February 02, 2019

いやはや

意欲低下もはなはだしいなぁ。
まる一年ほったらかしにしました。

てはいうものの、このブログに読者がいるのかどうかはさだかではないので

単なる独り言ですな。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

January 23, 2018

なんかものぐさしている

最近はこのブログもあまり触っていませんが

古い記事を読み返してみると

なんでこんなヘタな文章を書き散らしていたのかと、恥ずかしくなってしまい

読み返しては書き直しを考えている毎日ではあります。


ちょこちょこ観た映画も増えているので、なんとか新しいエントリもしたい。
今や単なるコレクターなので、それじゃだめだよなぁ。

さて、ストックから何を見ましょうか。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

October 20, 2017

三原葉子というひと

三原葉子は、昭和8年(1933年)1月10日生まれの盛岡市出身の女優。本名は藤原正子。
日本で映画が娯楽の王様だった時代に新東宝という制作会社があり、その新東宝でのエログロ路線でグラマー女優として活躍した方。
以前からその存在は知ってたけど、新東宝といえばそのエログロ路線で有名だったわけで、いかにもB級という印象があって自分の若いころはあまり興味がなかった。邦画なんかより洋画ばかり見ていたし。でも小生も歳をとり日本映画も面白いと思うようになってから、新東宝の作品にも関心を持つようになった。自分的には、新東宝ブランドの一番の衝撃は中川信夫監督の「地獄」。
エログロ路線が主流でもこんなカルトな作品を送り出していたということに本当にびっくりした。
この作品から新東宝の作品にも目を向けるようになった訳で、できるだけ見てみたいとは思ったがもう時すでに遅し。DVDも国際放映ブランドでテック・コミュニケーションズから出ていたのに廃盤になってて、その一部の作品がバップからの発売になっていた。結局バップ版で初めて買った新東宝作品が「花嫁吸血魔」だったな。
このあたりから新東宝の映画をなんとかして見る機会を増やすことに傾注することになり、必然的に地帯(ライン)シリーズも見るようになり三原葉子が重要な存在になる。
たぶん、ラインシリーズで最初に見たのは「黄線地帯(イエローライン)」だったはず。見てみて、これもまず驚いたのはその作品世界。カスバのセットのすごさに驚いた。作品自体も、自分の知る石井輝男のエログロものとは全然違っていてとても面白かった。ここでの三原葉子、まずその無邪気なキャラが印象的。それでいてセクシーな踊りのサービスがしっかりと劇中にあるわけで、あえて言うならこのコケティッシュさ(適当な日本語が思いつかない)がこの人の素晴らしいところなのかも。この作品のいいところはこの三原葉子演じる無邪気なルミと対照的な、天知茂が演じた鬱屈した殺し屋の衆木という存在の対比がものすごく生きていること。おかげで三原葉子の存在も強く印象に残る。本作での三原葉子は淀川長治さんが高く評価していた。

もともとは第1期新東宝スターレットに合格し新東宝の自前のスターになるはずだったのだが、入社してからはしばらくはぱっとせず、端役で出演を重ねているうちに前田通子がいなくなった後のセクシー女優ポジションを受け持つことになったのがこの人の芽が出るきっかけ。そのポジションを受け入れてからの活躍は知られている通りのこと。ただ、前田通子との違いというと演技に対する熱意というか、温度差というか。前田通子のほうが和風の美人で、プロポーションもきれいだけど、いまいち役への熱意が薄い感じ。
三原葉子のほうが、演技という点では役に対してのハマり方がずっとしっくりきているように見えた。
不思議なもので、新東宝のセクシー女優について言えるのは、実はみなこっそり胸をときめかせた憧れだけど、それを人前で堂々といいだすことができない存在だったという立ち位置。そういう意味では新東宝の上層部にはある意味で人を見る目があったというか、うまくスターを創造したというのか。
自分的には三原葉子だからとか前田通子だからという訳でなく新東宝のあの大蔵貢のテイストが面白くてDVDでいろいろ見ることに精進していた。

彼女の生家はもともと盛岡で毛皮商を営んでいたところで、その藤原家が盛岡に現存していてリフォームされたという話を聞き、いきさつは忘れてしまったがそのリフォームの設計を行った盛岡設計同人の渡辺先生と知り合う機会があり、実際にその生家を見せていただいた。たしか、2014年のこと。その際に伺ったのだが、彼女の生家がリフォームされるにあたって持ち主が変わったのだそうでそこまでは三原葉子の実家の藤原家がずっと所有していたのだそうだ。そのときはこの新装なった藤原家に三原葉子を招いてお話を伺うイベントなど開催したいという話で盛り上がった。

