« とりあえず、喜ぶ | Main | 今月のお買い上げ »

January 21, 2007

フィルムセンターへ行く=「アスファルト・ガール」+「君も出世ができる」

 ちょうど去年の今頃に車に乗って一家で東京まで行ったのだけれど、今年もまた行った。
というか、実は昨年の夏にも同じように家族で東京まで出かけていたのだけれど、それをブログのネタにするのをすっかり忘れておりました。
で、今回はというと別に家族で出かける必要はなかった。
もともとはたまたま眺めていた自分のお気に入りサイト「日のあたらない邦画劇場」に国立近代美術館フィルムセンターの企画がリンクしてあって、見ると「日本映画史横断2 歌謡・ミュージカル映画名作選」のスケジュールがあった。
それをちらちら見ていたら、なんと「君も出世ができる」が入っている!前から見たかった1本の、国産ミュージカルの大作である。
しかし、これ1本だけだとしたらわざわざ東京まで行くのもなぁ、
と思っていたら同じ日に「アスファルト・ガール」が上映される。
これ、解説を読んでいて驚いたのがミュージカル監修としてミュージカル映画の佳作「回転木馬」の振付を担当していたロッド・アレクサンダーをスタッフに迎えての島耕二監督作品。
本場ハリウッドの振付師を招いての日本製ミュージカルとは?
これは見てみたいなぁ…と興味がふつふつとわいてきた。まして東京に住んでいた頃にはフィルムセンターに行ったことなかった。
関心はなかったわけじゃないけれどちょうど東京にいた頃はフィルムセンターが火災を出してずーっと改修中だったので見に行きようがなかった。これはやはり行ってみたい。翌日ツマに言った。

「1月14日に東京に遊びに行くよ」
「何しに行くの?」
「見たい映画があるんだけど、この日だけしかやってないんだ」
「あ、そう。わかりました…(コドモらに)パパ東京行くんだって」

この言葉にコドモ達は強く反応した。…自分達も行きたい、と。
「じゃ、みんなで行こっか」というツマの言葉に反論するつもりもなかったので

結果、また車で東京まで行くことになったのであった。
今回は風邪もひいてなかったので、何も道中にネタはない。
「さすがに三度目はたいくつ」とはムスメの言葉。足代を安く上げるにはこれしかないのよ。13日の朝9時に盛岡を発ち、宿に入ったのは午後の4時ごろ。
その日は夕方から銀ブラして終わり。銀座は変わりました。

明けて14日。車を新浦安の次のホテルに移動させ、一家で東京駅まで出る。
東京駅でツマとコドモと別れ(彼らは科学博物館へミイラ展を見に行った)
いざ、京橋へ。…行った事ないから場所がよくわからない。日曜日だし、店も
開いていない。結局ローソンで道を聞いた。店員は中国人だったような気がする。
そして、大した距離でもなかったがやっと着いた。
東京国立近代美術館フィルムセンター。
Filmcenter
沿革を読んでみたら現在の建物は
1995年の完成で、まだ実はかなり新しい。
(中の写真撮影はちょっとできなかった)
中に入ると中央に長ーいベンチが4列に並べてある。警備のおじさんに
「最後尾はこちらです」と案内されてそのベンチに座る。これは順番待ちのためのスペースだったのね。
まずは「アスファルト・ガール」を見るためここでしばしボーっとする。にしても、どうしてこうも濃い目のキャラのおじさんばかりが集まっているのだ?


開始は午後1時からで、30分前に入場。会場は2階の大ホールで、階段を上ってすぐに受付で入場料500円を支払う。ホールに入ると、これがまたきれいな映画館だった。定員は310名で、これに達すると受付は締め切り。
最近は映画館のキャパも小さくなったので、こんな大きめのホールは何だかうれしい。パープルが基調の椅子はすわり心地もよいです。
そして、上映時間となりはじまりはじまり。
Photo_2





アスファルト・ガール 1964年大映 88分
監督は島耕二。歌謡映画の監督作が多いひと。
タイトルバックのセンスの良さに、最初からうれしくなる。ソニー・クラークの「クール・ストラッティン」のジャケットを思わせる、パンプス履いた女性の膝から下だけの映像はグッドです。

