詰まりの状況をあえて警察はマスコミにリークすることにした。
これを見た章子(竹下景子)はYZの手紙の一件も含め、警察に自ら証言をする。YZ=三重子であり、自殺して沖田をその犯人とすることで道連れにする計画に違いない!と証言し井原警部補もこの説にかなりの信憑性を感じ再度沖田に証言を求めるのだが、沖田はそれにも応えない。YZは三重子ではない、と沖田は主張するのでした。「江馬君に迷惑がかかるし、妻を傷つけたくない」なんて語る。まだなんか隠してる様子。
こんな新事実はあっさりマスコミに伝わり、章子は孤立することになるのだが何とかして沖田を救いたいがため、証拠集めを決意して会社に向かう途中、男に声をかけられる。その男は羽鳥(大木正司)だった。最初はいぶかる章子だが、YZからの手紙を示され章子は驚く。
羽鳥に連れて行かれた公園で章子は小沼(片岡五郎)と関山(鹿内孝)も紹介される。この3人の男たちは、沖田とは知人だったのだ。

羽鳥は大学の同期で、半年だけだったがワンゲル部で一緒だった。
関山は盛岡で高校の同窓生だった。
小沼は夏山縦走で7泊8日コンビを組んだことがある。

彼らは章子と同様に、沖田を救うべく警察に出頭しこれまでの経緯と推理を井原に伝え章子の説を補強しようとするが、井原警部補は納得しない。YZ=三重子との証拠がないこと、そして自殺する動機が見当たらないことが弱点だというのだ。むしろ警察では沖田は章子と共謀し三重子を自殺に見せかけて殺害したのではないかと見ており、カナタイプの手紙をでっちあげ自殺したように見せかけたのではないかと考えていた。そのためカナタイプの捜索も行い手紙から指紋採取もしたのだが、タイプは見つからず指紋も出てこなかったため沖田と章子との共謀説を怪しんでいたのだ。
この辺のくだりは、草薙幸二郎のものすごく沈着な演技のおかげでとても説得力があるので次の展開への期待が膨らんでしまう。
3人の男たちと章子は沖田の無実を立証するべく、証拠集めをすることに決めた。
手紙には犯人しかわからない事実がある。
カナタイプの捜索をするべく、章子は会社を辞めカナタイプのセールスを三重子の友人を中心に行うことを決意。
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関山と小沼はメーカーに流通経路をあたることとし、羽鳥はひょっとして三重子夫人はどこか別に部屋を借りてタイプを打っていたのではないか?との推理からマスコミに働きかけ一般から情報を募ることに。
一方、羽鳥の家では事件がマスコミに流れたことから須和子に羽鳥が自身を疑っていたことが露見してしまい、立腹した須和子は置き手紙を残して実家に帰ってしまった。
時を同じくして、ハワイから帰国した吉岡みどりは三重子の死を知り警察へ証言を申し出る。

みどりの証言は
・事件当夜、みどりが沖田家にいたのは三重子から離婚の相談をうけるため。沖田は章子との不倫が疑われ後日離婚の正式な手続きをとることを打ち合わせていたので、そんな人間が自殺するとは思えない。
・その晩帰りの家政婦を車で送って沖田家に戻ったのち、ガスの元栓などは閉めている。
・12時半頃に廊下を歩く足音を英之輔の部屋で聞いた(英之輔と一緒に寝ていたため)廊下に出てみると、沖田のガウンを着た人影が足早に2階に消えた。

Tegami27
この証言により、警察は三重子の死は沖田の犯行であると確信したことで沖田は逮捕される。
沖田の逮捕を知った章子は沖田の家に直行、英之輔を引き取ろうとするが意地悪なみどりに阻止されてしまう。すげぇ意地悪いんだ、ひし美ゆり子。
英之輔がこのときに残した、はがきを折って作った紙飛行機を遅れてきた羽鳥が拾い章子に渡す。
翌朝、小沼と関山も羽鳥の事務所にやってくるが警察の発表を聞き沖田と章子のことを信じきれなくなった小沼はこの事件から手を引く。
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羽鳥と章子は日本テレビのワイドショーに出演(司会は小林完吾、アシスタントはとても若い潘恵子)し、一般に情報提供を求める。
三重子は多分どこかに部屋を借りていたに違いない、誰か心当たりはないだろうか?
同時に警察から発表があり、ガス管をくわえさせた手口が見当がついたという。アクアラング用のボンベでまず意識を失わせて、それからガス管をくわえさせたのではないか?との警察発表。
同時に関山が、なんとYZからの新しい手紙を持って現れた。
死んでから2週間経っている三重子には手紙を出せないはずなのに?相変わらずのカナタイプで打たれた、目黒消印の手紙で、日付は当日のもの。
それによると、
YZは三重子の友人と親しい人間であり4人の誰の妻でもない。
この一連の手紙は男たちを怖がらせることが目的だった。
前便の死亡通知は自分ではなく、沖田明彦が出したものだ。
三重子の死は自殺ではない。沖田に殺されたのだ。