聞いたところによると、三原葉子が盛岡を離れ、のちに彼女の父親はじめ親類も亡くなってからは住み込みのお手伝いさんみたいな方が実際に住んで家を管理していたが、そのお手伝いさんも亡くなりしばらく空き家になってさすがに傷みがひどくなったようで、おりしも国交省が導入した「街なみ環境整備事業」が盛岡で推進されるにあたってこの建物が重要整備対象のひとつになった。所有者(おそらく三原葉子本人)から盛岡市に対して土地建物の買い取りの申し入れがあったが予算の関係で市で取得できず、街並み景観の修景などへの有志である現オーナーが建物を買い取った。この活用事業の主体になっていたのが盛岡設計同人だった。
そして、実際に工事を始める直前に挨拶がてら三原葉子さん本人が盛岡に来て渡辺先生が対面したのだった。この時には甥御さんと姪御さんが同行していたがこれが2012年のこと。その時の写真を見せてもらったが、そこにいた三原葉子は当然齢を重ねていて、かつての女優時代からはかなり太っていた。
自分の生家を見て懐かしがっていた三原葉子は、その古い、あばら家になっていた自分の生家に一泊していったと聞いた。予約してあったホテルはキャンセルしたとの話。

2014年の10月初め頃、地方紙の岩手日報に三原葉子のストーカーみたいなファンである読者の投稿が掲載された。三原葉子の大ファンだというこの人は三原葉子の関係者をしらみつぶしに訪ね歩き、三原葉子が亡くなったということを知ったと記されていた。
これを読んで、先だってリフォームされた藤原家を見学していた小生たちは驚いた。この話は真実なのか?
三原葉子の親類という方と小生のヨメさんが接点を持つに至り、三原葉子の従兄弟にあたる藤原養蜂所の藤原会長にお目にかかる機会を得て、彼女が亡くなっていることが事実であることを確認したのが2014年の10月の末あたり。
さらに盛岡の郊外にある藤原家のご本家にもおじゃましてお話を伺うことができた。その際に見せていただいた三原葉子の甥御さんからの手紙を見せていただいたところ、彼女の命日は2013年7月1日と判明。このあとは甥御さんとなかなか連絡が取れない状況が続き、しばらくは何もできない状態だったが、見切り発車でほぼ1年経った2015年12月に最初の「三原葉子を語る会」というイベントを我々で彼女の生家で開催した。第2回は諸般の事情で中止となったが、この会の情報が盛岡タイムスに掲載されてのちに拡散して三原葉子が亡くなっていたというニュースが広く伝わることになった。
この語る会を開催するときに三原葉子の同級生で友人だった方たちに来ていただいた訳だが、同級生の皆さんから伺った三原葉子という人間、素の藤原正子さんはとてもいい人だったという言葉。
それを裏付ける話だが、川本三郎さんによると前田通子が新東宝を離れたときには仲間の女優につまはじきにされたというが、三原葉子だけは違ったらしい。前田通子が事実上のクビになった時にはロケ先から「クビになっておめでとう」みたいな電報を送ってきた女優もいたそうで(これ、どうも万里昌代みたい)皆から突き放されてしまい、とても悲しい思いをしたとのことだが三原葉子だけは優しかったとインタビューで述べていたとのこと。
同級生の方々から聞いた話では、とにかく盛岡の同級生たちとの交友は大事にしていたそうで一緒に旅行に行ったり、自身の出演している舞台にも招待していたりしていたという。女優になるために学校での勉強を途中であきらめて東京へ出て行ったので、「もっと勉強したかった」と言っていたそうで、真面目な方だったようだ。
その昔「ノーサイド」という雑誌で「『戦後』が似合う女優」という特集が組まれたときに新東宝の女優陣にもしっかりと触れていたが(川本三郎さんのおかげだろうか)ここに石井輝男が三原葉子の思い出を寄稿していた。それによると彼女、最初に海外に行ったとき英語ができなくて苦労したそうだが、のちに高倉健らとロケで香港に行った際には全く不自由せず英語を話していたそうで、石井輝男から見てもたいへんな努力家だったとの人物評が記されていたが、同級生の方たちの話とも通ずると思った。

とにかく、伝え聞いた三原葉子という女優はプライベートではとてもいい人だった。残念なのは、健康上の理由らしいが1977年ごろに女優業からは実質引退になったこと。この年にTBSの金田一耕助シリーズの「三つ首塔」とATG作品の「西陣心中」に出演した後は表舞台には出ていない。

甥御さんたちとのやりとりについては藤原家本家が地道に続けてくださっていたようで、彼女の遺した品々をまとめて彼女の生家の離れで保存することと彼女の納骨をまとめて行うことについて話がまとまったのが2017年の夏。ご本家には感謝申し上げたい。
甥御さんと姪御さんが盛岡に来た際に一席設けていただき、ここで初めて甥御さんとお会いしてお話を伺うことができた。

聞いたところでは、引退状態になった後にグアム島でのホテル経営など始めたらしい。甥御さんと姪御さんは彼女の姉の子供だそうで、その姉が亡くなった後に彼女が引き取って育てていたそうだ。自身に子供がいなかったからかもしれないが、甥御さんいわく勉強やしつけについては厳しかったという。
自宅にはたくさんの猫を飼っていたという。甥御さんから我々語る会に三原葉子さんの遺された品々を寄贈していただいたのだが、甥御さんによると他にもたくさんあったのだが猫によってダメになったものも多かったそうで、それらは残念なことに廃棄せざるを得なかったとのことだった。たいへん残念だが、あまり昔日の思い出にひたるタイプのひとではなかったのかもしれない。

