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April 21, 2006

セルロイド・クローゼット

 今年のアカデミー賞はもう、事前の予想は「ブロークバック・マウンテン」
で決まり!と思ってたのにあら不思議、作品賞が「クラッシュ」に行っちまった。
ただ今回の特徴で、ブロークバック・マウンテンもそうだけど、主演男優賞を
フィリップ・シーモア・ホフマンが獲った「カポーティ」も、主菜か副菜かの
違いはあっても「同性愛」が作品の重要なファクターになっていた。
それでも最終的には作品賞を「クラッシュ」が獲ったことを考えると、アカデミー
会員はまだ同性愛に対して踏ん切りがつかないでいるらしい。
まぁ、保守的なブッシュ政権下ではこの分野で突出したことはしづらいだろう
けど。
んで、この「セルロイド・クローゼット」を思い出した。

Celluloid0

原作についてはよく知らないけど、ヴィト・ルッソ
という人が書いた同名の本が元になっている
作品で、ハリウッド映画の同性愛の表現の
変遷をたどるドキュメント映画。そしてこの
DVDを買おうと思い立ったのはなぜだったのか
は全然思い出せない。


Celluloid1
ま、またいつものスケベ心からなんでしょう。
けれど、内容は至って真摯な研究的作品。
創作する側からと演じる側からのインタビューを
通して「同性愛を映画でどう表現してきたのか」を
明らかにしよう、というのがこの映画。
登場する作品は多数。このエジソンの短編から
始まり傑作と名高い「トーチソング・トリロジー」まで
全部で62作品。インタビューに答えるのはトム・ハンクス、ウーピー・ゴールド
バーグ、シャーリー・マクレーン、トニー・カーティス、スーザン・サランドン、
ハリー・ハムリン他の俳優陣にゴア・ヴィダル(「ベン・ハー」の脚本に参加)、
アーサー・ローレンツ(「ロープ」の脚本、「ウエストサイド物語」の原作)マート・
クロウリー(「真夜中のパーティー」脚本)、ジェイ・ブレッソン・アレン(「キャ
バレー」脚本)、ハーヴェイ・ファイアスタイン(「トーチソングトリロジー」の脚本・
主演)などなどのそうそうたる顔ぶれ。
俳優たちはともかく、この映画、製作者も出演者もみんなゲイ。
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「コンチネンタル」に登場する「シシー」という、
化粧したナヨナヨした男性キャラが登場して
男性の、ゲイのステレオタイプがギャグを
本編でかます。そんなあたりからゲイは映画に
登場する。
映画産業の興隆に従い性的表現が露骨になった!と保守的な婦人団体とか
キリスト教団体が事実上の検閲を行うよう圧力をかけ、細かいいきさつは
ともかく悪名高い「ヘイズコード」が1930年に公示され、1934年に映画製作倫理
規定管理局が発足。性的な表現は思いきりしばりが入る。
この辺の流れは、FBI長官のフーバーの伝記を読むと面白いんだけどそれは
また別の機会に。

これがウィル・ヘイズ。フーバーの手先。
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それでも面白いのは、結局作り手と当局との
いたちごっこになっているところ。露骨でなきゃ
いいんだから、知恵比べなのだな。本編でも
取り上げられているけれど「マルタの鷹」では
ピーター・ローレ演じるジョエル・カイロが
登場するくだり。カイロはガーデニアなんて香水をつけて
るしBGMはなよっとしている。原作ではたしかに、「オカマ」とされているけれど
映画じゃ露骨に言えない(当時)から、こんな風に暗示するのだ。
ヒッチコックの「レベッカ」もそんな作品の一つ。マクシム(ローレンス・オリヴィエ)
のもとに嫁いできたマリアン(ジョーン・フォンテーン)に、亡くなった前妻の
レベッカのことを語るダンヴァース夫人(ジュディス・アンダーソン)のくだりが
例示されているけど、レベッカの下着まで見せて彼女がどんな女性だったか
語る姿は、レベッカとダンヴァース夫人との関係がどのようなものかなんとなく
わかるような演出。最初見たときは単なるスリリングな盛上げの材料と思ってた
けど、こういう意図が後ろにあったとは。

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個人的にはゴア・ヴィダルが語る「ベン・ハー」
の裏話が面白かった。以前に書いた気も
するけど、ベン・ハー(チャールトン・ヘストン)
と敵役のメッサラ(スティーブン・ボイト)との
関係を際立たせるため、監督のウィリアム・
ワイラーにゴア・ヴィダルがこの二人のバックボーンを考え、進言する。
「この二人は以前幼馴染以上の関係であったことにすれば、再会後の
憎しみの感情が際立つのでは?」
ワイラーはびっくり。そのバックボーンがあれば面白いけれど、いくら
何でもフィルムには残せない。まして片やヘストン、保守系の俳優。
何とかこのアイデアを生かしたかったので、
「スティーブン・ボイトは話のわかるやつだからきみから説明してやって
くれ。ヘストンには私から適当に言っとく」とウィリアム・ワイラー。
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時代はまだまだ保守傾向の50年代だったけど、まだ
のんびりしていた頃だったそうな。
この後に撮られた「スパルタカス」はカーク・ダグラス
が自身のプロダクションで製作。監督がスタンリー・
クーブリック、脚本がダルトン・トランボと反逆者の
映画を撮るのには最高のスタッフを揃えていた。だけど、やっぱ問題が
あるってんで公開当初カットされたくだりがある。
(↑ローレンス・オリヴィエとトニー・カーディス)
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入浴しながら語るその内容は、そりゃちょっと。
「牡蠣は好きか?」
「蝸牛は好きか?私はどちらも好きだ」なんてことを
ローレンス・オリヴィエ御大が語っておる。どっちも
隠喩ですがな。しかもばればれの。にしても、何で
男のあれは蝸牛になるんだろ?


60年代には同性愛は「怖いもの」とする作品が多い。んでも、事実上
その存在は否定できなかったしこの頃はもう事実上ヘイズ・コードは
運用されていない。それでも「噂の二人」の悲劇的な物語や「刑事」
のフランク・シナトラが足を運んだハッテン場なんかの描写は、やっぱ
同性愛のイメージを悪くしていたと思う。
70年代に入り「真夜中のパーティ」が作られた頃から風向きは変わり、
「メーキング・ラブ」そして「クルージング」でゲイはその存在がやっとこさ
一般に受け入れられた、というか現実に映画の表現が追いついてきた
のかなぁ。
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演じるほうにしてみると、同性愛者は結構やりがいの
ある役どころらしい。スーザン・サランドンは「ハンガー」
でカトリーヌ・ドヌーブとレズシーンのからみを演ったけど
「だって相手がカトリーヌ・ドヌーブなのよ!」
と楽しそうにインタビューに答えている。
本人の嗜好はともかくとして、みな「挑戦しがいのある役」という見解は一致して
いるのがおもしろかった。というか、そういう役を演じることがもう社会に挑戦して
いるという感覚。
「メーキング・ラブ」は試写で散々たたかれ、「クルージング」は上映反対の
デモまで起こったことを考えると、時代は変わりました。
ちなみに私はやっぱ、ノーマルなヘテロです。ハリウッド映画の全体的な
知識の補強にはこの作品お勧めです。
そのうちまた、この映画の話書こうと思う。うまくまとまらない。

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