羽鳥たちはこの手紙を井原警部補のもとに持ち込み、同一のタイプで打たれたものか、誰が打ったものなのか調べて欲しいと依頼する。
これに対する答えは、井原によるとタイプは同一の機種で打たれたものだが全く同一のカナタイプかは不明。
沖田は自身でのタイプは否定。会社に同一のタイプはあるが、持ち出して使うのは難しい。吉岡みどりの友人で目黒区内に住む人間はいない。となりの区に住むミステリー好きな友人が一人いるが、その人物がカナタイプを持っているかどうかはノーコメント。

死後の投函も三重子が誰かに依頼しているのではないか?と羽鳥と章子は推理する。しかし関山はYZからの手紙に対しての疑問が解けたとして、彼もこの事件から手を引いた。
羽鳥と章子による証拠探しは手詰まりに陥るが、羽鳥はワイドショーへの出演を手配し再度呼びかける手はずを整えた。そんな時、章子ははたと英之輔の残した紙飛行機を思い出す。紙飛行機は音楽評論家の野中(花上晃)から三重子に宛てたハガキを折って作ったもので、開いて読んでみると三重子の病気を見舞う文言があった。野中は、あの音楽会の会場で三重子と腕を組んでいた男だ。
三重子の病気とは?

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章子は早速、野中の家を訪ねて三重子の病気とは何だったかを聞きだそうとするが野中はのらりくらりと応じるばかり。あげくには「君がその気なら教えてあげてもいいけど、来るんなら裸でおいでよ」などと章子の身体を交換条件に教えようとする。このスケベさといやみったらしい雰囲気はステキですな~
あぁ、それでも愛する沖田のためなら、と思いつめ服を脱ぎだした章子。
とそこに羽鳥が駆け込んでくる。これって美人局じゃね?警察呼ぶなら呼んでみろ!とすごむ羽鳥に、野中は三重子の病気は何か重病らしいと伝える。野中はたまたま通っていた病院で三重子と出くわしたのだが、それにはみどりも一緒だったから何の病気かはみどりに聞いてくれ、と答えた。
この話を聞いた井原警部補がみどりに尋ねたところ、三重子の病気は診断の難しい病気だったそうで実際に診断した医師に確認すると膠原病ではないかと三重子は不安に感じていたらしい。また、片岡しのぶ(たぶん、明石螢子)の運営する「日本女性文化研究所」は実はレズビアンのハッテン場で、会員の主婦がこれをネタに恐喝されたことで警察に密告があり、調べたところ三重子がこのレズクラブに出入りしていたことが明らかになった。
Tegami37
片岡しのぶは三重子のことをとても気に入り、彼女が家に帰るまで後をつけて本名と住まいを知ったことからかなり三重子は動揺していたらしい。自分の秘密を夫に知られたことが自殺の動機なのかもしれないと片岡は嘆いた。
しかし、まだ三重子の自殺を立証する物証はないことから沖田を助け出すには厳しい。
羽鳥と別れた後の帰り道、章子は電車の中で思い出す。
YZから会社にかかってきた、クラブマスミについての電話は子供の声ではなかったか?
実際の声は子供の声には聞こえなかったけど…

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再度出演したワイドショーで羽鳥は視聴者に呼びかける。
「三重子夫人に頼まれて電話をかけ、手紙を投函した小学校4・5年の子供がいると思います。心当たりのある親御さんは情報を提供してください」
この番組を見ていた目黒区内に住む櫻井という老夫婦が、部屋を間貸ししていた女性のことをはたと思い出した。
-佐藤さんっていったっけ?あの事件以来姿を見てないんだけど…部屋にはカナタイプみたいのがあるし、隣のすみこちゃんと仲良かったし何か頼まれてたんじゃない?佐藤さん、すみこちゃんに電話かけさせてたし。

そのすみこ(土田里美)は、高価なダイヤの指輪を持っていた。不審に思ったすみこの母(深沢英子 現・有田麻里)はお使いから戻ったすみこに尋ねるとすみこは泣きじゃくるばかり。
テレビ局で電話を待つ羽鳥のもとに、電話が入る。その電話は櫻井のおばさんからのものだった。
羽鳥と章子の推理に一致する人間が見つかったのだ!
井原とともに櫻井家に駆けつけた羽鳥と章子は、カナタイプと三重子の遺書を発見する。
「この遺書はきわめて明朗な意識のもとに書かれたものです…」
との言葉から始まる遺書は、以下の内容が記されていた。

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夫との離婚を決意していたのに、自身にトラブルがあったことから自殺を決意した。
レズクラブに出入りしていたことが夫に知られたらしいこと、そして自身が完治しない病気、紅斑性狼瘡(全身性エリトマトーデスっていうのね)にかかってしまい、美しい自分の身体が醜くなって一生を終えてしまうのは耐えられなかったのだが、ただ自殺するのではなく夫を自分殺しの犯人にして道連れにするつもりだった。
計画が失敗し、この遺書が発見されても遺産は息子の英之輔と吉岡みどりに相続させ夫には何も残さない。英之輔の後見人には吉岡みどりを指定する。

