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February 18, 2008

世界大戦争

東宝の特撮映画といえばまず「ゴジラ」から始まる一連の怪獣ものがメジャーであるが、それ以外に怪獣の出てこないものがあって「美女と液体人間」「電送人間」「ガス人間第一号」がこの辺のでは有名なところ。
なかったことになってるかもしれない「獣人雪男」「ノストラダムスの大予言」もこちらの流派に入るけど、先に述べた怪人もののほか「マタンゴ」「妖星ゴラス」なんてえらい毛色の違う作品の脚本を担当したのが木村武という人。
明るく楽しい東宝映画なはずなのに、この木村武が書いた脚本は見事にダークな色合い。
単独ではないけど、そんな木村武が脚本を担当した芸術祭参加超大作がこの「世界大戦争
見てみたら、切ない話なんだな、これって。
とにかく、日本ってのは徹底的に叩かれた敗戦国だったという事実が
まだ人々の体に染みていたことがよく判ります。
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世界大戦争 1961年東宝
製作 藤本真澄・田中友幸
監督 松林宗恵
特技監督 円谷英二
脚本 木村武・八住利雄   音楽 團伊玖磨

世界大戦から16年、東京も復興し人々の新たな生活が営まれている。
アメリカプレスクラブの記者、ワトキンス(ジェリー伊藤)の運転手を務める田村茂吉(フランキー堺)は神経痛持ちの女房、お由(乙羽信子)と長女の冴子(星由里子)はじめとする3人の子供とささやかながらも幸福に暮らしている。
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国際的に緊張が高まりつつあったが、彼にとっては戦争はもうこりごり。敗戦国の日本が戦争に巻き込まれるなんて考えられない。心配事は、娘の冴子と彼の家の二階に下宿する外国航路船・笠置丸の通信士、高野(宝田明)との仲くらいのもの。
航海から帰った高野は、病気治療中のコック長・江原(笠智衆)を見舞う。
江原は自分の娘・早苗(白川由美)が保母をやっている保育園を手伝っていた。
「こうやって子どもたちの顔を見ていると、つくづく平和とはありがたいものだと思います」
とは江原の弁。みんな平和のありがたさをかみしめていた。
ラブラブな冴子と高野は茂吉に自分達の結婚を認めさせ、もう幸せいっぱい。

それでも連邦国側と同盟国側との緊張は高まる一方。
連邦国ミサイル基地ではいきなり発射命令が出され、司令官(ハロルド・コンウェイ)は神に許しを乞いながら発射ボタンを押す。が、これは後に機械の故障と判明しギリギリセーフで核戦争は回避。
同盟国側も司令官のミサイル基地視察中に、雪をどかすため基地のとなりの山に仕掛けた発破を倍にするなどという危険極まりない作業のおかげでミサイルの発射装置が作動してしまう。
視察中の司令官(エド・キーン)は自ら発射装置を処理し、こちらもギリギリで発射を回避。基地は歓喜に包まれる。とにかく、どちらも戦争など望んでいない訳なのだがこんな日が続いているおかげでみーんなテンパってしまい、神経的にはズタボロ。
全面核戦争を回避すべく全世界に外交攻勢をかける日本政府=東宝内閣は総理大臣=山村総外務大臣=上原謙防衛長官=河津清三郎官房長官=中村伸郎となかなかの布陣で、現在の福田内閣より重量感があるなぁ。

それでも緊張の高まる38度線上では局地核戦争まで発生。一気に緊張が高まるが
何とか休戦が成立。しかし、北極海上で再び空中戦が勃発。
停戦協定は破棄され、ついに本物のミサイル発射命令が発令される。
連邦国側に属する日本にもミサイルが飛来する…

結婚する娘のために、チューリップの球根を植える夫婦にも、娘を早苗の保育園に預け働く母・おはる(中北千枝子)にもいきなり「戦争」が降ってくる。
標的になった東京から脱出をはかる人々のため交通機関はマヒ状態。ゴーストタウンになった東京に残る田村一家、娘を迎えに必死に走るおはる、そのおはるを待つ娘や迎えの来ない子どもたちを守る早苗、無力感に絶望する首相の頭上にミサイルが迫る。
モールス信号で高野にメッセージを送る冴子。再び何もかも失うことを認めたくない茂吉。

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水爆の爆発で東京は真っ赤に融けてしまうのだった。ニューヨークも、パリも、モスクワも。

笠置丸の船上では船長(東野英治郎)が乗員の意思を問うていた。
「廃墟になった東京は放射能で汚染されている。それでも、君たちは東京に帰るというのだね…私もそうだ。…東京へ帰ろう」
江原が皆にコーヒーを配る。東京へ戻るということは、彼らの死を意味するのだ。
それでも高野も江原も、乗組員みんな東京へ帰りたかったのだ。
笠置丸は転進し、東京へ進路を変える。


