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October 15, 2005

「恐怖奇形人間」 at ミステリー映画祭

 眠いけど、今回はルポ。
10月14日から、盛岡で第9回みちのく国際ミステリー映画祭が開催中。
今年のテーマは「刑事・デカ」だそうだが、上映作はこれにあまり関係ない。
今年の企画上映では岡本喜八を追悼して「暗黒街の対決」、そして石井輝男追悼で「恐怖奇形人間」を上映した。このセレクト、個人的には見に行こうかどうしようか迷ったけど、喜八の作品はどんどんDVD化されつつあるので、めったに地方では見られない「恐怖奇形人間」を見に行くことに。
石井輝男のはろくに見ていないし、ましてこれはソフト化のめどはない。タイトルがタイトルだもんなぁ。なのに、「フリークス」はデジタルリマスターでまた公開するの?何だかなぁ。

kikeiningen


○江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間(1969年東映)
原作=江戸川乱歩「パノラマ島奇譚」他より
監督=石井輝男
脚本=掛札昌裕・石井輝男
撮影=赤塚滋
協力=木下サーカス


 開始時刻がPM11:30。天候は小雨混じりという条件で、ましてこんな、地方では知っている人が少ないと思われる映画なので、
「たぶん、混まないでゆったり見られる」と思い開始15分前にのんびりと会場の盛岡ピカデリーに着いてみたら、なんだか行列ができている(;゚д゚)目論見はあっさり狂った。前売買っときゃよかった。
入場して、開始を待つがそれでも客はやってくる。結局キャパ200強のコヤは満席になった。今回のゲスト行定勲もご来場。
前説は、高橋克彦。この作品を奥さんと見に行ったときの思い出を語っておいででしたが、
「この映画を家内と一緒に見に行って、見終わった後『もう絶対、あなたの薦める映画、一緒には見に行かない』って言われまして…内容はもうすっかり忘れてるんですよ」
って、そういう映画を人に見るのを薦めるのは何か間違っているような気がする。
もともと、前売が47枚しか売れてなかったから大変心配だったって。

主人公、人見公介(吉田輝雄…やっぱりなぁ)はなぜか精神病院にいる。
監守(高英男 あはは)にひどく扱われながらも収容されているのだが坊主頭の男に命を狙われ、逆に彼を殺してしまい病院を脱走。出会った曲馬団の娘、初代(由美てる子)の歌う子守唄に公介は聞き覚えがあった。そして頭から離れない島の風景、美少女と醜い男の顔。彼女の知る風景にも覚えのある公介は翌日、詳しく話を聞くべく初代と待ち合わせをしたところ、彼女は何者かに殺され公介は殺人犯として追われる。
「裏日本(死語)の子守唄らしい」との初代の言葉を頼りに裏日本を旅する公介は彼と瓜二つの、地元の名家の当主、菰田源三郎の病没を知りその町で調査開始。按摩のおばはん(加藤欣子)から聞いた所では、源三郎の父である丈五郎(土方巽!)は手の指の間に水かきがあり人目を嫌い、家を執事の蛭川(小池朝雄 わぁ)に任せて妻のとき(葵三津子)とともに孤島に渡り、島を改造している。変な坊主のいる寺(由利徹と大泉滉 笑える)に葬られた源三郎が生き返ったよう見せかけ公介は源三郎になりすます。
ちなみに、診断する医師は上田吉二郎が演じてます。ここのくだりはすっかりコントです。