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嫌疑の晴れた沖田は翌日釈放された。迎えに来ていたのは吉岡みどりと息子の英之輔。
当然のごとく章子と羽鳥も出迎えていた。でも、沖田はこの事件で彼の無実を立証しようと奔走した羽鳥と章子に感謝していても章子の気持ちにはやはり応えられないと言う。
こんなに一生懸命尽くしたのにねぇ、かわいそうな章子はその場で泣き崩れる。
沖田はその足で三重子の墓参りに向かうため、そのまま車で去っていった…


で、この後はいきなりどんでん返しで犯人は誰だったかがわかるので、あえて書かないことにしよう。でも、やっぱバラしてしまいたい欲求もすごい強いんだよな~。
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ヒントは、序盤に出てきた「善意の第三者によって成立する完全犯罪」というフレーズだけど、ここまで見終わってるとその意味が良く解るようになっているのです。でもまぁ、個人的に考えると手紙を送りつける対象として選んだ小沼とか関山とか羽鳥という、関係のうすい間柄の知人を知る可能性のある立場なのは、どうしても登場人物の中では沖田か三重子かしかいない訳で、さらにこの夫婦仲を考えるとはたして三重子は彼らの存在を知っていただろうか?という推理が成り立っちゃうんだけど…
あと、共犯者もいる。この遺書の内容で、誰が得をするのか考えてみると…
犯人には動機と方法があるわけなんで、はてそれは何か?というのも重要。これ以上の野暮はしないどこ。

ちょっとだけこの後のエピソードを記すと、上野駅で章子はみどりと英之輔にばったり出会う。沖田は盛岡の生家にしばらく帰っていたのだが、今日東京に帰ってくるのでそれを出迎えに来ていたとのこと。そこに沖田が現れる。章子は故郷の北海道に帰るための切符を買いに来ていたのだった。もう東京には戻らない、との言葉を聞いて沖田は驚く。そのまま沖田たちと章子は別れるが、帰宅した沖田のもとに章子から電話がかかってくる。
「今日の4時の列車に乗ります。どうしてもちゃんとしたお別れがしたくて…」
それを聞いた沖田は、章子の乗る列車の見送りに行くことを約束し電話を切る。
で、沖田は章子との約束を果たせるかどうか?というエピソードがはさまり、物語の結末がやってくるのだがこのくだりを含む、あまりに空しいラストまでは実はドラマのオリジナル。
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天藤真による原作「殺しへの招待」はとてもテリングのうまい作品で、そんなに短くないけど赤川次郎の本みたいにスカスカでないのに一気に読める、とても読みやすく面白いもの。さすがは後に「大誘拐」という傑作を残すだけのことはあるなぁ。ドラマはおおむね原作どおりに映像化されているけど、若干設定を変えている部分がある。
まず、手紙が送られてくるのは原作では都合5人(ドラマの男たちのほか酒田という男がいる)だけど、ドラマでは4人。章子のキャラクターが、原作ではもう少しハキハキした感じなんだけどドラマではちょっと湿っぽいこと。(これは竹下景子のキャラクターのせいかも)それから原作では沖田のフルネームは沖田明仁なんだけどドラマでは明彦で、出身が原作では藤沢なんだけどドラマでは盛岡だって(笑)あとは井原警部補の出番がドラマでは多い印象があって、そして、結末部分。
原作では犯人のモノローグでこの後に起こるであろう事が語られてするっと終わるけど、ドラマでは犯人が明らかになってから因果応報的な救いようのない終わり方につながるエピソードが作られている。
どちらがいいか?となるとこれはそれぞれのメディアの違いがあるから一概には言えないけど、ドラマも面白いし原作も面白いのでどちらも楽しんで損しないと思う。

天藤真は、本名は遠藤晋。1915年生まれで帝大卒業後に同盟通信記者となり中国大陸に渡ったけど、敗戦後に千葉で開拓農民になったりして短大講師のかたわら1962年に作家デビュー。1978年に大傑作の「大誘拐」で日本推理作家協会賞を受賞したけど、思いのほか受賞歴は少ない。「大誘拐」は後に岡本喜八監督によって映画化されて、こちらも喜八映画では大ヒット。1983年に亡くなったけど「大誘拐」は週間文春で選ぶ20世紀ミステリーベスト10の国内部門では堂々の1位となったからいまだに評価は高い。平易な文章とユーモアのセンス、それにストーリーテリングのうまさはやはりいまだに秀逸。