スタッフロールを見るだけで、この作品は超大作。
藤本真澄と田中友幸の二人が製作に名を連ねているんだもの。
それはそれとしても、このあまりにイタい物語。特撮の娯楽作品なのに「ゴジラ」でも痛い描写があってえらくリアリティが増していたけれど、この作品でもゴーストタウンにどんつくどんつくやりながら通り過ぎる宗教の人々がいたりして、この辺が東宝クオリティ。
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最後の笠置丸の船上では笠智衆に東野英治郎という夢の競演なのだが、それよりもあまりにまぶしい白いコーヒーカップが、とても悲壮感を増している。
戦争を実体験していた人々がまだたくさんいた時代の映画だから、何かしたわけでもないのに空から爆弾が降ってきて命を削った体験をした、その無常観に似た感覚がものすごく生きていると思う。ほんとに、平和ってありがたいものなのだという感覚は今はないだろうなぁ。
見ていて素直に気分の重くなった作品でありました。木村武のホンは重い。
日本って、元寇で史上初の火薬を使った戦闘を体験し、原子爆弾を戦略攻撃で初めて使われ、水爆での被爆も最初に体験したというのは勉強になりました。いろいろとノーテンキに書き込みしたかったことはあったけど、もういいや。
戦争はイカンのだな。

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February 16, 2008

市川崑亡くなる

犬神家の一族」リメイクの頃から、市川崑がヤバいらしいとは聞いてたけれど
とうとう亡くなったとの報。享年92歳、

市川崑というと、まず思い出すのは自分的には「犬神家の一族」ということになる
訳だが、この人のこだわりはまず「画」ということになるのかも。
芸術か記録かとの論争にもなった記録映画「東京オリンピック」ではこの
こだわりがよく判る気がする。

でも、とにかくとらえどころのない人だなぁ。
文芸作品もやるけど特撮物も、ドキュメンタリーも、喜劇もやる、何でもやってる
とにかく型にはめられるのが嫌だったみたい。すごいのは、それがみんな
水準が高いことかも。
巨匠とか名匠という呼び方がこれまたあてはまらない、才能がまたなくなりました。

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February 13, 2008

マイラ

大昔、確か「スクリーン」誌だったと思うけどカラーグラビアのラクェル・ウェルチの写真を見て子供心にヰタ・セクスアリスがちょろっとあったのだが、中学に入ってそこいらの映画を観まくるようになった頃はそんなこともすっかり忘れており、そうこうしてるうちに「ショーシャンクの空に」を観た時に、主人公の房の壁に貼られているポスターを見て「あ、ラクェル・ウェルチだ」と気づいた。とにかく、ナイスな体してます。
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(←昔見たグラビアはこのコスチューム姿)
これで昔見たスクリーン誌のグラビアを思い出し、その後「恐竜100万年」のDVDを手に入れてすっかりラクェル・ウェルチにシビれてしまったので、彼女の出演作をいろいろあさってみた中でこの「マイラ」の存在を知った。ラクェル・ウェルチのほか脇にはジョン・ヒューストン、メェ・ウエスト(実はこの人がメインなんだけど)に若き日のトム・セレック、駆け出しのファラ・フォーセットが出ている豪華版なのに、内容がかなり変と聞いてなおさら興味がわいたし、公開時のパンフレットには淀川長治が解説を書いていたそうでゲイの方々には何かしら特別なものがあるらしい。日本公開のポスターのキャッチが「むかしマイラは男だった 衝撃!背徳!ハレンチ!腐敗!堕落!頽廃!」だし。何とか見られないものかと画策してたけど(むかーし、テレ東で深夜枠で放送されたことがあったそうな)いかんせん盛岡住まいではどうにもならず、困っていたら海の向こう、アメリカ本国ではラクェル・ウェルチの出演作が立て続けにDVD化されておりこの中に「マイラ」もあったもんだからすぐさまネットで購入。これでやっと見られると喜んでいたのだが、いざ見ようとしたらPCがどうしてもディスクを読み込めない。
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どうも不良品を買ってしまったらしいので、そんなに高いものでもないので再度発注。
やっと見ることができたけど、こりゃまぁすごい作品だった。結果、不幸な作品になってしまった。

マイラ Myra Breckinridge 1970年
監督 マイケル・サーン
原作 ゴア・ヴィダル

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ゲイである映画評論家のマイロン・ブレッキンリッジ(レックス・リード)は怪しげな医師(ジョン・キャラダイン)による性転換手術を受けて新たにマイラ・ブレッキンリッジ(ラクェル・ウェルチ)として生まれ変わる。そのマイラは伯父であるバック・ローナー(ジョン・ヒューストン)の経営する俳優養成学校に乗り込む。
この学校はかなり怪しげなことを知っていたので、
「自分はあなたの甥マイロンの妻なのだがマイロンは先日亡くなってしまい、生活に大変苦労している。義母のガートルードが今わの際に語ったことによると「あなたにはバックの財産の半分をもらう権利があるから、何か困ったときにはバックのところに行きなさい」ということだった。ぜひに財産の半分を譲ってもらいたい」
などと伯父に語る。
当然、バックはそんなことは寝耳に水。いくら妹のガートルードの言葉とはいえそう簡単には信じられない。
本当にマイラはマイロンの妻なのか疑わしいので、この裏づけをとる一方で彼女を学校の講師として雇い入れることに。
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この学校、凄腕女性エージェントのルーテシア・ヴァン・アレン(メェ・ウエスト)がスポンサー。ルーテシアは若い男とえっちするのが大好きで、その供給源のひとつがこの学校。そして、彼女と寝た男はスターへの階段を上ることが出来る。
マイラは学校の生徒のカップル、ラスティ・ゴドウスキ(ロジャー・ヘレン)とメリー・アン・プリングル(ファラ・フォーセット)と親しくなるが、彼らはきわめてノーマルな倫理観の持ち主。マイラはその価値観を壊したくて仕方がない。マイラはルーテシアにメリー・アンを売り込む。Myra_breckinridge_se17