甥御さんたちとの会食の翌日、三原葉子の遺骨はようやく東顕寺の藤原家の墓に納骨された。
亡くなって4年あまりかかったが、藤原正子として、やっと彼女は盛岡に帰ってくることができたのだ。
できるなら一度お目にかかってお話を伺いたかったと思う。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

July 05, 2017

アスファルトガールのDVDを買った

アスファルトガールについてこのブログで記してからかれこれ10年以上経っていたが、うかつにもこれのDVDが発売されていたのを知らなかった(-_-;)
ようやく手に入れました。ちょっと嬉しい。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

July 01, 2017

狼は天使の匂い

 大昔の思い出。
その昔TBSでは「月曜ロードショー」という番組が月曜夜9時から放送されていて、これが日テレなら「水曜ロードショー」(のちに金曜日に引っ越した)自分の生まれ育った盛岡ではリアルタイムに見られなかったフジテレビなら土曜夜の「ゴールデン洋画劇場」、同様にテレ朝が「日曜洋画劇場」だったけどこちらはすごく遅れて土曜の夜遅くにローカル局で放送してたので、リアルタイムと言えば言えないこともない。
謎の円盤UFO」が土曜の夜8時に放映されていた当時その後の夜9時にはなぜか邦画(しかも東宝の特撮映画の比率が高い。「海底軍艦」「空の大怪獣ラドン」「サンダ対ガイラ」を見た記憶がある)ばかりかけていた映画番組枠があったけど、あれは何だったのだろう。
調べるとどうも「土曜映画招待席」だったみたいだけど、それだと土曜8時の枠(雨傘番組)で「UFO」の後の後の番組なんだよな。オイラの記憶が違っているということだろうか。…と思ったら、どうもオイラの記憶違いだったみたい。この「土曜映画招待席」で間違いないらしい。これについてはまた改めて触れたい。

東京にいたころはテレ東も見られたわけで夜は「木曜洋画劇場」があり昼間だと「2時のロードショー」(のちの「午後のロードショー」)なんてのがあって、キー局ごとに独自の映画枠があった。もっとも東京にいたころはバブル景気の頃で、深夜の映画枠がものすごく充実してたなぁ。今はなきシネヴィヴァン六本木で単館上映だった「天使」なんて前衛的なのをテレビでもやってたような時代。
「蜘蛛女のキス」もなんでか深夜の放送枠だった。しかも吹き替えなしの字幕。
シネヴィヴァン六本木、懐かしいな。「コヤニスカッティ」(コヤニスカッツィ、と今は正しい発音表記になってる)も見に行ったなぁ。
キー局それぞれに映画解説者がいて、月曜は荻昌弘、水曜だと水野晴郎、土曜は高島忠夫、日曜はもう、淀川長治。木曜洋画劇場だとあの当時は木村奈保子だった。懐かしい。
生家にいたころはもっぱら月曜ロードショーを見ていたわけで、それで見た映画はなぜか記憶が比較的鮮明だったりする。この「狼は天使の匂い」もそんな作品で、兄姉どもが放映の時に真面目に見ててそれに付き合わされる形で小生も見ていた。レーザーディスクのソフトは以前出ていたけど長いことDVDにはならず、発売になるとわかったときにしっかり予約して買った。

見てみたら、放映の時にはえらく編集して端折ってあったのだということをものすごく理解できました。

狼は天使の匂い [LA COURSE DU LIÈVRE À TRAVERS LES CHAMPS](1972)
監督:ルネ・クレマン
音楽:フランシス・レイ
出演:ロバート・ライアン、ジャン=ルイ・トランティニアン

Pdvd_016

パリで元本屋の建物に引っ越し作業中の母子。母が「ティトゥ、遊んでおいで」と男の子をその辺にたむろってる子供たち(主にロマ=ジプシー)のところにビー玉の入った網になっている袋を持たせて行かせるが、当然男の子はすぐに仲間に入れるわけじゃない。そのビー玉の入った袋をさしだすんだけど、ロマの年長の男の子がその袋をナイフで切り裂くと階段をビー玉が散らばりながら、跳ねながら落ちていく印象的なカットにルイス・キャロルの言葉が重なる。
Pdvd_012