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全編演出を担当した前田陽一はもともとは松竹の監督で、渋谷実直系のドライな演出が売りの喜劇映画専門の監督。異端の喜劇映画作家として評価はされていたけど、映画の製作が減ってしまい活動の場がテレビに移っていったのだがそのテレビ演出のごく初期の作品がこの「手紙」。
とてもストイックな雰囲気で、章子以外にはあまりウェットな部分のないトーンでこれがとてもいい。演出の技術というのは奇をてらって変なドラマを撮ることではない!といわんばかりの、ストライクゾーンぎりぎりをかすめる直球勝負の映像。後半のテンポのよさが上手さを感じます。
まぁ、それでも劇中に「俺たちの旅」をちゃっかりPRすることもやっているんですが。
1998年に、65歳というまだこれからという時期に亡くなったけど天藤真とは変な因縁とでもいえそうなものがあって、「大誘拐」が賞を獲ったときに「これは題名もストーリーも以前に作られた映画からの盗用ではないか」とスポーツ新聞に書かれてしまいケチがついたのだけど、その映画こそ「喜劇 大誘拐」であり監督は前田陽一。前田陽一は脚本にも参加しているので、はたして天藤真と前田陽一の間には接点があったのだろうか?と思うとこの「手紙」はそのポイントだったかもしれない。もしそうなら、実に面白い(^^ゞちなみに「喜劇 大誘拐」は1976年の作品で、この「手紙」は1975年のもの。天藤真にとっては、この盗作騒動は本当に面白くなかったらしいと伝えられている。ただしまともに考えると、題名までパクることはしないだろうね。

才能ある人材でも、なかなかメジャーになれないけどそういう人材ばかりが集っていたこのドラマはそれゆえ愛すべき作品であるなぁ、と思います。
まだ書きたいことあるから次も「手紙」ネタ。

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September 22, 2008

手紙 -殺しへの招待-(その1)

今回は、テレビドラマで初エントリ。

っていっても、月9とかトレンディードラマ(死語)ではない。
ジャニタレの出てるドラマに何があるというのだ?
大昔の帯ドラマである。それもただの帯ドラではない、

と個人的には思っているけど。

個人的に関心のあった女優に中島葵という人がいるのだが、主な出演歴はロマンポルノがほとんど。「愛のコリーダ」にも出演していた(吉田屋のおかみ トクの役で藤竜也とのカラミもある、結構ポイントの高い役どころ)
1991年に45歳という若さで亡くなっているが、「愛のコリーダ」見たときに何か印象に残ったのでそれ以来いろいろと見ることができる作品を探していたときにヒットしたのがこの「手紙 -殺しへの招待-
これがまた驚くのは昼間の帯ドラマだってのに監督が全エピソード前田陽一、主演に竹下景子で他には中島葵に伊佐山ひろ子、ひし美ゆり子というロマンポルノ組+元アンヌ隊員・当時東映のポルノ時代劇メインの女優陣(スポットで荒砂ゆきも出演)に村野武範=元熱血高校教師(飛び出せ!青春)という、すごい布陣。
この「手紙」、ヒマをもてあましていたときにテレビ岩手で「スッキリ!」の後に放映されていた「朝の連続ドラマ」(よみうりテレビ製作のもの)の再放送で「花真珠」なんてのを熱心に見てたわけだが、それが終わった後に発作的に再放送された。この頃たまたまネットで中島葵にまつわるネタ探しをしていたので、そのテレビ岩手での放映予定を聞いてあわてて録画までしたしなぁ。

何がどうすごいかというと、まず監督が前田陽一ということ。時期的には不遇だったけど松竹の喜劇映画で活躍した監督で「神様のくれた赤ん坊」「進め!ジャガーズ敵前上陸」なんてのが有名。テレビドラマでは演出や脚本を全部のエピソードで単独で行うのはあまりないのだけど、全話この人が演出しているという珍しいケースだし、そして中島葵に伊佐山ひろ子、夏海千佳子というロマンポルノ系・ピンク系の女優が出演していること。こちらの系統の女優がテレビにレギュラー出演するというのは、この時期には意外に思える。おかげで、性的な描写はポルノ映画に馴染んだ人々には嬉しい限りなのです。あと、ひし美ゆり子の実質的には引退作になったことで興味深いのであります。

25分ドラマで全20話。本編自体は正味20分くらいなので、これを全部通して見るとざっと7時間かかる勘定なんだけど、キャストがどうとかいうことだけでなく最近のドラマ見るよりはずっとずっと、はるかに面白いぞ。作り方の丁寧さが段違いだし。


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手紙-殺しへの招待-
1975年 11/3~11/28 13:30~13:55日本テレビ系
製作 ユニオン映画
原作 天藤真「殺しへの招待」(現在、創元推理文庫にて刊行)
脚本 よしだたけし・篠崎好
撮影 片岡二郎
音楽 大野雄二
監督 前田陽一