ラスティが仮保釈中に暴力事件を起こし逮捕されたが、ルーテシアの力を借りて保釈させたことからマイラはラスティたちとさらに親密になったけど、マイラはあくまでもラスティの倫理観を何とかこわしたいばかりにラスティをこっそり呼び出して「処女」を奪ってしまう。
ラスティはメリー・アンの元から消えてしまい、メリー・アンはマイラを頼りにするもんだからこれ幸いとマイラはメリー・アンを自分のモノにしようとするけれど、どうしても最後の一線を越えることは出来ない。(ラスティはルーテシアの元にいた。メリー・アンを売り出す交換条件)
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一方でバックは、マイラがマイロンと結婚していなかったことを立証しようと手を尽くす。さらには、マイロンの死亡証明もないことを発見。会計士と共にマイラに権利などないことを明らかにしようとしたが、ここで奥の手。
マイラは自分が美容整形を受けたマイロンだという事実をバラしてしまう。
みんな目が点。

メリー・アンへの思いを何とかしたいマイラは、何とかしようと決意ばかりしながら交通事故に遭ってしまう。
目が覚めると、マイラはマイロンに戻っていた。交通事故で元に戻るんかい?
メリー・アンへの思いが遂げられるかもしれない、と期待するマイロンの姿でthe end。

原作はゴア・ヴィダルの同名小説で発表されるや大ヒット。ジェンダー論も含めて古い性的倫理観にケンカを売る内容だったことから大論争になったそうで、その原作を映画化するってんで20世紀フォックスもメェ・ウエストのカムバックやら、自身もゲイの評論家レックス・リードに監督としてもお騒がせ男のジョン・ヒューストンをキャスティングとハデにいこうとしたわけだったが監督のマイケル・サーンが暴走モード。期待以上にやりすぎの作品になったもんで、取り扱いに困ってしまったらしい。
確かに、もう当時のアメリカは性的にオープンな時代になっていたとはいえ、それをそのまんま映画というメディアに仕立てたこととその表現にオールド・ハリウッドを使ってしまったのが最大の問題。
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この作品の前年にイギリスで「ジョアンナ」という佳作をものした当時弱冠27歳のマイケル・サーンがハリウッドに招かれて撮ったわけだけど、マイケル・サーンがハリウッドの人だったらこんなにはやらかさなかったろうなぁ。その辺を大目に見ても、張り形つけた女にバックバージンを奪われる男の姿を目撃したり、その行為の表現に「古きよきハリウッド」の作品や俳優がモンタージュに使われるのは問題ありまくり。まだ古い人たちはいっぱいハリウッドに残ってたのだし、これには勘弁して欲しいと思う人たちに集中攻撃をされる。結果「オトナの事情」でこの映画は冷遇されることになり、露骨に性的表現があるわけでもないのにR指定にされ見る機会は制限されてしまった。このあと、マイケル・サーンはほとんど映画を撮っていないのはこの作品で干されたからだろう。
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特記事項としては、ファラ・フォーセットがかわいいんだな、とにかく。後にTVシリーズ「チャーリーズエンジェル」で大ブレイクするとは。トム・セレックの若き姿も見られるのが面白い。当時の定番、気狂い博士といえばジョン・キャラダインてのも笑える。

期待しながら実際に見てみると、作品の出来としては厳しい評価になるかなぁ。マイラとマイロンは実は同一人物なんだけど、男性と女性との別人格になりきれてない未分化された不安定さを表現するのにマイロンとマイラが同時に画面に登場する演出を何箇所かでやってるけど、普通に見るとあまりに前衛的。理解しづらい方も多いと思う。この不安定さが物語の肝なんだが。
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それと多数、古い映画の引用がカットバックされるんでちょっと小気味よさに欠ける。とはいえ、オールドハリウッドを知ってるとこのカットインは楽しいだろうな。シャーリー・テンプルにローレル&ハーディ、マレーネ・ティートリヒ、クラーク・ゲーブル、マリリン・モンローなどなどの映像がカットインされてるんで、このあたりの顔ぶれを知ってるかどうかで物知り度が計れるかも。Myra_breckinridge_se29


それにしても、今回は輸入版の日本語字幕なんかないソフトを見たもんだから大変だった。雑感になるけど、もっとラクェル・ウェルチの出演作をソフト化してほしい。
マイケル・サーン監督の「ジョアンナ」もDVDにしてほしいけど、たぶん20世紀フォックスエンターテインメントはやってくれないだろうなぁ。でも、お願いしたいです。

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