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March 21, 2007

DVDって

 DVDが一般的になってから、ある意味困った問題がある。
ヨーロッパ映画のDVDは結構早くに日本版DVD化されていたのだ
けれどこれが今はほとんど絶版。おかげで、今は希少価値が高く
なってしまいとんでもない値段がついている場合がある。いい例が
シェルブールの雨傘」とか「ロシュフォールの恋人たち」なんかで、
DVDソフトのはしりだったのだがこれが版を重ねることもなく1回こっきり
の生産で絶版。おかげでアマゾンのマーケットプレイスで探すと2万円とか
高値がついててびっくり。特に東北新社製ソフトは困ったもんで、ルイス・
ブニュエルの作品などDVD化してくれたのはいいけど初期生産数が少ないし
すぐ絶版にしてしまうもんだから、モイラ・シアラーの出演作「赤い靴」も今じゃ
高額商品。

生産ロットが少ないのははっきり言って困ります。

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March 15, 2007

緯度0大作戦

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だいたい、単独作品DVDボックスには
「映像特典満載!」なんて文句がついてて
ディレクターズカットだとかコンプリート版
とか未公開シーンとか、入っているわけだけど、だいたいはムダになる。そりゃそうだ。本編1回みりゃ、まぁ終わりですよ。何度も何度もディスク換えておんなじ映画みたりしないのが普通。

なんだけど、今回まじめにこのセットの3枚全部かけてみた。
実際、本編一回見ておしまいにする予定だったのだけど、このソフトは東宝ではえらく力を入れてこさえていてオーディオコメンタリーがすばらしすぎ。
まず、本編のコメンタリーは主演の宝田明。そして、海外版のLATITUDE ZEROのコメンタリーは岡田真澄!おまけに、東宝チャンピオンまつり用短縮版では声の出演の納谷吾朗が吹き込んでいた。で、やはり宝田明と岡田真澄の話が結構面白くて、結局2回ずつ見てしまった。コメンタリーは早送りだと聞き取れないし、今回は念入りに見たなぁ。
ま、本編の面白さうんぬんよりも、この映画の成立にまつわるお話の方が
有名で面白いので、本編のストーリーはどうでもよろしい。

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緯度0大作戦 LATITUDE ZERO
1969年東宝、ドン・シャーププロ
監督    本多猪四郎
特撮監督 円谷英二
音楽    伊福部昭


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田代博士(宝田明)、ジュール・マッソン博士(岡田真澄)、そして代表取材記者のペリー・ロートン(リチャード・ジェケル)が乗り込んだ海洋調査カプセルが海底火山の噴火に巻き込まれ遭難。
それを助けたのが緯度0の潜水艦アルファ号の艦長グレイグ・マッケンジー(ジョセフ・コットン)とアン・バートン(リンダ・ヘインズ)。そして、助手の甲保(大前均)

緯度0は地上をはるかに上回る技術力をもつ海底の理想郷。Tdv_16116d_223






負傷したマッソンを治療するのは姿博士(平田昭彦大先生)
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もっと出演場面があるかと思ったら
このシーンだけだったのが残念。
英語が使えるキャスト、だとぜひとも
天本英世もだしてあげてほしかった。


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この緯度0へ向かっていた
原子物理学の権威、岡田博士(中村哲)
とその娘、鶴子(中山麻里)がマッケンジーの
宿敵マリク(シーザー・ロメロ)に誘拐される。

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シーザー・ロメロ 素敵やん




彼らを取り戻すため、マッケンジーと田代達はマリクの本拠ブラッドロックへ
改装成ったアルファ号で向かいマリクが創造したモンスターたちとの戦いを
繰り広げるのだった。
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すごい戦闘スーツだ


このDVDの発売が2006年4月で、岡田真澄が亡くなったのが5月だから、彼のほとんど最後の仕事のひとつがこのコメンタリーということを考えると感慨もひとしお。んで、これがまた結構面白かった。
まず、宝田明も同じだったけど、とにかくこの映画については
覚えてませんねぇ」なので岡田真澄の自伝を語る部分が多くて、これで初めて知ったことも多かった。
岡田真澄は宝田明とは東宝ニューフェイス同期生だったそうで、元々日活の人だったとばかり思っていたのでびっくり。
ちょうどその頃、家が火事で焼けてしまったうえ「目立ちすぎて使い回しできない」ということで撮影所側からエキストラも失格と告げられ大部屋にもなれず、まず稼ぐため元々の活動の場だった日劇の舞台に戻ったところ、日活のプロデューサー水の江滝子に誘われて日活の専属になったとは知らなんだ。
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自分的に感激したのは、彼の川島雄三監督へのリスペクトのすごさ。「幕末太陽傳」で岡田真澄にまげを被らせ江戸弁を語らせるという荒業をやった川島雄三だけを「先生」と呼んでいたのには感激。
川島の遺作「喜劇 とんかつ一代」にも出演しているのは知ってたけど、ここまでのリスペクトだったとは驚きです。
あと、「マグマ大使」撮影時の裏話は大笑い。特撮シーンの合成部分を外でロケ撮影やってたら「何やってんの?」と声をかけてきたのが石原裕次郎で、「絶対見返してやる」と決意したとか。
とにかく、本編にあまり関係のない話ばかりで楽しませてもらったけど、この収録後時を経ず亡くなったことを考えるとしみじみ。
脇においておくと華のある珍しいキャラクターだったのに、惜しい人を亡くした。