ミュージカルだけに、物語はシンプル。
「東京国際ガイドクラブ」のガイドの一人えり子(中田康子)はいつも、なかなかお呼びがかからない。この「東京国際ガイドクラブ」は今で言うとこの「派遣型風俗」で、彼女以外の女の子はアメリカから来たジャズカルテット(ローランド・ハナ・クワルテット)の相手に呼ばれて行ってしまった。
そこに「上品な感じの女性をお願いしたい」との電話。「ぴったりの娘がいますよ」とアニキ(岩村信雄=柴田恭兵そっくり)がえり子を送り出す。待ち合わせ場所にいたのはブラジルでコーヒー園を経営する星野(坂本博士)予備士官学校の同期会の席上でガールフレンドの役を頼まれたえり子は快諾して、友人達の待つホテルへと。(この同期の桜には中条静夫もいる。歌います)
席上「堅物の星野にも恋人がいたとは、いやめでたい」と皆から酒を勧められるえり子だけど、実は彼女は酒乱の気があるためあっさり酔っ払い、騒いだあげく眠ってしまう。
翌日、目を覚ましたえり子は星野に謝るが、「いや、あなたのような方で良かった」と星野に気に入られ靴を買ってもらう。
星野のことを好きになったえり子はお気に入りの場所へ星野を案内する。
記憶喪失で昔のことを良く覚えていないというえり子の記憶を取り戻そうと星野はえり子を連れて横浜へ。しかし、実はえり子は記憶喪失のふりをしていただけでもともとは靴磨きだったと告白。それを聞いた星野も、実はコーヒー園は破産していて一から出直しであることを告白。ブラジルでやり直すけれどえり子に一緒に来て欲しいと告げる。その言葉にうれし涙を流すえり子。
「そんなこと言ってもらったのは初めて」
荷造りして港へ向かおうとするえり子をアニキは許さず、部屋に閉じ込めてしまう。なんとか部屋を抜け出して港に着いたえり子だったが、星野の乗った船はもう出航した後だった。
悲しみにくれるえり子がひとりお気に入りの場所で泣いているところに星野が現れる。彼は船に乗っていなかったのだ。抱き合って喜ぶ二人。

どう見ても岩村信雄より坂本博士のほうが圧倒的に出演場面が多いんだけど、クレジットでは岩村信雄のほうが先ってのはどういうわけだ?
中田康子って、よく知らなかったけど元宝塚で、東宝の「ラドン」なんかにも出てた人だった。
キャラ的には水野久美とすっかりかぶっちゃうのが難しかったのか、大映に移っていたのでした。宝塚出身だけに劇中の歌と踊りはすばらしすぎ。
特に、自身が実は靴磨きだったことを語りだしてからの靴磨きとの3人での歌とタップは最高。まさにハリウッドミュージカルの演出なんでロッド・アレクサンダーの面目躍如です。(ミュージカルシーンは彼が全部演出・監修しているらしい)
でも、ハリウッド風にいきなり日本語で歌が始まるのは最初なじめなかった(見てるうちに慣れたけど)見て損は絶対ない作品だからぜひソフト化希望。こういう空気の作品も日本映画にあったのを、みんなで知ろう。
下っ端の一人で尾藤イサオが出ていて、当然のごとく歌い踊っているのもポイント。これがデビュー作だったそうです。中条静夫の歌には負けるけど。

終映後、入れ替えなのでホールから外に出て1階の順番待ちエリアを見ると、何とまぁもう椅子のスペースがほぼ満員。
これはマズイ。定員の310人にこぼれると肝心の目的が果たせない。なので、一度外に出てコンビニに寄り、おやつを買ってすぐにセンターに戻る。
順番待ちに並ぶと、列の先は地下への階段まで伸びていてワタシの並んだ場所は地下2階の踊り場でした。もう定員に達したかとちょっと不安になる。で、開場となったが何とか310人には入っていてセーフ。結局満員になったから、絶対に入れなかった奴もいると思う。

「君も出世ができる」おそらくは今回の企画での目玉の1本だったに違いない。
一部では伝説的な国産ミュージカル映画なのだ。
Photo_3
1964年東宝 100分 監督・須川栄三
音楽 黛敏郎  作詞 谷川俊太郎と
すごい取り合わせ。
キャストも豪華で(東宝的に)フランキー堺
高島忠雄、雪村いづみ、中尾ミエがメイン
で、ほか浜美枝、益田喜頓、有島一郎、
藤村有弘、十朱久雄、ジェリー伊藤に
やはり出ていた沢村いき雄。そして最大の
隠し玉がカメオで植木等。これは笑うぞ。
同僚役で二瓶正也もいるけど目立たない。
(なにげに平田昭彦もちらといたような気も
するけど、ちょっと自信ない)その他大勢。
ほんとにあまりにも大勢。

