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December 24, 2006

突撃

スタンリー・クーブリック(キューブリックのほうが一般的な呼称だけど、つづり
からするとクーブリックのほうが自然だと思うのでこっちで)が一気に有名に
なったのは、「スター・ウォーズ」が大ヒットして、SFブームが巻き起こった
ときのこと、と記憶している。こういう伝説のSF映画があったのだ!みたいに
2001年宇宙の旅」が取り上げられ、そしてリバイバル上映された
とき。特撮大好き少年だったオイラ、当然見に行きました。(このときの同時上映が
「デモン・シード」だったのは今にしてみればえらく贅沢なはなし)見て、とにかく
驚いた。このあまりに前衛的な物語と完璧な宇宙空間の再現、とにかく精美な
特撮の映像は衝撃だった。こんな映像を創ることが可能だとは!と驚いたけど、
その舞台裏を後で知ってさらにびっくり。1コマ撮るのに2時間かけるなんて信じ
られない世界。24時間フル稼働でも12コマ。0.5秒だけしか撮れない。ひえー。
特撮担当のダグラス・トランブルは後に「サイレント・ランニング」という秀作も
手がけ「スター・トレック」の特撮部分が一旦全ボツになった後、特撮スタッフ
オールスター編成での再製作に参加して、時間制約が多かったにもかかわらず
いい仕事をしていたなぁ。
で、オイラはその時にクーブリックはすごい!と単純に感動したので、後に
時計じかけのオレンジ」のリバイバル公開もしっかり見に行った。
で、また驚いた。こっちはとにかく、セックスと暴力の近未来。
これでハマった。「博士の異常な愛情」「ロリータ」「バリー・リンドン
シャイニング」とどんどん見た。さらに過去の作品もビデオで見るようになり
現金に体を張れ」学生時代の最新作「フルメタルジャケット
こうなりゃ全部見てやれ、と思い「スパルタカス」もビデオで見た。で、遺作の
アイズ ワイド シャット」で打ち止め。でも、「突撃」「非情の罠」がこぼれたまま
だったのが困りもの。しかし、ビデオおよびDVDが出たのはちょっと前の話で、
見たくても見られなかったという実情はありましたが。
実際、ずーっと見ようと思っていたのだ。この「突撃」。さらにはこちらでも
リンクさせていただいてるカゴメさんから以前勧められていた。
それなのになぜいつまで経っても見なかったのだ、自分。
我らがクーブリック作品だったがやっとこさ見た。最近とにかくダメな自分は腰が
重すぎです。反省しきり。
見てみて思ったのは、「おお、やはりクーブリックだ!」と嬉しくなっちゃった
ことであった。カットがやはり、その後自分の見ている作品で見たことあるような
雰囲気がぷんぷん。ここに原点があったか、と一人で合点。
クーブリックはもともと写真の人だったから、やっぱ「画」のこだわりがとても
強くて、これだと白黒だから構図もはっきりしてるんでさらにそれがよく伝わる
のだった。1957年、彼が29歳のときの作品だから、若いぶん狙い目がストレートに
解りやすく伝わってくる作品です。
Pathsofglory0

舞台は第一次大戦のさなか、1916年。
2年前から始まったフランス軍の対ドイツ
戦争はこう着状態。後方の師団司令部
ポール・ミロー将軍(ジョージ・マクレディ)
のもとを軍団長のブルーラール大将
(アドルフ・マンジュー)が司令部の命令を
伝えるために訪れる。
「48時間以内に「アリ塚」を攻略・占領してほしい」
「アリ塚」は敵の重要拠点で、ドイツ軍が兵力を結集しており守りは堅い。占領
しても維持する兵力も足りない。急いで攻撃するのは自殺行為。
Pathsofglory1