Tagami2
ある日、4人の男のもとにカナタイプ打ちで「夫を殺す」という殺人を予告する手紙が送られてきた。差出人の名はYZ。夫は30歳で結婚5年目、子どもは男の子が一人でその名前は漢字で3文字。憎悪が殺意にまで大きくなったのが殺人をする理由だというが、手紙を受け取った4人のうち誰かの妻がそのYZであるという。なぜ手紙を出したか?それはその相手を焦らせ苦しめるためだという。
手紙を受け取ったのは建築技師の小沼洋介(片岡五郎)、高校教師の関山晋一(鹿内孝)、ルポライターの羽鳥正吾(大木正司)、そして日東証券文書課の係長、沖田明彦(村野武範)の4人。皆がみな、YZの示す条件に一致していた。そしてこの4人は互いに知人だという。
この手紙がウソではないという証拠に、YZはこの4人を赤坂の中華料理店での夕食に招待していた。これに対して沖田は部下の江馬章子(竹下景子)に頼み、自分の代わりに誰が来たのかを見てきてほしい、と頼む。自分では行く勇気がない、という。
章子は沖田に恋心を抱いており、沖田も少なからず想うところもあるのだが沖田は勤務する証券会社の大口顧客の資産家の家に婿入りした身の上で、その遺産をすべて相続した妻の三重子(中島葵)には全く頭が上がらない。
そんなこともありYZからの手紙を読んでうかない顔をしていた沖田の様子を見て、章子は「何かお手伝いできれば」と申し出たのだった。なもんだからこんなこと頼まれてんだけど、えれぇ積極的じゃん~。

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行ってみると小沼、関山、そして羽鳥の三人が来ていたわけで、わざと入り口で様子を見ていた羽鳥は現れた章子の姿に気付いて声をかけるが章子は逃げ出し、羽鳥は後を追って章子の姿を写真に撮る。
三人はYZは誰なのか?また、もう一人の男は誰なのか?と疑問をぶつけあう。互いに面識がないのになぜこのような手紙が来るのだろう?そして、YZとは誰の妻なのか?
皆確かに思い当たるふしがある。4人とも妻に対し疑心暗鬼になり、沖田以外の三人はその感情を妻にぶつけ強引に身体を抱いていたのであった。この辺は見てると盛り上がるぞ。いきなり自分の女房を押し倒してむにゃむにゃなことやってる大サービス連発だもん。
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小沼の妻、優子(伊佐山ひろ子)は旧姓が財前だったので、旧姓でのイニシャルはYZ。
関山の妻、典枝(夏海千佳子)の夜の勤務先は目黒のクラブで、YZの手紙の消印は目黒。
羽鳥の妻、須和子(町田祥子)はあまりに従順で、聞き返すこともないのがかえって不安。
沖田の妻、三重子にとっては沖田の存在はただジャマなだけ。夫婦の生活は全くなく、彼女のいとこである吉岡みどり(ひし美ゆり子)との同性愛にひたって好きなように暮らしている三重子にとっては真面目なことしかとりえのないつまらない男。ただ体面上の夫婦である関係(「盛岡の農家の五男だか六男」だそうで、ただ子供の父親になる人間が必要だった)なので「いっそいなくなってしまえばいいのに」などと沖田のことをこきおろす。以前はかなり乱れた生活をしていた(男関係いっぱいあったし、クスリやりまくり。堕胎もできず)ため、実は一人息子の父親が誰なのかははっきりわからない。そのことを明彦も知っている。

またYZからの手紙が届いた。彼らの不安が高まる中、沖田以外の3人は銀座のクラブで対策を練ることにしたのだが沖田のもとにはYZから電話がかかってくる。「銀座のクラブ「マスミ」に来い」との指示だったが、そこはまさに羽鳥たちが落ち合う場所だった。実は羽鳥がいきつけの喫茶店で小沼と関山に電話をかけていたのを盗み聞きしていたサングラスの女がいたのだが…
そのマスミにはカップルでないと入れない部屋があって、そこは隣室を覗き見できるわけなので沖田と章子はカップルで入店し、その部屋ののぞき窓を探す。竹下景子のスカートがまくれ上がって太ももがしっかり露出しちゃうサービスカットもあり。
やっとこさのぞき窓を見つけて羽鳥たちの様子を探る沖田の表情は何か悲しげ。赤坂の中華料理屋での写真が現像できたので、それを小沼や関山にも見せていると店の女の子が「この子、さっき店に来てたわよ。アベックで隣の部屋に入ってるわ」と一言。その写真を見て章子も驚く。
すわ、と羽鳥は隣の部屋へ行ってみたがすでに2人は帰った後。
章子をアパートまで送る道中、沖田は身の上をいろいろと語るのだがこの辺がとにかくしみじみしてんだよな。
自分の妻、三重子はかなり遊んでた不良娘でも家は大金持ち。勤めてる会社の筆頭株主で委託株も多いところに婿入りしたおかげで周囲からはダメ男と見られているし財産は全部妻の名義。義父の死後は追い出されそうになってるけどメンツもあるし子供のこともあるしでそう簡単に家を出ることもできないと語るんで、そんな悩める沖田の姿に触れる章子はますます思いをつのらせる。
また4人の男たちにYZからの手紙が届く。「あなたたちが銀座のクラブに行ったこともわかっています。あなたたちの行動はすべて監視しています」と書かれていたので、彼らはますます疑心暗鬼に陥る。そんな中、小沼が現場で転落し重傷を負う。羽鳥は病院にすぐ駆けつけたが、小沼は妻がなかなか来ないことにとてつもなく不安になったもんだからやっと現れた彼女と口げんかになってしまう。Tegami10
「学生結婚してからずっと働かなきゃなかったせいで7回も中絶させられたら腰も痛くなるわよ!」などと優子に返され、あげく「あんたなんか死んじゃえばよかったのよ!」なんて叫ばれるんだけど、そこにやってきた担当医に「先生、夫は大丈夫ですよね?かたわになったりしませんよね?」と必死に尋ね、大丈夫だと応えられ安心し涙する姿を見た小沼は妻への疑いを捨てるのだった。