東和観光の外人観光課の社員、山川(フランキー堺)は出世を日々夢見て奔走するハッスル社員。
同じ課の後輩で同じアパートに住む中井(高島忠夫)は逆に出世には無頓着なマイペース型社員。
山川は片岡社長(益田喜頓)のアメリカ出張も羽田空港でパーッと盛り上げてアピール。でも中井はそんなの面倒くさがり、社長を送り出した後も空港でぼーっとしていた。
そこに社長の乗った飛行機が戻ってくる。乗客の乗り間違いのため、引返してきたのだ。中井は社長に、「この小切手を服部紅子さんに渡してきてほしい」とお使いを頼まれる。
教えられた場所に行ってみると、紅子(浜美枝)はクラブ「シャレード」のホステスで、どっからどう見ても「社長の女」なんだけど中井はそんなことにも無頓着。変わった奴だ。
なじみのお茶漬け屋のよっちゃん(中尾ミエ)は山川に気があるんだけど、出世ばかり考える山川はそんなこと
構わないで、紅子の件を出世に利用することをたくらむ。
山川と中井は営業に接待に精を出す。アラブの大物バジャール(沢村いき雄)の接待にシャレードを使い、大盛り上がりでライバル極東観光を出し抜く。

沢村いき雄、あなたはえらい。

予定より早く社長が女連れで帰ってきた。例によって東和観光本社は大和証券本社前であった。連れてきたのは実の娘、陽子(雪村いづみ)アメリカに留学していた彼女を、社長は外人観光課のトップに置く。課長は有島一郎だが、こんなんされてもノホホンとしている様は見事だ。
陽子はアメリカ的ビジネスモデルの導入を図り、東和観光の組織改革を進める。山川はそんな彼女に猛アピール。しかし彼がアメリカ旅行会社観光団のガイドを買って出たのはいいが風邪でダウン。
代役を中井が任されたが、箱根で合流するはずが旅行団は陽子が引率して観光中。暇な中井はたまたまガイドがいないアメリカ人夫婦(アーネスト&マージョリー・リクター)のガイドを引き受けて観光へ。その姿を陽子に見られホテルで陽子にとがめられるが反論する中井。そんな中井を陽子は観光団のパーティーに連れ出す。
中井の優しさに、仕事ばかりでない一人の女性でありたい陽子は惹かれる。中井も同じく陽子の本心を知り、ラブラブに。
翌日、山川が元気に復帰。熱帯植物園の観光に行ったところ社長と紅子にばったり。山川が「紅子さんは中井君の恋人なんだ」とウソついて社長に助け舟を出すが、それを信じた陽子は中井から距離をおく。
東京に戻ると中井は山麓ゴルフ場開発事務所への転勤を命じられるが、「のんびりしてていいです」とこれまた無頓着。ただ、陽子の心変わりがひっかかる。
一方、山川はアメリカ人大物旅行エージェントのマクレガー(ジェリー伊藤)を取込み、大手のワールドエキスプレス社との提携を成功させるべく陽子とマクレガーに接待攻勢をかけるが、山川のプランはすべて失敗しライバルの極東観光に出し抜かれてしまう。
「あれだけカネを使ったのに!」と上司から山川は叱責され、謹慎を命じられる。落ち込んだ山川、中井の送別会をやってやる、と安いトリスバーに2人繰り出す。ここで荒れる山川、
そこに「そう、その通り!」
と男が声をかけてくるが、この男こそ植木等。ここで高島、フランキー、植木と東宝娯楽作品のトップがそろい踏みの笑えるシークエンス完成。汽車の時間があるから、と中井=高島はここでリタイヤ。
山川はその男と飲み屋のはしごをするんだけど、ここからが人海戦術のはじまり。
鬱屈したサラリーマンのエネルギーがはじける大群舞シーンには400人動員したとの話で、ものすごいことったら。途中で植木等はいなくなっちゃうことが残念。
最後の店、いつものお茶漬け屋でよっちゃんに慰められた山川、翌日よっちゃんとの新生活を夢見て辞表をたたきつける。「紅子さんは社長の二号なんだよ!」と真相をバラすと陽子は大喜び。社長をとっちめに行くと、そこに箱根で中井がガイドしたアメリカ人夫婦が訪ねてくる。
「わたしは中井が気に入った。実はわたしはアメリカロータリークラブの会長なのだが、毎年観光団を日本に送るのにぜひ中井にその世話を頼みたい」と彼を訪ねてきたのだった。
我が事のように喜ぶ陽子は中井を本社に呼び戻すことを社長に認めさせる。
中井は新設の外人旅行部アメリカ課課長に、そして山川は主任にと出世する。
とまぁ、見事なハッピーエンド。

