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April 19, 2008

雨月物語

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アホな映画を見て楽しむには、しっかりと定石を外さずにいい映画も見ておかなくてはなりません。と考えているのだが、もともと関心はあったのにズボラなものでまともに溝口健二の作品を見ていなかったことに気づき、何を見たらいいか考えて選んだのがこれ。
実際のところはむしろ、撮影を担当した宮川一夫の仕事をちゃんと見てみたいと思ったのが大きい。「トリス」のCMしかきちんと見てないもの。それにしてもやっぱ大映はすごい映画会社だったのね、と思うのが監督はじめとするスタッフの陣容。溝口健二と対極の生い立ちとしか思えない増村保造とが一緒に仕事しているんだからなぁ。
この時期の大映作品は海外コンペでめっぽう強かった。この「雨月物語」も例にもれず、ヴェネチア映画祭でサン・マルコ銀獅子賞を獲得している。
これにものすごーく貢献しているのは当時大映キャメラマンのエース、宮川一夫
この人が撮影を担当した作品は、国内のみならず海外での評価の高いことったら。

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雨月物語  1953年 大映
監督 溝口健二
原作 上田秋成
脚本 川口松太郎・依田義賢
撮影 宮川一夫
主演 森雅之、田中絹代、京マチ子

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時は戦国時代。
近江の農村で妻の宮木(田中絹代)と息子の源市(沢村市三郎)と暮らす陶工の源十郎(森雅之)は義弟の藤兵衛(小沢栄小沢栄太郎)と焼物の行商をしたところ商品が高く売れたので、もっと作ってさらに売り出そうと決意。藤兵衛は藤兵衛でなんとか侍になりたいと思い町へ出ようとするが、女房の阿浜(水戸光子)に止められてしまう。それなら、と源十郎はどちらも一家そろって売りに出かけよう、と考え何とかこさえた焼物を舟に積み込み、湖の向こうの町まで出ようとするが途中で行き会った船頭(天野一郎)が「舟に乗った山賊が出る、やめておけ」と忠告。そのまま船頭はこときれたのを見て源十郎は宮木と源市を途中で舟から降ろし、村に帰すことに。
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街での焼物売りは大繁盛。だが、その金の自分の取り分で藤兵衛は具足を買い侍になるべく武将のもとへ走る。それを追った阿浜は途中で落武者に襲われ、てごめにされてしまうのだった。きゃぁ。
残された源十郎のもとに高貴な女性、若狭(京マチ子)とその侍女・右近(毛利菊枝)が現れ、買った焼物を朽木屋敷に届けてほしい、と頼む。その屋敷に行った源十郎、ものすごく歓待されて若狭に「いっしょにここで暮らしましょう」と誘われて意志薄弱にもそのまま居ついてしまう。結ばれちゃったし。Ugetsu18
一方、雑兵になった藤兵衛はたまたま逃げてきた敵方の武将(光岡龍三郎)が自害するところにでくわし、タナボタでその首を持ち帰ったもんでいきなり大出世。部下を引き連れ女郎屋に行ったら、何とそこで阿浜に再会。阿浜は遊女に身を持ち崩していたのだ。藤兵衛のショックは大きい。なんとなくこれじゃイカンと思い、家に帰るタイミングを計っていた源十郎は屋敷から外出したときに着物を宮木に買おうとし、ここそこの屋敷に届けてくれと着物屋(上田吉二郎)に頼んだら着物屋は顔色を変えてそのまま持ってってください、と懇願。変だと思いつつ屋敷に帰ろうとした途中、出会った高僧(青山杉作)に「死相が出ている」と告げられる。Ugetsu19
腑に落ちないけど高僧にありがたい経文を体に書かれた源十郎は若狭たちにきつく問い詰められる。もう家に帰りたい、と懇願するも若狭たちは許さず私たちの国へまいりましょう、と誘うのだがここで源十郎は若狭たちがもはやこの世のものではない、亡霊だと気づく。そのまま気を失い、目が覚めると宝刀を盗んだと目代にとがめられ刀をとりあげられてしまう。眠っていたその場所は廃墟となった朽木屋敷の跡だった。何もかも失った源十郎は妻の待つ村へ帰ることを決意。
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村に帰ると、明かりのない我が家。その周りをぐるりと巡って戻るとそこには妻の姿があった。帰るのが遅れたことを詫びる源十郎を宮木はやさしく許し、安心した源十郎は息子のそばですやすやと眠る。翌朝、村の名主(香川良介)の呼ぶ声で目を覚ました源十郎は妻がいないことに気づく。名主に聞くと、宮木は村に戻る途中で落武者に襲われ瀕死のケガを負ったまま源市を村に連れ帰り、そのまま亡くなっていたのだ。
一方で妻の有様に愕然とした藤兵衛は侍になることをやめ、阿浜とともに村に帰ってきた。村で黙々と焼物にうちこむ源十郎と畑仕事に精を出す藤兵衛夫婦、そして母の墓の前で遊ぶ源市。

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原作は上田秋成の手になる同名の物語集で、映画はこのうち「蛇精の淫」と「浅茅が宿」をもとにしてこれにモーパッサンの短編小説「勲章」を組み合わせて一つの物語にしたもの。川口松太郎のオリジナルではないくせに原作みたいに扱ってるのもえらい虫のいい話のような気もするが、まぁいいや。
何と言ってもこの作品で光ってるのは宮川一夫のキャメラ。この人らしい、タテの構図を生かしてパンとクレーンを効果的に使うワークはお見事。また、湖で霧の中を舟が進むシーンの幻想的な雰囲気はフィルムの現像処理にとことんこだわった成果で、この人の職人芸。ラスト近くの、源十郎が家に帰るとだれもいないのに一回りすると宮木が家の中にいる有名なシーンがあるけど、これは家の中がフレームアウトした間に田中絹代がスタンバイしたわけで、いったい何度リハしたんだかと思う。これらの画がとにかく溝口健二のやわらかいウェットな感覚にハマってるので、とても密度の高い作品だと思う。だいたい溝口は新作の撮影にあたって宮川一夫のスケジュールが空くまでクランクインしなかったこともあるなんて逸話があるくらいだし。宮川一夫の仕事というと「鴛鴦歌合戦」「無法松の一生」「羅生門」「用心棒」と出るわ出るわ、どれも評価の高いやつばかり。溝口健二とのコンビも多いので、溝口をもっと見てみようと決意。
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森雅之のへなちょこ感はここでもすばらしい。この人の役柄って失敗すると女に甘えるのが多いけど、この作品ではその典型かも。京マチ子の能面っぷりは最高点。この作品では、正体がバレたときの怖い顔はほんと怖いぞ。
こんなふうに怨霊と一時浮気するようなだんなでもけなげに帰ってくるのを待つ女房の田中絹代はけなげ。幽霊になっても待っていてくれる、その純な執念が感動的。夫婦って、こういう感覚だといいよなぁ、と思わせる溝口演出の台詞のない間のタッチはとても柔らかいけどそれでいて間が抜けることがないのはうれしい。

有名な溝口健二の言葉、「反射していますか」はどっかでぜひ使ってみたいもんだ。
飲み屋のねーちゃんとかに使ってみようかしら?

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