当初はミロー将軍は作戦に反対するが、昇進
をちらつかせる大将の前に命令を受諾する。
直接戦闘をするのは701連隊。司令官は
ダックス大佐(カーク・ダグラス)
もともと優秀な弁護士だが司令官としても
優秀で、部下からの信頼も厚い。
現在前線から外れている大佐にミロー将軍は
命令を伝える。が、やはり現状をしっかり把握している大佐は当然気乗りしない。
抗弁するも「もし拒否するなら解任してやる!」と将軍に言われ、部下を見殺しに
することもしたくない大佐は仕方なく命令を受諾。翌日早朝5時に攻撃を開始する
と指示を出し、塹壕を出て攻撃開始。大佐は陣頭指揮を執るが、敵の激しい
砲撃のため第2陣が壕を出られない。兵力の差は圧倒的だった。
その様子を見た将軍は味方陣地への砲撃命令を出すが、砲兵隊は拒否。
「軍規に従い文書で命令願います」砲兵隊長のルソー大尉(ジョン・スタイン)
は将軍に答えた。予想通りにフランス軍701連隊による攻略戦は失敗。
激怒したミロー将軍は退却命令を出し、軍法会議を開き701連隊が敵前逃亡
したとして告発することを大佐に告げる。起訴されたのは中隊から各1名、
都合3人の兵士。フェロル二等兵(ティモシー・キャリー)、アルノー二等兵
(ジョセフ・ターケル)、パリス伍長(ラルフ・ミーカー)の各名。
Pathsofglory3
ダックス大佐は
彼らの弁護人として立ち会うことになったが、
即日開廷の軍法会議のうえ最初から有罪=
銃殺が目的なのがみえみえで、大佐の弁護も
機会をろくに与えられないまま閉廷、評決と
なってしまう。結果は出来レースの銃殺。

その夜、ダックス大佐の元を砲兵隊のルソー大尉が訪れる。
Pathsofglory5







そのすぐ後、舞踏会の中、ブルーラール大将を訪ねるダックス大佐は
ルソー大尉から聞いたミロー将軍の軍規違反の事実を報告する。
Pathsofglory6

3人の命を助けたかった大佐だがその願いは
かなわず、翌朝、刑は執行。
しかしミロー将軍も査問会で罪を問われること
となった。大佐は将軍の後任を大将から打診
されるが、皮肉たっぷりに断る。


Pathsofglory10

701連隊の兵士達が酒場で騒いでいるところに顔を出そうとする大佐。
そこに前線復帰の命令が伝えられる。

 前作「現金に体を張れ」で名を成した
クーブリックが、ハンフリー・カップの小説
「Paths of Glory」を基に映画化したもの
だけど当初その内容の暗さでメジャーは
取り合ってくれなかった。そしたら反骨が売りのカーク・ダグラスの目に留まり、
映画化となった次第らしい。よってクレジットの製作会社はブライナ・プロダクション
(カーク・ダグラスの製作会社)だけど、実質はクーブリックプロダクションの製作。
Pathsofglory2

製作時クーブリック29歳と若い。そのせい
だろうけど、後の作風の感覚的な部分が
かなりわかりやすくこの映画で出て来る。
塹壕の中を移動するカメラワークとか、(
「シャイニング」の移動撮影と同じ感覚)
光線にこだわる撮り方(塹壕内部のカットは
えらい少ない光源で撮ってるせいか、人物
にピントが合ってない部分がある)とか。
また、このひと結構「軍」の出てくる映画を多く撮ってるけど(「スパルタカス」
「バリー・リンドン」など)その表現なんかはまさしくここで見られる撮り方。
俯瞰の、左右対称の人工的な構図とでもいえるような画面がきっちりと撮ってある。
Pathsofglory8

戦闘になると、これが横移動の画になるのも
おなじみ。もともと写真のひとだからだろう
なぁ、こういう画面へのこだわり。
シャイニング」の空撮の没フィルムだけで
3万フィートあったそうだし、「突撃」でも銃殺
される兵士達の最後の夕食なんぞは68回の
リテイクだったそうな。
結果的に、一緒に仕事した人間からは「才能あるくそったれ」なんて言われて
しまうわけなのだ。でも、アーサー・C・クラークとのコラボを再度考えていた
らしいし、人間は少しずつ丸くなるものなのね。
最後にドイツ人の若い女が歌を歌わされるシーンがあるけれど歌ってたスザンヌ・
クリスチャンは後にクーブリック夫人となり、彼の最期まで連れ添っていたそうな。
結局、「突撃」はクーブリックにはいろいろとエポックある作品でした。なので
いろいろと楽しく見てしまったけど物語は深刻だぞ。
Pathsofglory12