宝田明のほうはというと、とにかくよく語ってくれる。でも岡田真澄の話と合わせて聞いてみると、同じ話題のうらおもてが聞けて楽しい。
2人とも中国からの引揚だったので、話が合ったので仲は良かったそうで新宿辺りの安いラーメン屋を見つけて食べに行った話とかはほのぼの。
作品的に笑ったのは大前均。この映画、もともと全編英語のセリフで撮影していたのを日本語のアフレコして日本公開版をこさえていたのだけど、(納谷吾朗はジョセフ・コットンの吹き替え)英語版でも大前均のセリフは
はい艦長
まわりみんな英語なんだけど、なんでかこの人だけ日本語の、しかも
はい艦長」だけ。
中山麻里が若くて、とても魅力的なのも見どころだけどリンダ・ヘインズがいつも露出過多セクシー系衣装なのはサービス満点。
ほかにも、緯度0はサービスがいいぞ。
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キュー出しの真ん中の人好みです


オリジナル「ゴジラ」のスタッフの最後の作品という点でも興味深いけど、まず伊福部昭の楽曲は思いのほか静かで少し拍子抜け。
電子楽器とかチェンバロなんかを使って、新しい方向を何とか打ち出そうとしているのはわかる。でも自分としてはもっと力強い曲を期待していたのでちょっと残念。
円谷特撮も、この公開翌年に円谷英二は亡くなっていることを考えると最後の花。とはいえ、吊り線は見えるしあまり大胆な光学合成もない、ホントならNGなんじゃないかと思うけど、経費および時間的制約が大きかった現場だったそうなので、まぁ仕方ない。
キャストの誰からも慕われていたのが本多猪四郎だったのも発見。
ジョセフ・コットンも「理解ある監督」と高評価していた。んでも、演出はえらいゆるいので、またしてもちょっと残念。
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一番のキャラはシーザー・ロメロのマリク。
この押し出しの強さはすばらしい。他のキャストも魅力的で、黒鮫号副官の陳(黒部進)とマリクの情婦ルクレチア(パトリシア・メディナ コットン夫人)もいい感じに楽しそうに芝居している。
結局、このDVDを日本語版2回、英語版2回、短縮版1回見ていたので今回はかなり元がとれた。東宝もこれくらい良心的なソフトを造れるんだから、さらなる精進を期待したい。いっぱいソフト化して欲しいのがあるんで期待してるんだからさぁ。
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March 03, 2007

血を吸うカメラ

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 先日、自殺サイトを悪用して、これを通じて
知り合った男女3人を相次いで殺害したという
とんでもないやつに死刑が求刑されたという
ニュースがあった。
この男、人間の窒息して苦しむ表情を見ると
興奮するという性癖があり、集団自殺に誘うふり
をしておびき出した被害者を殺害する様子を撮影したり、苦しむ声を録音して
いたとか。あきれてしまうけど、シャレにならない悪趣味。

 でも、考えてみたら「人殺しがしたい」と思ったら、こんな方法で被害者を
おびき出せることを考えると、ネット社会ってこんな奴にも「便利」になった
訳なので、複雑な気持ちになるなぁ。「相手は誰でもよかった」なんて言ってた
昔の人殺しの場合、自分から直接モーションかけて被害者を誘ってる場合も
多いからそういう意味ではちゃんとした社会性も身につけていたわけなので、
今の人たちにくらべてずっと人間的には成熟していたような気もする。却って
冷酷な感じもするけど。

 それはともかく、この裁判を聞いて思い出したのがこの「血を吸うカメラ
名画といわれる「赤い靴」「ホフマン物語」を撮ったマイケル・パウエルの
サイコスリラーのカルトとして、評価されてんだかないんだか。
だって、時代を考えると題材がうまくないもの。現代ならホントにいい題材
だったろうけど、1960年という時代を考えるとあまりに気持ち悪く思われた
だろうなぁと思われるもんな。
今回初めて見てみたけど、実際には丁寧に作りこんである佳作だった。