愛しいものよ、僕たちは、もう寝る時間なのに寝るのをいやがってむずかる年老いた子供にすぎない

舞台は変わってカナダのモントリオール近郊。小さな駅に降り立ったアントワーヌ(ジャン=ルイ・トランティニアン)を待ち伏せていたロマの男たちが取り囲む。彼は飛行機事故でロマの子供を死なせてしまい、それを恨む男たちに追われていた。すきを見て逃げるアントワーヌはヒッチハイクなどしてなんとかモントリオールまでたどり着くが、それでもロマの男たちの追跡は止まない。
逃げ込んだ場所はもとは万博のパビリオンで、そこでアントワーヌは殺人に出くわす。撃たれた男、レンナーを介抱しに駆け寄ると、男はアントワーヌにいまわのきわに最期の言葉をかける。
チャーリーは抜け目ないが、トボガンは死んだ。…わかるか、自殺したんだ!
男はポケットにあった大金をアントワーヌにやり、息絶える。その場から逃げようとする彼を二人の男が呼び止め銃を向ける。男たちは彼に手錠をかけ連れ去るが彼らが警官ではないと判ったアントワーヌは乗せられていた車から一人を突き落とし、運転するもう一人の首を絞め抵抗するけど失敗。落された男とともに船に乗せられ、もとはレストランか何かだった小さな島の家にいるチャーリー(ロバート・ライアン)のもとへ連れて行かれる。出迎えたのはボクサー崩れのマットーネ(アルド・レイ)とシュガーという女(レア・マッサリ)。アントワーヌを連れてきた男はリッツィオ(ジャン・ガヴァン)。車から落とされて重傷なのはポール(ダニエル・ブレトン)というのがチャーリー一味。彼らはこの家で何かの目的をもって共同生活を送っているらしい。殺されたレンナーも彼らの仲間だった。
アントワーヌは自分が追われていた理由を、刑事を殺して追われていたとウソの話をして彼らを信じさせるけど、チャーリーは10ドルだけ渡してこの島から出ていくよう諭す。手錠を外され一度は外に出るんだけどやっぱロマの男たちが待ち伏せていたので、彼は結局チャーリーのもとに戻る。チャーリーは金のありかを聞き出すため、彼をとどめておくことに。カードで遊ぶのに誘われたアントワーヌ、自分の腕時計をリッツィオに売るんだがリッツィオはこれを気に入ったみたいで右腕にはめたんで彼は両腕に時計してる変な人になった。
チャーリーは彼をフロッギーと名付け、「きれいな景色だろ。明朝までに金を返さなかったらあそこに埋めてやるよ」
と脅す。でも居ついた彼はチャーリーたちとちょこっと親しくなる。
翌朝、チャーリーたちは彼をどうやって殺すか朝食の場で話し合っているともう一人この家に住むペッパー(ティサ・ファロー)が騒ぎ出す。ポールの妹の彼女、かなり精神的に不安定ならしくなにかあるとすぐ銃をぶっ放すんだが彼女が言うには「ポールが死んだ」
神父を呼んでポールのための祈りを要求して立てこもるペッパーをアントワーヌは説得するのに成功。チャーリーが埋葬されるポールに祈りの言葉をささげてこの場はなんとか一件落着。
皆が留守にしている間にアントワーヌは納屋になぜか大きな消防車(はしご車)があるのを発見。見張りに残ったシュガーからチャーリーとの関係とかを語られる。
一方出かけていたマットーネはホントの目的のついでにマーチングバンドのリーダーの女につきまとい、彼女の恋人をぶちのめしてしまう。今でいうところのストーカー行為ですな。戻ってきたチャーリーにアントワーヌは金のありかを教えるから仲間にしろと告げる。肝心の金はポールの上着に隠しておいたのをペッパーが見つけていたが、チャーリーはアントワーヌと彼のパリの部屋の鍵をかけて賭けをして、結局は彼を仲間にする。
このあたりから主人公はトニーという名前が通り名になってくるんだけど、まぁそんなことは些細なことだ。
シュガーはトニーになんか惚れてしまったみたい。今回の仕事を終えた後のそれぞれの今後を語るふたり。トニーはオーストラリアに行くのが夢らしい。ペッパーの本当の名前がミルナということもこの辺で判明。
武器屋のマストラゴス(ドン・アレス)がチャーリーのもとに仕事で使う銃器類を届けに来た。彼は「レンナーは死んだしポールもいない、なんだか不安だな」なんて言うんだけど、リッツィオは彼を殺してしまう。リッツィオの提案でチャーリー以下全員でポラロイドカメラで記念撮影をすると、なんでか真ん中にあのマーチングバンドのリーダーがはさまって写っていた。前日マットーネが使って二重露光しちまったからなんだけど、そこに写っていた女、イゾラ(ナディーヌ・ナボコフ)は同じころ刑事に尋問されていた。マットーネが彼女のボーイフレンドを殴り倒した件を自分で警察に通報したためだけど、彼女は犯人の二人の男の特徴として「ひとり、両腕に腕時計してたの」と証言していた。これはまさしくリッツィオ。しでかしたマットーネ頭悪すぎるぞ。
チャーリーたちの計画が実行されることになり、チャーリー以下の男性陣は車でモントリオールへ。シュガーだけが島の家に残っていたらロマの男たちがそこに現れて胡散臭ーく水をもらっていくんだけど、そこで何か起こるのかと思ったら、何も起こらなかった。チャーリーは警視庁の18階から何かを盗み出すらしい。何を?と問うトニーに
「値段はつけられない。…俺たちには100万ドルだ」と答えるチャーリー。トニーは子どもの頃、パリであの日一緒に遊んだ少年の言っていたことを思い出す。
「アメリカで摩天楼を襲撃して街中のデカどもと戦うんだ…」
決行は今夜。男性陣はいったん船で島に戻る。その途中、ペッパーに二人でニューオーリンズへ行こうと誘われるトニーは何となくうなずく。というか、その気になってるのか?
チャーリーから、盗むものは女だとトニーは教えられる。マッカーシーというギャングの裁判の証人として警視庁の18階の特別病棟に入院している18歳の娘なのだが、13歳のころに精神に異常をきたしてしまい語る内容はわからない。そんなんでも証人になるのか?ともかくマッカーシーにとっては100万ドルの価値がある女だとのこと。
しかしレンナーが「彼女は死んだ」と言っていた。チャーリーは身代わりを仕立ててマッカーシーから100万ドルせしめるつもりなのだ。ロマの連中から話を聞いたシュガーは、トニーに一緒に海外に逃げよう、とトニーに懇願するんだがこれにもトニーは何となくうなずく。どうすんだトニー。
いよいよ計画実行。チャーリーさんの御一行はまず劇場にピアノのコンサートを聴きに行くわけだがここで誤算が発生。彼らのいるボックスのすぐそばにあのイゾラがいて、マットーネの姿を見つけちまったのでホールの保安係に警察に連絡するように依頼。そんなことは知らないままチャーリーたちは劇場の奈落へ移動。残った女性陣でトニーの取り合い。ペッパーが「彼は私と行くの」とシュガーに告げたもんだからシュガーは落胆。そのまま手伝いのためにペッパーが席を立ってシュガー一人になったところに警察が来て、シュガーは連れて行かれてしまう。
チャーリーたちは劇場の地下の奈落を抜けて駐車場に行き、地下の壁を車でぶち破って隣の立体駐車場のビルに行き、その18階に停めてある例の消防車のはしごを使ってさらに隣の警視庁ビルの18階に直接のりこみ女をさらってくるという算段。この計画、ちょっと乱暴だと思う。
やはりトボガンは死んでいたので、仕方なしに彼女の服と愛用品だった変なぬいぐるみの人形を持っていこうとしたところ、警備の人間の交代時間になってしまい、銃撃戦になってしまう。リッツィオはここで警察に捕まり、3人だけをペッパーは回収することになった。で、ペッパーをトボガンに仕立て上げることにする。捕まったリッツィオはアジトに警察を案内するふりをしてウソの場所に連れて行き、そこでささやかに抵抗した結果射殺されてしまう。
あくる日、トボガンと現金との交換の場所に行ったチャーリーたちは当然のごとく相手と銃撃戦。全員倒して金を手に入れることに成功するが、マットーネは敵の銃弾を受け死んでしまうのだった。金を持っていこうとしたチャーリーだったが、敵でひとり生き残りの奴がいて彼の銃弾をくらう。トニーがそいつを撃ち倒し、瀕死のチャーリーともども車に乗って逃亡。死んだ仲間の面通しのために連れてこられたシュガーはチャーリーが重傷を負っていることを知り、残った仲間がどこに行ったかを警察に教える。
島の家に戻った3人、チャーリーはほとんど動けないけど酒を飲んでいる。ペッパーが医者を呼ぼうとしたけど電話が通じない。それを知ったチャーリーは自分たちが追いつめられていることを知り、「お前の本名は」とトニーに問います。
「アントワーヌ・カルド」
「俺はチャーリー・エリス」
外の様子を見に行ったペッパーが戻ってきて「誰か河から来る」と告げる。チャーリーは彼らを迎え撃つために銃を取り出そうとするするけど、もう体がいうことを聞かない状態。無理やりものにした金の半分をトニーとペッパーに渡し、「出ていけ!」と追い出してしまう。なぜか銃のほかに酒とポラロイドカメラ、そしてビー玉の入った袋を持って二階に這うようにして上がっていくんだけど、ビー玉がこぼれてしまう。
車で外に出たトニーとペッパーはというと、ロマの男の待ち伏せにあい、トニーは深手を負うことに。トニーはそのことを隠してペッパーを先に行かせる。
「彼を放っておけない。約束する。明日必ず行くから、航空券をくれ、ミルナ」
よたよたとトニーはチャーリーのもとに戻る彼が見たのは、床に転がるライフルと多数のビー玉。
そのビー玉を集めてトニーは上階のチャーリーのもとに行く。ここでまたチャーリーは自分の爺さんの思い出話をちょいと語る。
「じいさんは野ウサギを飼い慣らしてた。耳の大きい本当の野ウサギさ。そいつが逃げたんで、漁師の出番になった。ところが、逃げ回るんだ。3日間も。漁師たちは3日間荒野を駆けまわった。ウサギは罠を見つけるとその上を飛び越えて走る。もっと速く」
「結局、捕まったのかい?」
「いや。じいさんが知恵をつけすぎた」なんて原題「うさぎは野を駈ける」にまつわるお話がここで語られる。
そして、チャーリーが「なぜ戻った」とトニーに問うと
ビー玉のためさ
この映画で一番の決め台詞が出てくるんだな。
「勝負するか、お客も来るしな。店を開こう」
チャーリーの言葉で、ビー玉をかけた勝負が始まるのであった。表の看板を的にして
「あれに当てたら2個だ」とビー玉をかけた勝負。だけど銃声ひびかせてこんなことやってると当然警察との銃撃戦になるわけで、そのさなかにトニーはまた少年時代のあの日を思い出す。パリで年長の少年と別れたときのことを。