これでオイラの見てないのは「非情の罠」
だけになった、と思ってたらもう一つ「恐怖と
欲望」っていう処女作があった。
これ、よっぽどクーブリック本人が不満な作品
だったらしく、まさしく封印状態。自主映画
やってた人間からすると非常に興味あるなぁ。
「博士の異常な愛情」また見たくなりました。

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Comments

最上屋さん、お久しぶりであります♪♪♪
遂にご覧になりましたね、これ。
カゴメの場合は、
ビデオでレンタルされてるのを店の隅っこで発見して、
長年探してた作品が唐突に見つかって吃驚した覚えがあるです。
そっかー、DVD化されたんですねぇぇ。感慨深いなぁぁ(笑)。
29歳と言えば全然若造ですが、
端々にその後のキューブリックの個性が窺われて楽しい作品ですね。
仰る通り、重々ですが(苦笑)・・・。
カゴメもまだ、「非情の罠」と「恐怖と欲望」は観てないです。
なかなかレンタルじゃ無理があるかも(泣)・・・。

Posted by: カゴメ | December 27, 2006 at 01:48 PM

カゴメさん、お久しぶりです。
相変わらずパワフルな活動ぶりに感嘆しております。
やっとこさ見ました、ええ。「アイズ ワイド シャット」
の公開と同時に彼の全作品はDVD化されました。
「恐怖と欲望」以外は、ですけども…
「非情の罠」もよく行くツタヤにはあるのですが、行くと結局
借りるの度忘れするんですよねー(-_-;)バカです、自分。

Posted by: 最上屋 | December 27, 2006 at 11:06 PM

あけましておめでとうございます。最近忙しく、なかなか自分のブログも更新できてませんが、さすが最上屋さま。着実に更新され、頭が下がる思いであります。そんな中、「突撃」の記事を発見。たまらずコメントしてしまう総統です。この映画、総統もなかなか見れなかったんですよね。レンタル屋にも無かったし。(「ロリータ」も見るのに苦労したなあ・・・)今の若いモンは幸せですよ!まったく。んで、あるときテレビ欄をみていたら、BSで放送するっていうんでソッコー、標準録画で予約。マシントラブルに備えて、友人宅のデッキでも予約録画を頼み、万全の態勢でありがたく鑑賞したもんです。この映画、全体にモッサリしたテンポではありますが、塹壕での長回しのカメラ移動、地獄の突撃シーンなど、見所満載!そりゃ、突撃命令違反したくなるっちゅーの!ええっ、いまさらパイレーツ?感がよく出ており、後期の作品との比較が出来たりして味わい深い逸品ですね。ああ・・・総統も「恐怖と欲望」みたいっス!キューちゃん、いやクーちゃん、恥ずかしいかもしんないけど、チャンと見れるようにして天国へ行ってくれYO!・・・そうそう、ユーチューブで検索したら、短編ドキュメンタリーの「空とぶ神父」を発見!!「The Flying Padre」で検索してみて下さい。ギギギ、「拳闘試合の日」もみたいのう、あんちゃん。BY隆太。では、いろいろ時間もとりにくいですが、今年もドシドシ映画見ましょうね!!では股!

Posted by: ガットラー総統 | January 09, 2007 at 05:08 PM

 おお、総統閣下。
遅ればせながらあけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
おほめいただき光栄です。が、自分も忙しいやらそのくせ体力も
根性もないもんで思うようには更新ができません。
だいたい、ちゃんと映画見ないとネタができないのに
見てないし(^_^;)反省しきりです。「恐怖と欲望」以前の
「The Flying Padre」とか「Day of the Fight」が
出てくるとは、泣けてきますね(~_~;)The Flying Padreが
YOU TUBEで見られるとはありがたい情報をありがとうございます。
んでもやっぱ、「恐怖と欲望」見てみたいな~。これだけ
くーちゃん恥ずかしがってるって事は、よっぽど出来の悪い作品
なのに違いないけど、それなら尚のこと見てみたい、です。

Posted by: 最上屋 | January 11, 2007 at 11:22 PM

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