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December 18, 2005

暗黒への転落

 ハンフリー・ボガート主演のコロンビア・フィルムノワール傑作選
を見る作業も、やっと4本目。買ったの去年の暮れだったことを考えると
1年経ってもまだ見終わっていない訳で、不真面目な己を責めるばかり。
だいたい、その直前に買ったパゾリーニのDVD-BOXもあるわけで、
買っといて無駄にしているのはもうやめようと、懲りずに決意するこのごろ
であります。

 んで、「暗黒への転落」を見てみた。前に見た「孤独な場所で」がこの後に
撮られていたので、時間軸としては逆行しているのがちとうまくないです。
というのは、これも監督がニコラス・レイなんだがこれ、なんと彼が監督として
独り立ちして2作目という若さということで、この人のまだ固まりきってない
素の部分が見えているような気がするから。ま、そういうことはさておき
実際に見てみると、…暗いぞ、この話。とにかく、ボギーの映画というよりは
ニコラス・レイの作品としてみるといいと思う。

 この当時、ハリウッドスターが自前のプロダクションを立ち上げ映画製作に
乗り出すのがムーブメントで、われらがボギーもサンタナ・ピクチャーズを
立ち上げる。その第1作がこの「暗黒への転落」(原題はKnock on any door)
んで、もともとワーナーのスターだったボギーはこの作品の配給会社として
コロンビアを選ぶ。専属契約がゆるやかになってきた頃のお話。
監督のニコラス・レイはこの前作の「夜の人々」でデビュー。この作品が注目を
集めボガートが監督を依頼したのだろう。この「夜の人々」、小品ながら評価は
高くて、リメイクもされている。ボガートはスターだったけど、逆にこういうスター
システムの映画ではきちんとした人間ドラマが作れないことが面白くなかった。
市井の、普通の人々のドラマを作りたい。それで自前のサンタナ・ピクチャーズ
を立ち上げ、自分好みのドラマを制作することに至る。もうボギー、50歳過ぎ
だった。夢をあきらめてはいかんのだなぁ。
 原作はウィラード・モトリーの小説。ほんとに小品らしい。脚本がダニエル・タラ
ダッシュ。この後「ノックは無用」「地上より永遠に」「ピクニック」と50年代の
秀作の脚本を担当。ボギー、いいメンツ揃えてるぞ。
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 ある夏の夜、スラム街のバーで強盗事件発生。逃げる犯人の男は追ってきた
警官を射殺。容疑者としてニック・ロマノ(ジョン・デレク)が逮捕される。彼は
旧知の弁護士アンドリュー・モートン(ハンフリー・ボガート)に弁護を依頼。
気乗りしなかったモートンだが妻アデル(スーザン・ペリー)の頼みを聞き入れ
弁護を引き受ける。今から6年前に、モートンのパートナーがニックの父の弁護に
失敗し、父は刑務所で病死。ニック一家はスラムの住人となり、ニックは悪の道に
入る。何度か逮捕され救護院で友人の非業の死に立ち会った彼をモートンは見守
ってきたのだがやはり更正がうまくできず、何度か服役していた。そんな彼も、
エマ(アレン・ロバーツ)との恋から真人間になろうと一念発起。彼女と結婚し新しい
生活を始めるが結局仕事はクビになる。自棄になりまた悪い仲間とことを起こそう
とするニックを、自身の妊娠を告げエマは止めようとする。でもニックは言うことを
聞かず強盗へ。帰ってみると、エマは自殺していた。救いようのない話やのぉ。
こういったニックとの自身の関係を語り、その上でこんな青年を、何とか救って
欲しいと陪審員に訴えるモートン。しかし担当検事のカーマン(ジョージ・マクレディ)
は追及の手を緩めない。検察側証人の証言の怪しさを突いて、勝利目前のモートン
だったがカーマンの厳しい尋問に対しニックは自分が犯人であることを告白する。
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 判決が言い渡される日。最終弁論の場で、モートンは法廷にいる人々に訴える。
「そう、ニックは有罪です。だが、われわれも同じです。そしてこの社会も有罪です。
社会とは、我々のことです。社会は利己的で愚かです。犯罪は環境の産物です。
でも、皆犯罪を非難しても責任をとろうとはしない。関心も持たない」
「あのような町がある限り、このような青年は何人と出てくるでしょう。ノックをした家
すべてにニック・ロマノは居るのです」
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取材する新聞記者にも問いかける。
「書いてくれ。我々善良な市民たちが何年も前にこの青年を生み出したのだ。
彼の犯行は我々が命じたのです。死刑になれば、我々が殺したのです」
そして、担当判事のドレイクにも語りかける。
「我々は彼を殺すのですか?…私は慈悲を乞いたい。彼のためだけでなく、
我々のために。一片の慈悲を」このくだり、ボギー熱演。
ドレイク判事は、
「ミスター・モートン、感動しました、本当に。しかし、法の役割は明確です」
と静かな声で答え、死刑判決をニックに言い渡すのだった。

刑場に向かう前に、ニックにモートンは告げる。
「約束する。おれは君のような若者たちの力になるよ」

 まあ、物語が暗くてドンパチ少ないのでフィルムノワール的とは言いづらいとこも
ある。でも、作品としてはメッセージ性に富む佳作である。後に「俺の墓標は
立てるな」という後日談的な続編も作られているので、これも見る機会があると
いいな。ニコラス・レイの処女監督作「夜の人々」も見てみたいけど、ソフト化は
厳しいか。ボギーの熱演はともかく、カーマン検事を演じたジョージ・マクレディが
よい。右のほほに傷跡があり、とにかく人相が悪いしモートン弁護士とずっと
ケンカ状態で渡り合うカーマンはやはり見てる側としてはブーイング。しかし、
ニックをオトしてモートンと尋問を入れ替わる際に「悪かったな」と一言、こそっと
告げるあたりでカーマン検事のプロフェッショナルさが一発で伝わる。このカットで
なんかうまくはめられた感じがした。ニック役のジョン・デレクもがんばってるけど
まだまだだな、ボギーとマクレディには。ちなみに、ジョン・デレクはボー・デレクの
夫でのちに俳優から監督に転じています。
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唯一気になったのが、最後の刑場に向かうニックの姿。後ろ頭に何か白いものが
ある。…ひょっとして、ハゲ…(ー_ー)!? 気になる…。
不真面目に見てちゃいけませんねぇ、自分。反省。

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