とにかく、今回ちゃんと見て思ったのは尺の長さ。ランタイムが2時間15分ある。なので、正直テンポがゆったりしてる作品だということ。月曜ロードショーでやったということは、だいたい1時間30分くらいに尺を短くしていたはずだから、かなり大ナタふるって編集していたことになる。でもそのおかげでかえってタイトになっていい感じだったような気がする。えらいぞTBS。その印象があるもんだからかなりのんびりした感じの流れの作品に感じられた。で、考えたのは、どの部分を詰めるともっとテンポのいい作品になるんだろう?というあまり作品愛の感じられないことでした。雰囲気はものすごいいい。フランシス・レイのテーマ曲はとてもいい。でも、ここまで長い尺はいらないと思う。全体的にカットのおしりが長めに引っ張ってる傾向があるから、それを詰めるだけでもかなり尺は短くなるだろなぁ。
フィルムノワールとして見た場合はちょっと理屈っぽすぎる。でも、このセバスチャン・ジャブリゾの脚本は大人の世界とその大人が通り抜けてきた子供時代とを並列に並べて作品世界を構成しようとするもの。その重要なアイテムがルイス・キャロルであり「不思議の国のアリス」ということに、なるんだろうな。登場人物たちが死ぬ間際に少年時代を思い出す、それもとるにたらない日常的な光景を思い出すカットがはさまるのがその表れだし、この物語でチャーリーとトニーとが実は以前に会ったことがあるという描写、そしてチェシャ猫の顔。そのおかげでどえらい哲学的な雰囲気をもつ作品になってしまった。そのくせいい大人がビー玉賭けて命がけのゲームをするというエンディングがかっこよすぎる。とにかく、この空気感がすべての作品であった。ルネ・クレマンにはもともと「太陽がいっぱい」というノワール作品の傑作があるわけで、この人はこういうノワール的作品を撮りたかったのだろうなぁ。この作品の前には「パリは燃えているか」なんて超大作も手掛けてるけど、そういう大がかりなのはあまり肌に合わなかったのかもしれない。でも、この後のキャリアを考えるとこの作品の時期までが精いっぱいだったかも。