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一方の章子、会社で沖田のもとに届いたYZの手紙を勝手に盗み読みしてその内容を問いただすべく喫茶店で沖田に迫るのだったが沖田は何も語らない。沖田に自宅まで送ってもらう道中、大雨の中で車が故障してしまったもんで仕方なくモーテルに入る2人はもう、そりゃ盛り上がります。男物のワイシャツ一枚で「私は、いいのよ…」なんて迫るんだものなぁ~。
んで、そのまま勢いでベッドの上で思いっきりキスしたり胸触ったりして抱き合ったりしてるわけだが、そんな姿が何者かに盗撮されていた。
そしたら沖田は「いけないいけない、もう少しで取り返しのつかないことを…」なんて、途中でやめちゃうのね~
据え膳食わぬは男の恥だろがっ!と突っ込みたいところだがまぁ、そんなことはいいとして

沖田、羽鳥と関山にまたしてもYZから第4の手紙が届く。小沼の病室には優子が泊まりこんでいて、彼女には手紙を出すことができないことから完全に小沼はシロになった。
関山は家で新婚旅行の際に初夜がなかったことを妻にからかわれ、さらに疑念をつのらせる。沖田はというと、章子との約束をキャンセル。妻の三重子からの電話で、コンサートに行くのに運転手を命ぜられたため。音楽評論家の野中とこれ見よがしに腕を組んで現れた三重子はとことん沖田に意地悪なのだ。その様子をしっかり見てしまった章子はさらに沖田への思慕を募らせるわけなんだな。
関山はというとくよくよと「都井岬」(YZの手紙に出てくるミステリー小説で、善意の第三者により成立する完全犯罪というプロットが今回の計画には参考になったと書かれていた)なんか読んでいるわけで、そこに同じ教員住宅に住むハイミスの女教師が届け物に現れる。それをビールなんか出して、妻にこさえてもらった食事をサカナにもてなしてるとイイ雰囲気になっちゃうのに結局手が出せない。女教師には嘲笑されてしまうけど、彼女はいきなり腹痛をおこし救急車で運ばれたりしたので「ひょっとしたら毒が入っていたのでは?」と関山はさらに妻に疑いを強く持つ。
Tegami14
沖田は章子と休日にデートなどするのをたくらむと、みどりと三重子にムスコの英之輔を連れて行くように命じられてしまう。でもまぁ、章子はそれも楽しんでしまい英之輔と仲良く遊んで過ごしてしまうのでした。一方でみどりと三重子はすごいレズプレイやってて、およそ昼の帯ドラとは思えんな~

そして、YZからの第5便が届く。「9月13日の真夜中に計画を実行することにしました」との文面。ついに誰かが殺されるのか?それは誰なのか?
小沼は泰然としている。もう心配していないから。
関山は学校に泊り込む。
羽鳥は飲み屋の女のもとに逃げ、沖田は章子との逢引に走るとまぁ、それぞれの現実逃避。自分が殺されるかもしれないのだから。

Tegami15
男たちがそんなことをやっていた夜、三重子が夜の窓に立ち、外を眺めながら
急に、夜が怖く見えてきたの…」とつぶやく科白はとにかく印象的。

そして13日の夜。
章子との不倫がすっかりバレバレの沖田は三重子とみどりに「いつか思い知らせてやる」なんていわれている訳で、帰宅した沖田に対しては三重子は無視モード。みどりにもイヤミを言われてすっかり暗い顔つきの沖田は「カギは僕の部屋にかけておくからね」とドア越しに三重子に告げて床に就くんだけど、そりゃ簡単には眠れない。
この日みどりは沖田邸に泊まる予定にしていて、通いの家政婦さんを送っていくのに一度沖田家から外へ出て行く。

関山はまた学校に居残りしてたが、不審な物音がしたのを確かめに行ってみると不良が3人くらいで女子生徒を手込めにしようとしているではないか!いままでの関山なら見てみぬふりをするところだったが、今夜は一味違う。死ぬかもしれないんだから怖いものなんてないのだぁ。左腕を切りつけられてもひるむことなく、不良たちを一喝し追っ払ってしまうのである。かっこいいなぁ。家に帰った関山はもう、そのまま怖いもの知らず。妻に向かって裸になるよう命じて「これから好きなときに好きなように抱くぞ!」なんて言って押し倒しちゃうんだな。そりゃ最初は抵抗するけど、結局むにゃむにゃと夫婦生活に突入するのね~。かっこいいぞ、関山先生。

