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March 03, 2007

血を吸うカメラ

Peeping_tom16

 先日、自殺サイトを悪用して、これを通じて
知り合った男女3人を相次いで殺害したという
とんでもないやつに死刑が求刑されたという
ニュースがあった。
この男、人間の窒息して苦しむ表情を見ると
興奮するという性癖があり、集団自殺に誘うふり
をしておびき出した被害者を殺害する様子を撮影したり、苦しむ声を録音して
いたとか。あきれてしまうけど、シャレにならない悪趣味。

 でも、考えてみたら「人殺しがしたい」と思ったら、こんな方法で被害者を
おびき出せることを考えると、ネット社会ってこんな奴にも「便利」になった
訳なので、複雑な気持ちになるなぁ。「相手は誰でもよかった」なんて言ってた
昔の人殺しの場合、自分から直接モーションかけて被害者を誘ってる場合も
多いからそういう意味ではちゃんとした社会性も身につけていたわけなので、
今の人たちにくらべてずっと人間的には成熟していたような気もする。却って
冷酷な感じもするけど。

 それはともかく、この裁判を聞いて思い出したのがこの「血を吸うカメラ
名画といわれる「赤い靴」「ホフマン物語」を撮ったマイケル・パウエルの
サイコスリラーのカルトとして、評価されてんだかないんだか。
だって、時代を考えると題材がうまくないもの。現代ならホントにいい題材
だったろうけど、1960年という時代を考えるとあまりに気持ち悪く思われた
だろうなぁと思われるもんな。
今回初めて見てみたけど、実際には丁寧に作りこんである佳作だった。

血を吸うカメラ PEEPING TOM 1960年イギリス
 監督     マイケル・パウエル
 原案・脚本 レオ・マークス
 
映画スタジオで撮影助手として働くマーク・ルイス(カール・ベーム)は
幼少の頃、心理学者だった父の実験の被験者となって日々過ごした。
その結果、彼には異常な欲求が身につく。女性の顔をフィルムに収める
こと、特に恐怖におびえる女性の表情に対して執着するようになったのだ。
その結果、彼は町で拾った売春婦を殺害する際に恐怖におののく彼女の
表情をカメラで撮影していたのだ。
Peeping_tom2

カールはアルバイトでヌードピンナップのカメラマン
もやっていた。やはりフェチなのはモデルの「顔」。
カラダじゃないのか…それでいいのか?
自宅は間貸ししていて、その日家に帰ると住人の
一人ヘレン(アンナ・マッセイ)の誕生パーティが
                     行われていた。
Peeping_tom3

あまり社交的でないマークはそそくさと自室に
こもるが、やさしいヘレンはバースデイケーキを
持ってきてくれた。自分の過去を語るマークに
ヘレンは関心を持つようになる。こんな変わり者
に関心を持つって、どういう女だ?と思っては
イカン。スタジオでは映画が撮影中。しかし女優はNGばかり。アンダースタディ
のビビアン(モイラ・シアラー)のことを「撮影してあげる」と撮了後のステージに
に誘い出し、やはり恐怖におびえる顔をフィルムに収めながら彼女を殺害して
しまう。
Peeping_tom9

撮影したフィルムを現像したが出来は満足が
いかない。部屋を訪ねてきたヘレンに誕生祝い
のブローチをあげ、彼女が出版する児童書の
写真撮影の打合せと称してデートの約束をする
ことに。小道具のトランクの中に隠したビビアンの
死体が翌日発見され、スタジオは大騒ぎ。マークも事情聴取を受ける。
帰ってきてそのままヘレンと共に出かけるマークだが、やはり女性の
顔に対してのフェチは発現。
部屋に帰るとヘレンの母、スティーブンス夫人(マキシン・オードリー)が
部屋の中で待っていた。盲目の夫人はマークの人間性を見抜き、「娘を
カメラに撮らないで」と命ずる。自分の本質を見透かされ狼狽するマーク。
Peeping_tom11
ビビアンの死体を発見した女優のためにスタジオ
に精神科医が呼ばれ撮影に立ち会っていたが
その医師に自分の症例を尋ねるマークを
警察が怪しむ。スタジオを出てヌード撮影の
バイトに行くマークは尾行されていた。
それだってのにマークはモデルを殺害してしまう。足がつくに決まってるだろ。
一方、マークの部屋で彼の帰りを待つヘレンはマークがどんなフィルムを
撮っていたかを知ってしまう。ああ、彼は殺人者だったのね。それでも
ヘレンはマークを助けたい、と自首するよう説得。
Peeping_tom15

一方、マークを尾行していた警察はヌード撮影現
場となっていた新聞売店の2階でヌードモデルの
死体を発見。犯人はどう考えたってマーク。奴の
自宅に踏み込め、ってんでパトカー出動!
警察が来たことを知ったマークはヘレンへの思いを告げ、自ら命を絶つ。

見てみてまず感じたのは、よく作りこんである映画だということ。
序盤からマークのキャラクターをムリに説明することなくテンポ良く流す
演出は、脚本の良さとともに評価するべき。でも、もっとしっかりした凶器
のほうが良くないか?あんなんやってたらターゲットは逃げちまうぞ。
Peeping_tom8

モイラ・シアラーはマイケル・パウエルの作品の
良きパートナーでここでも被害者の一人として
登場。ちょこっと踊ってくれるけど、カラダのキレは
齢を重ねてもさすが。監督本人も劇中登場する
フィルムに出演。

幼少のマークは監督の息子だし、生みの母親として姿がちらと映る女性は監督の
夫人と自主映画みたいなキャスティング。
Peeping_tom5


お母さんの手です



Peeping_tom6


右がマイケル・パウエル


まぁ、あくまでも40年以上前の作品ということでそんなにどぎつい描写が
あるわけじゃないけど、当時はやっぱ問題視されたろうと思う。にしても、
これを撮ったばかりに干されたマイケル・パウエルはもったいないな。
とにかく手馴れた演出なんで、見るのに苦労しないのですから。
レオ・マークスもかなりリサーチしてあったと推察される、労作なのに。
ブニュエルの「エル」もこんなフェティッシュの異常性を映像化してる
ので、機会があれば比較してみたい。

現代に置き換えてリメイクするとかなり面白そうな素材です。
マークを演じたカール・ベームはかなりがんばってるけど、おかげで
アブナイ奴と思われたのかこの後は大して出演作がない。でもこの
作品ではものすごくいい感じ。最大の問題は、ヒロインのアンナ・マッセイ
があまり美人じゃないことかなぁ。かえってリアルでいいかもしれんけど。

個人的には、もっと新聞スタンドのアップ画面が欲しかったのと
Peeping_tom13
「もっと近くで撮ってくれ、マーク」




Peeping_tom1

もっと念入りに撮影して欲しかった…。
「頼むよ、マーク」

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