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October 12, 2007

黒船

 20世紀フォックスというと、超大作「クレオパトラ」のトラブルはじめこまごまと
しでかしている会社という印象があるのだが、DVDにしても「ミクロの決死圏
なんて以前は廉価版で売ってたのに「スタジオ・クラシック」なんてシリーズに
入れられて再販されたら思い切り値上げされてたりして非常に面白くない売り方をしている。それでもこの「黒船」みたくこのシリーズでしか売っていないのなら値段もまぁ、納得いくのだけども他の作品群見るとなぁ、買う側の気持ちも考えろよな、と言いたくなるのも仕方ないような。
DVDで商売というのはあまりおいしい商売ではないみたいだけど、それならそれでDVDならではのアイテムを考えましょうよ。

で、この「黒船」なんだけど当時のハリウッドは空前の日本ブームのさなか。
前に見た「サヨナラ」(MGM製作)の成功を見て首脳部が製作を決めたらしい
のだが、あっちがそうならウチはこうやるでぇ、負けへんでぇ、金に糸目はつけへんでぇ、という勢いだけはすごい、そういう作品だった。
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黒船 THE BARBARIAN AND THE GEISHA 1958年アメリカ
監督 ジョン・ヒューストン
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1856年の下田。ピアース大統領からアメリカ総領事に任じられたタウンゼント・ハリス(ジョン・ウェイン)は通訳のヘンリー・ヒュースケン(サム・ジャフ)と共に入港し下田奉行の田村左衛門守(山村聡)に上陸許可を求める。しかし、左衛門守は米国総領事としての上陸を認めない。あくまでも個人としての上陸を認められたハリス一行は宿舎に荒れ寺を使うよう指示される。
それでも仕方なしに建物をきれいに片付け常宿として体裁を整えるが、地元では食料の購入もままならず苦労を強いられる。
これにハリスは抗議し、条約締結のため将軍への謁見を求めるのだが左衛門守からは返答がないまま無為に月日が経ってしまう。
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そんな折、左衛門守に招かれたハリスは芸者のお吉(安藤永子)を紹介され、彼女がハリスたちの身の回りの世話をするためにハリスの宿舎に送り込まれる。
実際にはハリスの情報を得るために左衛門守が送り込んだスパイとしての役目が主で、最初はハリスを恐れていたのだが次第に打ち解けていき親密になっていく。
そんなこんなで数ヶ月。下田にアメリカだかイギリスの船がやってくる。すわ、本国からの使いかと出迎えるハリスだが、この船はコレラが発生しており乗員が岸に泳いで逃げてきたもんだからハリスが止めるのも聞かず下田の人々は彼らを上陸させてしまうのだな。日本人はなんと善良なのでしょう。
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おかげでこの後、コレラが下田で大発生。次々に住民は病に倒れていくが病人の看護とか死者の埋葬などにハリスたちは奔走する。お吉も過労で倒れてしまうが、ここにきてハリス総領事、病原菌の撲滅のため患者の発生した家屋に火を放つ。左衛門守もこれには激怒、ハリス一行を謹慎とし本国に送り返すこととした。