羽鳥は飲み屋のねーちゃんの部屋に上がりこみ、何にもせず眠れないまままんじりとしない一夜を過ごすことになった。誘っといてそれはないでしょ。

そして、夜が明けた。
ねーちゃん(これってやっぱ荒砂ゆきだよな。太っちゃったけど)に「何よ誘っておいて!」などと何もしなかったのを怒られてどつかれ、目を覚ました羽鳥。自分の無事なのを素直に喜んだ。
沖田家ではいつもの朝を迎えていた。家政婦さんが来て、三重子を除いたみんなで朝食をとり(三重子はいつも朝が遅いので)沖田はそのまま会社へ。みどりは自宅に戻り、英之輔は幼稚園に。
Tegami18
それを見送った家政婦さんは家がガスくさいことに気付く。三重子の部屋にはカギがかかっていて中の様子が判らないので警察が呼ばれた。窓を割って三重子の部屋に入った井原警部補(草薙幸二郎)ら刑事たちが眼にしたものは、ガス管をくわえて絶命している三重子の姿だった…


というのが、前半部のあらすじ
全20話でまるまる前半部を使ってやっと事件が起こるんだけど、そのぶん人物の描写にとても手間がかけてあってじれったい感じもするのだがそれでも作りこみがきちんとしてるので見ていて飽きることはない。
広角レンズを多用して撮られた画面で緊迫感があるのも一因だろうなぁ。面白いのは、けっこう広角でロングの画が多いけどその場合は手前に何かがはさまっていること。
Tegami17
前田陽一の演出はけっこうドライな感じで、4人の男たちはかなり突き放された不安定さがしっかりと見てる側にも伝わってくる。逆に女性の描写は、だからといってウェットでもなく章子以外は男性に対して自己主張が強い雰囲気をうまく演出してると思います。
俳優陣はいいところを集めたなぁ。1972年「白い指の戯れ」でデビューしてキネ旬主演女優賞を獲った伊佐山ひろ子に、当時「裸が私のユニフォーム」などと開き直ってロマンポルノで活躍していた中島葵、それにからむひし美ゆり子に若松孝二監督のピンク映画で活躍した夏海千佳子とひとクセある女優陣がいいキャスティング。

さて、「YZ」とは何者なのか?三重子は自殺なのか?
殺人だとしたら、その犯人は?
この事件の謎解きは後半に続く。

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September 05, 2008

はじらい

姉から借りた「カーズ」のDVDがえらい変なソフトで、物語の途中で読み込めなくなったので頭にきてレンタルに行って借りてきて、しっかり見ました。

まぁ、ディズニー+ピクサーだからとても健全なおはなしなんだけど

これだけ借りて帰るのもなんだしなぁ、と思ったが、では何を借りるか?

どうしても最近の映画は見る気がしないしなぁ…と思ってたら、たまたま目立つところにあったのがこの「はじらい」。

監督は「ひめごと」のジャン=クロード・ブリソーだって。
確か、「ひめごと」ってパンツ付の前売り券売ってた変わった企画の映画だったと記憶してたけど

オーバドゥのショーツって、ストリングミニマムだともっととんでもないの当時は売ってたぞ

その次作がこの「はじらい」。
何でも、ブリソー監督は前作の「ひめごと」撮影のオーディションでセクハラ行為があった!と女優から訴えられ結構な額の賠償金を払うハメになったそうで、その経験がこの「はじらい」でつづられているとの話。
根がスケベなので、こういう風に文芸的にハダカの出てくる映画は好きなので今回はこれを見ることにしました。

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はじらい Les Anges Exterminateurs 2006年
監督 ジャン=クロード・ブリソー
主演 フレデリク・ヴァン・デン・ドリエッシュ
マルーシア・デュブルイユ、リーズ・ベリンク、マリー・アランほか

映画監督のフランソワ(フレデリク・ヴァン・デン・ドリエッシュ)は新作で『タブーと歓び』を主題に据えて撮影するべく、主演女優のオーディションを開始する。が、人選は難航。そりゃあ、いきなり「人前で自慰行為ができるか?」「それを撮影してカメラテストしたいが?」なんて言われて即座にOKする奴はフツーはいない。オーディションは難航することになる。
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この様子はなぜか、二人の堕天使たち(あるいは幽霊?)によって監視されている。彼女たち(ラファエル・ゴディンマーガレット・ゼヌー)はこのフランソワの映画を失敗させるために誰かの指示を受けていて、実際にそう仕向けるのだった。フランソワは夢で死んだはずの祖母(ジャンヌ・セラール)の声を聞く。
行きつけのカフェで強く自分を売り込んできたのがジュリー(リーズ・ベリンク
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カメラテストでもフランソワの目の前で堂々とアクメに達して、堂々の合格。
次にやってきたのがシャーロット(マルーシア・デュブルイユ)聞けば高名な精神科医のムスメなのだが、かなり愛情に飢えている様子で私生活は乱れている様子。いきなりカメラテストを希望し、レストランで自慰行為したうえジュリーとのベッドインも激しい。そして最後に、このレストランで働いていたステファニー(マリー・アラン)がオーディションにやってくる。彼女は実はシャーロットの友人だったのだ。こちらもいきなりカメラテストを希望し、ジュリーとシャーロットも交えてのベッドプレイを見せつけこれで女優が決まった。Apd_124012
台本読みも始めたけど、ステファニーには親しい友人と名乗る謎の男(フランソワ・ネグレ)がくっついていることが判明。彼に脅迫めいたことを言われたフランソワは「彼を私に近づけるな」と命ずる。でも、この男はその後フランソワに付きまとうことに。