役者について言うと、ロバート・ライアンさんがこのブログでも二度目の登場。また男同士のやおいチックな交流を描く作品ってどういうことなのだろうか。ジャン=ルイ・トランティニアン演じるトニーだかフロッギーだかアントワーヌだかは、ちょっとはっきりしないキャラクターだなぁ。結局若い女を選ぶとことかでそう思ってしまう。ちょっと優柔不断なキャラクターなんで見てるとなんかすっきりしないんだな。精神的に不安定な女を選ぶとは。

自分の兄姉たちがこの作品がテレビでかかったときに喜んで見てたのはチェシャ猫とこのハードボイルドなお話のためだったはず。ここで出てくるチェシャ猫の顔はテニエルの描いたチェシャ猫の顔だった。
Pdvd_013
冒頭の引っ越しの光景にも
Pdvd_014
物語の最後にやっとわかる、チャーリーたちが暮らしていたこの建物の入り口の看板にもこのチェシャ猫がいた。
Pdvd_027

子どもと大人、という別の人種として見るのか子どもから成長して変化したのだとする流れのものとしてとらえるか、ということなのかもしれない。そのどちらを選ぶかは見ているこちら側に任されている。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

June 28, 2017

その場所に女ありて

 もともとこの感想はかれこれ3年前に手を付けておいてそのまま忘れていたもんだったので、せっかくだからと書き直してみたのだがさすがに忘れていることが多くて、改めて本編を見直してみた。

 東宝のサラリーマン映画といえば、まず間違いなく喜劇なはずなんだけど「その場所に女ありて」は、はっきり言って東宝映画らしさもないという感じの、ちょっと異色の作品であった。
もともとタイトルだけ聞いたらえらいしっとりした中身の映画を想像してたんだけど。
いきなりサラリーマン映画だったんだもん。

っていうか、もともとBSで放送するということから録画してあとから見たわけなんだがものを知らない小生は鈴木英夫という監督を当時は知らず、当初これはいつもの東宝風のものなんじゃないかと思い込んでいたので気楽に録画して見てみたのですが見たら鈴木英夫というひとの才能がものすごく感じられる、佳作だったのが驚きだった。当時の東宝という会社は懐が深かったのだな。懐の深さついでにぜひソフト化してほしい作品です。