菰田の家に入り込んだ公介は、源三郎の妻・千代子(小畑通子)のみならずいとこ(だったっけ?)の静子(賀川雪絵)とも情を通じていた。しばらくして、家の中にせむし男が現れたり奇妙なことが起るようになり千代子が何者かに毒殺される。
島の秘密に関係があると見た公介は蛭川、静子、下男の新吉を伴い島に渡る。
そこでは父・丈五郎が奇形人間の王国を作ろうとしており、健常な人間さえ外科手術を施し奇形人間にしていた。(現れる方々は土方巽暗黒舞踏団のみなさん。大活躍です。「ザイン」思い出した…)
「わしはこの島を奇形人間の楽園にするのだ!正常な人間が奇形人間に服従するのだ!かたわの気持ちはかたわにしかわからん!」
丈五郎から、公介の夢に見たものが何だったのかが明かされる。
源三郎と公介は双子の兄弟だった。丈五郎の夢をかなえるため、公介を東京の知人のもとに預けこの島で奇形人間を作るために外科医にする計画だったのだ。夢に見た美少女は秀子(由美てる子二役)。そして醜男は彼女と人工的にシャム双生児にされた猛(近藤正臣!)だった。公介はこの島で過ごしていた時期があった。その光景を覚えていたのだ。
拳銃を向け、丈五郎は公介に己の野望へ協力を求める。その条件として、公介は秀子を切り離す手術をし、秀子と結ばれる。しかし、しばらくして丈五郎は驚くべき事実を告げる。彼はこの島に妻のときを監禁していた。林田(笈田敏夫だ…出番これだけかい!)との不実に怒った丈五郎は林田ともども島の洞穴に妻を閉じ込め林田を死なせ、傴倭男にときを与え初代と秀子を生ませていたのだ。結ばれた相手は異母の妹だった!近親相姦しちゃった事実を知り愕然とする公介。
丈五郎は公介も蛭川も静子も、洞穴に閉じ込めようとするが、そこに下男の新吉が現れる。
彼は実は私立探偵、明智小五郎(大木実)だったのだ。明智によれば、今回の一連の事件はみな蛭川の所業。
菰田の財産を狙っていた蛭川の悪事を知り丈五郎は激怒。静子ともども地底湖に落とし込み、逃げようとする。追う小五郎。ときを鎖から放ち、秀子と公介も後を追う。
ときを外に出し、公介は彼女に手紙を託す.。(いつのまに書いたの?)
丈五郎を追い詰め、「ときさんはもう十分に責めを負っている」と説得する小五郎。
ときも丈五郎に謝罪し、恨みはないと丈五郎を許す。丈五郎は改悛し、自らを恥じ舌を噛み切る。公介に託された手紙には、公介と秀子は許されない愛を貫くため花火と共に星になると記されていた(確か、そんな文面だった)
いきなり上がる花火。公介と秀子は、星になった…
「おかあさーーーん」

このエンディングを見て、どうすれば笑わないで済むのだ?
ううむ、どう説明したらいいのだ。

主役はやっぱり、吉田輝雄。石井映画の良心にして、なぜか定点。
石井作品ではだいたいこの人以外はみんな変な奴なんだよな。
土方巽は、正直言ってかっこいいです。この舞踏団の映像はアングラぽくてなんだか浮いてるんだけど、この映像は大変珍しいので見る価値がある。
女の裸いっぱいで(^_^;)
最後の土方カットは途中で露出が思い切り変わっているから、自主映画みたいで地味にウケる。日暮れで翌日取り直しがバレバレなんだもん。
フィルムは富士フィルムだし、発色がいまいちなのでなおさらです。

由利徹と大泉滉と上田吉二郎のコント風のくだりはなんなんだ。
おどろおどろしい物語の中でこれはウケる。一服の清涼剤の欽ちゃん走り。
小池朝雄は、なーんでかこんな普通っぽい、変な人の役が結構ある。
ものすごい異常性格だよ、蛭川って。それを淡々とこなす小池朝雄。
不思議な人だ。後に刑事コロンボの声でメジャーになっても、彼のスタンスはあまり変わらなかったらしくTV版の「三つ首塔」なんかでも変な役だった。
東映は元満映のスタッフが移ってきた会社なのだそうで、この満映はとにかく「なんでもあり」の間口の広さが売り物だった。こういう「見世物映画」を楽しむ素養が十分にあった会社だから、その空気を持ってきたスタッフにより東映は「エログロナンセンス」映画を作る下地が十分あった制作会社だったそうな。
作り手に勢いがあるもんだから、微妙につながらないところもたいして気にならない。初代に会うときに1晩で公介がひげ面になったり、金もないはずなのに裏日本を旅したり、島の花火って何しにあるのかとかなんて不思議がいろいろあるけど気にしちゃいけない。
映画を楽しむのに、理屈はいらないぞ。実はこの作品、なにげに乱歩の世界をかなりいい感じで映像化してると思う。曲馬団、レビュー、畸形、狂気、エロといった要素をうまく詰め込んでいる感じ。この爆笑の結末をさっぴいても、乱歩の世界の再現はかなり成功しているぞ。

にしても、テーマが「刑事」なら石井輝男の地帯シリーズでもやりゃあ良いと思うんだけど。後説で高橋克彦いわく、
「いやあ、家内の言ったとおりです。あの花火はねえだろ」
だって。
…ま、何はともあれこんだけのカルト作、見せてくれてありがとう。

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