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フランソワはまだカメラテストを続けている。
いざという時のために代役も必要なため女優はまだ捜していたのだが、3人の女たちにはそんな論理は通じない。どうにかしてフランソワのオーディションを中止させようとする。
この3人の女のつながりは、あくまでもフランソワが要になっているので彼が彼女らに関心がなくなると3人がつながっていることができない状況。あるいは、お互いの存在を必要としている姿を見るための証人というところ?Apd_124014

妻(ソフィー・ボネ)には「この映画はやめた方がいい。彼女たちは魔女よ」と釘を刺されつつも何とかクランクイン。でもその初日にシャーロットは精神のコントロールが効かなくなり、メイク室で暴れたもんだから撮影は中止。プロデューサーから契約の打ち切りを告げられたシャーロットに同調し、フランソワにつばまで吐いて怒るステファニーも契約破棄を願い出る。キタナイ捨て台詞を吐き散らしシャーロットを連れて現場を去っていった。
撮影は2人には代役を立て、ジュリーだけが残ったがクランクアップ後に彼女も音信不通になる。

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フランソワの家に警察が来た。シャーロットとステファニーが警察にセクハラされたと訴えたためで、警察は証拠品を押収しフランソワも事情聴取のため警察へ同行。帰ってみると、家はもぬけのカラ。妻は「すべて失う前に別れましょう」との書置きを残し出て行ったのでした。
所在なくなった感のあるフランソワはジュリーに偶然再会。「あなたが好きだったから」とカフェで彼女から今回の映画のいきさつを語られるのだが、もともと彼女たちとは距離を置いていたフランソワにとっては意外な話。
自宅に戻ろうとしたフランソワは覆面をかぶった連中に身体を押さえつけられ、バットでボコボコに殴られ重傷を負うが、死なずに済んだのは堕天使の思いやりのおかげ。車椅子に縛りつけられていても彼は撮影の現場にいた。


主に冒頭とエンディングに詩的な散文の台詞が重なるのだが、これはオリジナルなのかな?
とにかくこの3人の女たちが、それぞれ内に秘めている快感への欲求(これってリピドーって言っていいんだっけかな)を発露する、その媒体になっているのが映画監督のフランソワ。その存在は彼女たちにとっては理解者であり観客なのだけど、そういう存在が彼女たちから目線をそらしたら彼はどうなるのか?
そういう形で愛されている彼は裏切り者になるのか?そうなったらその存在は消されるべきなのか?
日常の生活でも、なぜか異性の友人からぶっちゃけた話ばかりされるような人はいるのでこういう構図の人間関係は理解できなくもないけど、それでもこのフランソワはブリソーの存在を表現するキャラクターなんでいろんな女から愛されているのは何だか自己満足的な気もするなぁ。謎の連中にボコられるけど、誰に何のためにやられたのかいまいちわかんないし、登場人物のバックグラウンドがわかるようなプラスアルファもほしい気がするので脚本としては少し不親切かも。原題のLes Anges exterminateursは映画の内容を端的に言い得ていると思うけど、邦題は考えたほうが良かった気もするし(「死をもたらす天使」とでもいうのかなぁ、意訳なら「残酷な天使」ってとこか)まぁ、あたらずとも遠からず。
以前、知り合いから「やっぱフランス映画はわからない!」と言われたことがあるけど、そりゃゴダールとかの小難しい映画見ればそう思うのはしかたない。それでも、ああいう詩人であることを見る側にも強いるような映画はもう過去のものかと思ってたらまだあるのね(-_-;)
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でも、音がスケベな自分からするとこういう小難しいこと言ってても結局スケベなものはスケベ。そんなに志の高いもんじゃないとおもうんだけど面白いのは、実生活ではその理屈っぽさってなぜか変に説得力がある人もいるんで、そういう人ってなぜか女にモテるというかいうこと聞かせるのが上手いんだよな。高尚な論をぶって、口説いて脱がしたりするのに成功率が高い人。ただ口説くのじゃないのになぁ、ある意味これはうらやましい。

人を愛するということ、愛されるということはどうしても永遠のテーマなのですな。
それが甘ったるいのか甘いのか、苦いのか辛いのか、ドライなのかウェットなのかハードなのかソフトなのか、いろんな形があるわけだけどその表現ができるくらいにいろんなものを見て聞いて感じる、そういう作業はサボってはいかんのだなぁ、なんて少し思った。

もともとはエッチな表現のある映画が好きなだけで見たんだけどねぇ。
神様、こんなスケベな自分を許してください。

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