その場所に女ありて(1962)
監督 鈴木英夫
脚本 升田商二・鈴木英夫

矢田律子(司葉子)は西銀広告社の営業担当。出社の途上でデザイナーの倉井達也(山崎努)と出くわし、今回二人で担当しているスカル目薬の原稿が本日の正午提出ってんでざっくばらんにこの件を話し合いながら出社。
オフィスでは古株タイピストの田島祐子(大塚道子)が後輩男性社員をどやしつけながらタイプ打ちの真っ最中。この会社は基本年功序列で性格のきつい女子を採用するらしい。皆からは「幹事長」と呼ばれてます。
律子の隣の席にいるのは藤井久江(原知佐子)男性社員相手に月利3%の金貸し業をやってるようで、今日は給料日なんで金利だけでもと取り立ての作戦を立てている。
彼女らの妹分としてかわいがられてるのがコマンチこと吉村ミツ子(水野久美)彼女の付き合っている相手は何か病気の治療中らしく彼女が面倒を見ているのだが、そのことを祐子からはバカだと言われているけどこれは祐子が彼女のことを心配してるから。
制作室ではチーフデザイナーの坪内(浜村純)から倉井がダメ出しされている。
「モデルに対する君の仕事以外の感情がこの仕事を甘くしている」だって。
そこに出社してくるのがフェロモンいっぱいの須川有子(北あけみ)いろいろと交友関係が広いみたいだけど、倉井は彼女にもコナかけてる様子。
今日は課内の会議。水沢部長(西村晃)とか塚本(伊藤久哉)、乾(織田政雄)とかから議題として語られたのは接待費と受注額のバランスがいまいちよくないので接待費の生きた使い方をしてほしいなどということ。
会議が終わったところに難波製薬から律子に電話がかかってくる。新薬の発表をするというご案内の連絡だったんだが、それならかなりの広告予算を割くだろうということで急きょ水沢部長じきじきにチームを編成、部長の指示でこの日に提出するスカル製薬の目薬の広告原稿を持っていくついでに難波製薬の予算にも探りを入れることに。
律子が出かけようとしたところに律子の姉・佐川実代(森光子)からの呼び出しがあり、彼女は近くの喫茶店に行きました。実代の年下の夫・佐川道男(児玉清)はほとんどプー太郎なので、実代は律子に金の無心に来たのであった。道男のことをこき下ろす律子に実代はカチンとくるけど結局は金を借りることに。外で待っている児玉清が若いこと若いこと。最近の役者で誰か似てるような気がする。
車に乗って律子は久江と一緒に出かけるのだが、車中で律子は男に入れあげる姉のことを最低と言うけど、それに応えて久江は「女に入れあげる男も最低。あたしはそれで別れたんだから」なんて会話をしてるんで、久江はバツイチだということが判明。「小じわが出てきた」という久江でしたがえらくそのことを気にしているみたい。
スカル薬品に提出した広告は宣伝部長だか課長(丘寵児)からは不評でどうもやり直しになりそう。律子は会社に戻る途中で難波製薬に顔を出してこちらの宣伝課長(石田茂樹)から宣伝予算を聞き出そうとするのだが、そこにはライバル会社の大通広告社の坂井(宝田明)が先に刺さっていたのであった。
終業後に律子は雀荘で同僚のみなさんと麻雀を打っているところになぜかまた坂井登場。本筋には特に関わらんくだりですが個人的には好きなくだり。
一人自宅のアパートに戻った律子、しんみり一人でウィスキーなんぞちびちびやってるとそこに久江がやってくる。別れた夫に会ってきたそうで、飲んで食事した帰り道。その別れた夫の優しさを語る久江は最後には泣き出してしまうわけで、それを見た律子は「ダメねあんたって。情けなくなってくるわ」などとつぶやくのでした。

スカル目薬の広告は作り直し。すごい服着たモデル(清水えみ)がやってきて倉井と軽口など交わすんだが、やっぱこの二人はデキているのかも、と視線を送る北あけみ。
同じころ、湯沸し室でコマンチは祐子に借金を頼んでいた。
「(男の)入院代と部屋代で給料が飛んでしまったんです。十日以内に返します。お願いします」
しかし乱暴ながらもコマンチの身を気遣う祐子はその申し出を断り、男と別れるよう説教。
「お前を一度は捨てて逃げた男だ。病気でどうにもならなくなって舞い戻ってきた。女をなめてる。そんな奴かまうな!」
その通りなのはわかってるのに苦悩し涙するコマンチ。その様子を見て、祐子は彼女の男が死んだのかと思い込みます。

難波製薬の会議室では宣伝部長(松本染升)から新薬の広告について発表がなされ、いわゆるコンペでどこに任せるかは決めるということになりました。
その部長に呼び出された律子、何の話かと思ったら縁談。見合いだけでも、という部長にやっぱり新薬の広告予算を聞き出そうとするんだな。その足でスカル薬品に顔を出してみたらなぜか倉井がモデルの子と一緒に宣伝課長と打ち合わせ中。倉井は能力はともかく世渡りはうまいタイプなんだな。担当なのにないがしろにされた律子は当然カチンと来て、帰りの車中で倉井に文句を並べる。
一方の大通広告社、坂井は上司の保田(稲葉義男)と今回の難波製薬の対応を打ち合わせ。自前のデザイナーが手一杯で仕方なく外注にすることを決定。できるなら大物を使いたいという保田。
一方の西銀広告は水沢部長のもと律子と坪内が方針を検討していた。斬新な方向性でいこうという坪内に対し水沢部長はオーソドックス路線を主張。律子も坪内に同調するんだけど結局は部長の主張どおりに方針決定。不満げな坪内にちょっと心配な乾。