お吉も元気になり、ハリスは本国に帰る準備を始めるが屋敷の外から聞こえるのは住民たちの声。
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「ありがとうございます、ありがとうございます孝志郎さま…」ハリスが焼き討ちしたおかげでコレラを終息させることに成功したので、最初はハリスに反感を抱いていた住人たちもそのご恩に感謝しておったのだった。
左衛門守もこのハリスの働きに応えるべく、将軍との謁見の手筈を整えた。
ついにハリスは江戸に入府し、将軍に謁見。日米修好通商条約の締結を幕府に迫る。しかし幕府内部は賛否二つに割れ、保守派のキーマン四条殿が暗殺されるまでに騒動は拡大。
それでも開国派がやや有利になると見るや保守派は左衛門守に対しハリスの暗殺を命ずる。これを断れない左衛門守、お吉に命じハリスの寝室に目印を付けさせ、自らハリスを斬るべく宿坊に潜入。寝室に入り、寝ているハリスを斬ろうとし布団をめくった…しかしそこにいたのはお吉!ハリスを護るべくお吉は身代わりになろうとしていたのだ。ハリスを愛しているお吉の姿に敗北した左衛門守は自害する。しかし、これはお吉にとってもハリスとの別れを意味していた。
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もともとはかなりジョン・ヒューストンも思い入れのあった作品だったらしい。
でも、完成後のハラホレさは後の「未来世紀ブラジル」とそっくりで、まず完成試写にフォックス首脳がケチをつけた。で、再編集となったがまたまたクレーム。今度はジョン・ウェインから
「オレがもっとかっこ良くなるようにしてくれぃ」とねじこまれて再々編集。この段階でジョン・ヒューストンは「もう知らん」とさじを投げたとか。
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もともとは日本側からのアメリカ観をハリスという人物で表現したかったので、題名も「タウンゼント・ハリス物語」だったのにこの表現にまずクレーム。題名も「野蛮人と芸者」にされてしまった上に、ジョン・ウェインはとことんアメリカのヒーローでいたかったもんだからハリスが変にかっこよくなりすぎてしまった。日本でのロケは5ヶ月かかったそうだけど、この監督と主演男優との見解の相違はかなり深刻だったそうで二人は口もきかなくなったとか。
おかげでハリスの人物像がぶれてしまっているし、ムリに修正を重ねたもんだから物語が盛り上がりに欠ける。もっとハリスと左衛門守との邂逅がドラマチックだとかお吉とのロマンスの描写があるとかすればましになったと思うけど、そんなのどこにもないんだもん。ラストのお吉との別れも「こんなんでいいのか?」だし。
ジョン・ヒューストンがあまりジョン・ウェインくささを出さないように撮っていたせいかあとから編集で手を入れてジョン・ウェインを前面に出すのはかなり苦労したと思う。
それでも、茶坊主とハリスとのやりとりなんか見ると元々はこんな感じにしたかったんだろうなぁ、と推察できるので、ちらほら見られるそういう喜劇的な部分を楽しく見るのがいいのかも。

この作品の日本ロケは「サヨナラ」の3倍の経費になったそうで、それもこの画面で見られる見事な美術の仕事をみると納得できるな。日本側のスタッフもいい人選で脚本監修が衣笠貞之助、台詞指導につい先ごろ亡くなった犬塚稔、美術に伊藤熹朔、吉川観方、他に弘津三男という時代劇の製作では当時でもベテランのスタッフで堅め打ち。犬塚稔なんて、林長次郎(長谷川一夫)のデビュー作「稚児の剣法」の監督・脚本やってる!…しかも、この映画撮影が円谷英一(円谷英二の本名!)
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下田の町並みとか江戸城内のセットなんかはまず現代では再現不能だろうなぁ。逆にこれから時代劇の美術を学ぶにはとてもいい教材だと思うです。
そんなに物語的にはたいしたことない映画なんだけど、いろいろと面白い点もちらほらあるです。まず田村左衛門守が英語ぺらぺら。(誰に教わったんだ?)お吉も最初から英語で自己紹介してるし、下田ってすごいところだ。
ハリス一行が江戸城に入るくだりって、画面だとどう見ても東大寺だし。
山村聡は男前。安藤永子は叶恭子に似てるのもユカイ。感心したのはサム・ジャフの日本語の上手さ。これならホントに通訳できそうだぞ。驚いたのが牧冬吉が端役だけどしっかり写っていたこと。この後「仮面の忍者 赤影」でブレイクするとは。
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史実を省みると、まず通訳のヒュースケンは後に斬殺される(1860年)だけど、享年28歳なんだよなー、って、サム・ジャフはどう見ても20代には見えんだろ。
お吉はこの後らしゃめんと皆にいじめられ横浜まで流れ、小料理屋を開くんだけど商売に失敗して酒におぼれ自殺してしまったのだ。なんともはや。ハリスはなぜか、生涯独身のまま74歳で亡くなるのだがこれはなんでだったの?と素直に疑問。
これがせめて、のちに不遇の人生を送ったお吉への思いゆえでありますようにと
願います。
実物のお吉は結構美人だったので、悲劇のヒロインとしては好素材。
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それはそうと、安藤永子ってこのほかに出演作が見当たらない。なんでだろ?湯屋のくだり見てて結構個人的には好みだなぁと思ったんだけど…
ひょっとして、わたしだけ?

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