とにかく、明るく楽しい東宝映画の真髄がここにある。東宝の気合の入れ方も並でなかったようで、監督の須川栄三らはアメリカまでミュージカルの勉強をしに行ったそうだしセットも大掛かり。雪村いずみが歌う「アメリカでは」のシーンはものすごいセットと大群舞で唖然とするくらい。
美術のセンスとてもいいんですが、美術の村木忍は黒澤組の美術・村木与四郎の奥さんなんだそうで、シャレードのセットなんか見ると変に納得。
ちゃんと浜美枝の下着姿のサービスショットもあるし(浜美枝はとにかくキュートっす)楽しさいっぱい。
藤村有弘と十朱久雄の重役陣も、東和観光はいかに楽しい会社かを伝えるのに十分だ。高島忠夫の「タクラマカン」雪村いずみの「アメリカでは」などのナンバーも完成度はかなり高い。このこってり加減はワタシ大好きです。
通常の倍の制作費を使ったそうだけど、興行成績はいまいちだったようでやはり和製のミュージカル大作は当時はなじまなかったか、と残念。
でもこの1964年は国産ミュージカル映画の年で「ああ爆弾」「アスファルト・ガール」「君も出世ができる」と当たり年なのでした。
とにかく、今の時代のこの鬱屈した空気が微塵もないオリンピックの年の東京。うらやましいなぁ。
フランキー堺のこのとことん弾むような芝居も、この時代性にぴったり。
ちなみにこの年の映画賞は、「砂の女」(岸田今日子主演)が総ナメ。
「君も出世ができる」以前レーザーディスクのソフト化されていたけど当時ボンビーだったから買えなかったのが今となっては非常にくやしい。
…東宝のソフト、高いんだもん(定価で確か当時6千円くらいしたはず)
何とか万難を排してDVDにしてほしいものです。

フィルムセンターへの旅は今回、とにかく楽しんでこれたのでまた行きたいと思うけど、行き来が大変なのがちょっとなぁ…。この翌日、またしてもコドモと浦安の某テーマパーク(新しいほう)に行って帰ってきたうちの一家であった。

|

« とりあえず、喜ぶ | Main | 今月のお買い上げ »

Comments

おっ、上京してたのね。フィルムセンターのために上京ってのもなんかカッコいいですな。
楽しい映画だったようで。覚えておこうっと。

Posted by: KT | January 21, 2007 at 09:49 PM

KTさん、まいどです。
ホントは今回ソロ活動の予定だったのですが、家族連れに
なったこともあって結局誰にも連絡取らずに上京して
おりました。いずれソロでの活動を…その際には
しっかりご連絡いたします。フィルムセンターの企画は
だいたい期間中2回の上映が行われますんで、
「君も出世ができる」は2/2にも上映されます。
もしご都合よければ足をお運びください。…っても、
15時開始ではちょっとムリかも。
「アスファルト・ガール」は1/30の19時からですし、そんなに
混まないと思われます。もしご都合よければ、見てみてください。

Posted by: 最上屋 | January 21, 2007 at 11:06 PM

はじめまして、今回初コメントです。

記事から数年たってますが、偶然目にしました(^-^;。

当時私もこれ観に行きましたよ。

Posted by: カナ | September 07, 2011 at 06:43 PM

カナさん、はじめまして~(^O^)
すっかりいい加減になって、ほったらかしの小生のブログにようこそおいでくださいました。
あれから、もう4年経ってますね…。
コドモも大きくなったので、こんな風に一緒に出かけることはほとんどなくなりました。

でも、やっぱこういう明るい元気な映画はやっぱり今観たい。
何とか、またネタを更新できるよう努力いたします(-_-

Posted by: 最上屋 | September 10, 2011 at 01:35 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/55867/13580697

Listed below are links to weblogs that reference フィルムセンターへ行く=「アスファルト・ガール」+「君も出世ができる」:

« とりあえず、喜ぶ | Main | 今月のお買い上げ »