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June 01, 2008

異母兄弟

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三国連太郎の出演作は実はさっぱり見ていないのだけど、その昔、西田敏行が確か読売新聞だったと思うけど連載記事を書いていて、釣りバカ日誌の映画化にあたり三国連太郎と共演することについて書いていた文に「三国連太郎は老け役のために歯を抜いた」という記述があった。
なにもそこまで、と思ったけど実際にはその映画でどんな役を演じたのか見ていなかった。が、どうもそれがこの「異母兄弟」だったらしいと聞き、独立プロの作品には興味もあったので見てみました。

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異母兄弟 1957年 独立プロ作品
監督 家城巳代治
撮影 宮島義勇
原作 田宮虎彦
出演 三国連太郎 田中絹代 中村賀津雄 南原伸二 高千穂ひずる他

大正10年 鬼隊長として恐れられる陸軍大尉、鬼頭範太郎(三国連太郎)の家に住み込みの女中としてお利江(田中絹代)がやってくる。範太郎の妻・つた(豊島八重子)は病に臥せっていたが、この範太郎、とにかく子供たちに軍人になる教育ばかりでしつけは厳しい。範太郎の家には住み込みでもう一人マス(飯田蝶子)もいて家事を行っていたけれどまだ若いお利江に範太郎ムラムラしてしまい、馬小屋で手ごめにしてしまう。そしたら身ごもってしまい、このことが連隊長(永井智雄)にも知れてしまい、範太郎すごーい体裁が悪い。Ade04626
とにかく上官にはへいこらとしているのに部下にはとことん威張り散らす性格の悪い男なのだ。連隊長にどうするのか聞かれた範太郎は、妻も亡くなっていたこともあり後妻に迎えますぅ、と答えてしまう。
お利江はまず良利を産み、後に智秀を産むのだけどこの二人と長男の一郎司・次男の剛次郎への範太郎の扱いの差はこれまたひどいのだ。

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時は流れて昭和17年。範太郎も少将で退役して田舎に引っ込んでいる。その街を通過する列車に乗っていたのは海軍士官になった良利(南原伸二)停車した車両に智秀(中村賀津雄)がかけより母からの差し入れを兄に手渡すがこのとき長男・一郎司(西田昭市)と次男・剛次郎(近藤宏)の出征祝いが開かれていた。
帰り道で智秀は女中のハル(高千穂ひずる)と行き会い、家に戻ると母のお利江は忙しく立ち働いている。
範太郎は息子たちにまた昔の武勇伝を聞かせて自慢ばかりしている。
宴も終わり、飲み足りない一郎司と剛次郎ははるに酒を持ってこさせるがそのハルに「帝国軍人を慰めんかぁ」と手篭めにしようと襲いかかる。見ていた智秀は剛次郎にくってかかるが、何度も投げ飛ばされてしまい頭にきた智秀はお銚子で殴りかかろうと、したところにお利江が間に入りなんとかとりなす。剛次郎は以前からお利江の子供たちに反感を持っていたから、ムキになるんだよな。
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ある日、在郷軍人会の会合に範太郎が出かけて留守だったとき(お利江も留守)家に帰ってきた智秀はハルの家事を手伝い、実はお互いにラブラブなもんだから二人でくっついて仲良く歌を歌っているところに範太郎が帰宅。二人の姿を見た範太郎は激怒してハルを追い出し、智秀に井戸からくんだ水をドバドバとかけたもんだから智秀は高熱を出して入院。退院して家に帰ると通っていた中学は退学させられ、暇をもらって田舎に引っ込んでいたマスの元へ所払いされてしまう。気楽にマスのもとに行った智秀は先に帰っていたはずのハル(ハルはマスの姪だった)は女郎屋に売られてしまっていた。ショック大きい智秀はそのまま家出して消息不明になる。
良利にもついに前線に出動命令が出た。

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そしてまた、終戦の翌年。出征した一郎司も剛次郎も、良利も戦死していた。範太郎の家では家財を売ってお利江が食べ物を買出ししていたが、手に入れた酒を一郎司と剛次郎の写真に供えただただ悲嘆にくれる範太郎。お利江は良利の遺影をたんすに飾り、お供え物をしていた。そこへ智秀が帰ってきた。家出してからは飯場を渡り歩き生計を立てていたのだという。喜ぶお利江だが、範太郎はそんなことはどうでもいいことと言い放ち良利の写真もいろりの灰に投げ捨てる。「もうこんな家からは出て行こう!」と言う智秀。
これを受けて、お利江は範太郎に力強く言う。
「ここは私の家です。出て行きません。この子はあなたの子です。…今だから言わせてもらいます。私は女中ではありません」
とうとう腕力でも智秀に負けた範太郎は、ただただ一郎司と剛次郎の思い出に浸り涙する。
それに対し、生き生きと立ち働くお利江と智秀の姿。