血を吸うカメラ PEEPING TOM 1960年イギリス
 監督     マイケル・パウエル
 原案・脚本 レオ・マークス
 
映画スタジオで撮影助手として働くマーク・ルイス(カール・ベーム)は
幼少の頃、心理学者だった父の実験の被験者となって日々過ごした。
その結果、彼には異常な欲求が身につく。女性の顔をフィルムに収める
こと、特に恐怖におびえる女性の表情に対して執着するようになったのだ。
その結果、彼は町で拾った売春婦を殺害する際に恐怖におののく彼女の
表情をカメラで撮影していたのだ。
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カールはアルバイトでヌードピンナップのカメラマン
もやっていた。やはりフェチなのはモデルの「顔」。
カラダじゃないのか…それでいいのか?
自宅は間貸ししていて、その日家に帰ると住人の
一人ヘレン(アンナ・マッセイ)の誕生パーティが
                     行われていた。
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あまり社交的でないマークはそそくさと自室に
こもるが、やさしいヘレンはバースデイケーキを
持ってきてくれた。自分の過去を語るマークに
ヘレンは関心を持つようになる。こんな変わり者
に関心を持つって、どういう女だ?と思っては
イカン。スタジオでは映画が撮影中。しかし女優はNGばかり。アンダースタディ
のビビアン(モイラ・シアラー)のことを「撮影してあげる」と撮了後のステージに
に誘い出し、やはり恐怖におびえる顔をフィルムに収めながら彼女を殺害して
しまう。
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撮影したフィルムを現像したが出来は満足が
いかない。部屋を訪ねてきたヘレンに誕生祝い
のブローチをあげ、彼女が出版する児童書の
写真撮影の打合せと称してデートの約束をする
ことに。小道具のトランクの中に隠したビビアンの
死体が翌日発見され、スタジオは大騒ぎ。マークも事情聴取を受ける。
帰ってきてそのままヘレンと共に出かけるマークだが、やはり女性の
顔に対してのフェチは発現。
部屋に帰るとヘレンの母、スティーブンス夫人(マキシン・オードリー)が
部屋の中で待っていた。盲目の夫人はマークの人間性を見抜き、「娘を
カメラに撮らないで」と命ずる。自分の本質を見透かされ狼狽するマーク。
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ビビアンの死体を発見した女優のためにスタジオ
に精神科医が呼ばれ撮影に立ち会っていたが
その医師に自分の症例を尋ねるマークを
警察が怪しむ。スタジオを出てヌード撮影の
バイトに行くマークは尾行されていた。
それだってのにマークはモデルを殺害してしまう。足がつくに決まってるだろ。
一方、マークの部屋で彼の帰りを待つヘレンはマークがどんなフィルムを
撮っていたかを知ってしまう。ああ、彼は殺人者だったのね。それでも
ヘレンはマークを助けたい、と自首するよう説得。
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一方、マークを尾行していた警察はヌード撮影現
場となっていた新聞売店の2階でヌードモデルの
死体を発見。犯人はどう考えたってマーク。奴の
自宅に踏み込め、ってんでパトカー出動!
警察が来たことを知ったマークはヘレンへの思いを告げ、自ら命を絶つ。

見てみてまず感じたのは、よく作りこんである映画だということ。
序盤からマークのキャラクターをムリに説明することなくテンポ良く流す
演出は、脚本の良さとともに評価するべき。でも、もっとしっかりした凶器
のほうが良くないか?あんなんやってたらターゲットは逃げちまうぞ。
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モイラ・シアラーはマイケル・パウエルの作品の
良きパートナーでここでも被害者の一人として
登場。ちょこっと踊ってくれるけど、カラダのキレは
齢を重ねてもさすが。監督本人も劇中登場する
フィルムに出演。

幼少のマークは監督の息子だし、生みの母親として姿がちらと映る女性は監督の
夫人と自主映画みたいなキャスティング。
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お母さんの手です



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右がマイケル・パウエル


まぁ、あくまでも40年以上前の作品ということでそんなにどぎつい描写が
あるわけじゃないけど、当時はやっぱ問題視されたろうと思う。にしても、
これを撮ったばかりに干されたマイケル・パウエルはもったいないな。
とにかく手馴れた演出なんで、見るのに苦労しないのですから。
レオ・マークスもかなりリサーチしてあったと推察される、労作なのに。
ブニュエルの「エル」もこんなフェティッシュの異常性を映像化してる
ので、機会があれば比較してみたい。

現代に置き換えてリメイクするとかなり面白そうな素材です。
マークを演じたカール・ベームはかなりがんばってるけど、おかげで
アブナイ奴と思われたのかこの後は大して出演作がない。でもこの
作品ではものすごくいい感じ。最大の問題は、ヒロインのアンナ・マッセイ
があまり美人じゃないことかなぁ。かえってリアルでいいかもしれんけど。

個人的には、もっと新聞スタンドのアップ画面が欲しかったのと
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「もっと近くで撮ってくれ、マーク」




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もっと念入りに撮影して欲しかった…。
「頼むよ、マーク」

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