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田中絹代ってすごいなぁ、と思ったのはまず、もともとのお利江は16歳で範太郎の家に来たことになってたそうだから序盤では16歳の役を演じていたわけで、思いっきり無理があると思いきやそうでもないこと。立ち居ぶるまいがちゃんと若い娘のと変わらないのに感心。表情は…まぁ仕方ない。それに対しての三国連太郎の老け役だけど、これはこれで悪くないんだけどやはりまだ老けきっていないのが判るのだな。細かい所作とか、背中の丸まり具合とか細かい細かいポイントなんだけど見てて思ったのはこの所作が重要なのだということ。そういう意味では、何も歯を抜くまでしなくても…というのが正直な感想だった。まぁたしかに、顔はだいぶ老けますが。それでも熱演には変わりなくて、田中絹代と中村賀津雄に水をばしゃばしゃとかけるシーンは凄い顔だし、かけられるほうも良くやったなぁ。
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この範太郎ってとにかく上には弱く下には威張りまくりの、典型的な軍人のキャラなのだが結局体制が変わるとよりどころがなくなっちゃうから完全に腑抜けになる。これはホント、男性の一典型。こんな風に終戦による価値観の変化についてけなかった家は結構あったと思うな。愛憎劇のどろどろなんだけど、これを家城巳代治は変にくどくない演出で見せてくれている。プロダクションムービーから離れて撮りたい作品を撮るために独立プロを興した中心人物と考えると、もっと作品にはくどい思い入れが濃く出てくると思いきやそんなこともないというのが好感持てます。
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この作品には協定で本当は出られないはずの高千穂ひずるも出てるけど、本人は「お姫様役はもうたくさん」と思って東映との契約をあえて更新していない時期にこの作品に出演。でもとても楽しそうにハルの役を演じていて、映画の流れ的には見事にリリーフ的な役割。

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この作品の撮影を担当した宮島義勇は「天皇」なんてあだ名をもらってた人で、略して「宮天」。東宝争議の中心人物の一人だったけど、後に東宝を離れてフリーになっていた。現場には下駄履きで現れて、監督に対して真っ向ケンカを売るタイプの人だったそうな。だいたい監督に対して「映画の撮影をオレが教えてやる」と言い放つ人だもん。この作品の後、東映で「裸の太陽」という作品を撮ったときにロケ終了し東京に戻ろうかというとき、東宝争議の際に会社側にたって対立した監督の渡辺邦男(こちらも新東宝で「渡辺天皇」との渾名をもつ)がたまたま「おこんの初恋 花嫁七変化」を撮っていたので「来なかったのは軍艦だけ」と言われた東宝争議の中心人物の「両天皇」の鉢合わせを避けるべく、東映のスタッフが宮島義勇を「裸の太陽」のスタッフともどもロケ地の小野新町に足止めさせて1ヶ月毎日焼酎飲みながらの反省会。結局現地の店の焼酎を飲みつくしてしまったので帰らざるを得なくなり、帰ってきたら渡辺邦男と宮島義勇がばったり。すわ一触即発か、と思ったら二人で談笑していたのを見て周囲は大騒ぎして損したとくさりまくったという逸話もあるそうな。
プログラムピクチャーでなく、物語としての映画を撮ろうとした志は結果的にはこの後に行き詰るけど、結果的には後のATG作品などの独立系作品の下地を作った。当時の映画会社の了見は狭かったのね。
製作する方々は、もっと「いい映画を提供しよう」というサービス精神を持ってほしいもんである。

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Comments

おひさしぶりです。
総統はクロサワ天皇しか知りませんが、
他にもずいぶん天皇はいらっしゃったんですねえ。

ところでこの「異母兄弟」は未見なんですが、
三国ちゃんの「歯を抜く役作り☆シリーズ」
で思いだされるのは、
「野獣死すべし」松田優作師匠、「楢山節考」の
坂本スミ子様等がおられますが、そんな肉体改造までやっちゃう役者バカ軍団の中で、最上屋さまのベストワンはどなたでしょうか?

Posted by: ガットラー総統 | June 03, 2008 at 03:20 PM

おぉ、総統お久しぶりです。
歯抜き役者のベストワンですか?

えーーーーーーーー、そうですねぇ。

せっかく抜いたのに報われていない、北村一輝をぜひcoldsweats01
これは役者バカというより、ただのバカかもしれませんが。

Posted by: 最上屋 | June 04, 2008 at 11:48 PM

そうですか、北村一輝氏も歯抜き役者だったん
ですね。調べましたら9本抜歯みたいですが、
歯医者さんも大変だ…。
しかしハヌキングはやはり三国ちゃんらしいですね。
総抜歯て!
髪の毛抜いたロバート・デ・ニーロもスーさんの
前ではタクシーに乗って逃げ出すかと。

(あ、髪の毛ぬいたのは「アンタッチャブル」らしい
ですが。)

Posted by: ガットラー総統 | June 05, 2008 at 10:00 AM

実際のところ、この作品の三国連太郎は、はっきり言って
「いまいちから回り」といったところですかねぇ。
確かに顔は老けたかもしれないけど、体が年寄りになれていない
と言うのが正直なところで…
年寄り独特の所作というか、体つきというか、その辺が
まだまだなんですよ。考えてみればこのときまだ30代だし
若いんで、無理があったかもです。

気概はすばらしいけれど、プロとしてはその後も考えると
せいぜいデ・ニーロくらいにしといた方が良かったんでは
ないかしら、とワタシ的には思ったです。

Posted by: 最上屋 | June 05, 2008 at 10:38 PM

そうですか…。
役者さんも費用対効果ならぬ、
肉体改造対効果を考えなければ、
身が持ちませんねえ。

というか、役者という人種はすべからく
ナルシストでないとやって行けないと
思いますので、効果云々よりも、
「ここまで無茶なことやるオレ(アタシ)って
スゴイ!!」
といった感情に突き動かされての行動、
というのがその真相の95%のような気がしてきました。sun

Posted by: ガットラー総統 | June 05, 2008 at 11:03 PM

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