律子は坂井から呼び出されて飲みに行きます。その場でいろいろ情報交換してそこでも坪内さんの名前が出てくるんだな。で、律子が早々に帰った後、まだ会社で仕事中の坪内さんに坂井は電話していた。ここでバーの女(宮田芳子)と坂井との会話から坂井のちょっと情の薄い人間性がわかります。
律子は実代のところに行って父親の十七回忌の話などしていた。律子は出られないから、とお金を預けて道男の帰宅したタイミングで帰宅。しかし、麻雀で負けた金の支払いに律子の置いて行った金を使おうとする道男、だめなやっちゃ。児玉清のいろいろダメな芝居が見どころ。
帰宅する律子を駅で待っていたのは倉井。スカル目薬のコピーを考えよう、ということで律子の部屋で二人で検討会。女の魅力は男がつくるもんだろ、とか言って倉井は律子を押し倒すんだけど失敗。翌日の制作室で有子にそのてんまつを語った倉井、「あの女ちっとも興奮しねえんだ」とか毒づいて有子といちゃついてます。二股かけてやがる。
会社の屋上では祐子と律子が語り合っております。最近なんかイキイキしてる、という祐子に律子は何かいいことあってもいいじゃない、などと語りつつ自分のキャリアを振り返るのだった。7年いつも追いかけられるように働いて気がつけばもう27などと語っていると乾が来て、律子の縁談をなんとか今回の仕事が終わるまで引っ張ってほしいとのリクエスト。
一方の坂井、坪内を取り込もうと接待攻勢。結果は成功。律子も難波製薬の宣伝課長をご接待。このあとはおさすりバーに出動だ!などと塚本=伊藤久哉と盛り上がって、塚本がトイレに席を立ったらおさわりでセクハラ開始される始末。

コマンチが会社の金を使い込んでしまい、もし次があったらその時はクビだと乾に告げられる。コマンチになんでそんなに冷たく当たるんだという律子は祐子と口論、それを仲裁する久江。祐子がコマンチを問い詰めると、男はどうも死んでしまったらしい。
難波製薬チームの打ち合わせに坪内は歯痛で遅れるとの連絡でしたが、実はそのころ大通広告社では坪内が現金攻勢の坂井とこそっと打ち合わせしていたのでした。
難波の宣伝課長を訪問した律子はなんだかえらいキメてきてる。坂井が先回りして課長と話し込んでるけどそのまま課長も交えて麻雀だ!ということで塚本も参加して麻雀大会。でもその場で坂井に坪内から電話が。いぶかしげな律子。麻雀のあと律子は坂井とあまり流行ってなさそうなバーでサシで飲んでます。坂井の人間性を皮肉る律子だが、逆に坂井に「君も職業病に毒されてる。君は女として女の感情に燃えたことが一度でもあるのかい?」とツッコまれ悪酔いしてしまう。具合を心配する坂井に惚れてる律子は、「あなたがいるから余計に苦しい」などと本音を吐いてしまいます。坂井は律子をお茶の水あたりのホテルに連れていき、「ぼくの気持ちはもう決まってるんだ」などと告げ一夜をともにしてしまうのであった。

コマンチはここしばらく出社していない。
倉井がスカル目薬の広告で日新賞を受賞する。なんか広告関係のすごい賞らしい。
律子の考えたコピーをそのまま使ってるくせして倉井は全部自分の仕事とマスコミに伝えたようで、他の課員は不平たらたら。倉井は鼻高々。難波製薬の広告は大通と西銀の企画がまず通ったとの報せをうけ、さっそく西銀は製作開始。一方の大通のほうも坪内のプランで製作開始。坪内さん忙しすぎだろ。
そして納品の日。律子は難波製薬で坂井とご対面。広告は難波製薬の宣伝部長らが選定して、大通の原稿を見た律子はそれが坪内の手によるものと知る。帰り道、「ぼくの君に対する気持ちだけは信じてほしい」と坂井は律子に告げるけど
「相手方のディレクターを抱き込むなんてやり方が汚いじゃないの!私はもうあなたにはついていけない。自分がみじめすぎるわ。でも私は生きていかなくちゃならないのよ!働かなくちゃならないのよ!」
と答え一人去っていく。

会社に戻った律子は坪内をとっちめます。坪内さんは
「俺も歳だ。(中略)今の俺は買い手があるときに売るよりほかないんだ。…辞表を出すよ」とさびしく答える。
でも律子はその辞表を「私が次の仕事まで預かっておく。あなたにひとつ貸しができたわよ」
コマンチが飛び込み自殺した。彼女の男は病から回復したとたん彼女を捨てて逃げて行ってしまったのだ。男は死んだのではなかった。
久江いわく「男のために身動きできないくらい借金していたみたい」
祐子は「あいつは上野の博物館でも通用する珍品でしたよ」などと泣き笑いしてまとめちまうけど、珍品はコマンチだけではない、と律子。
「男って、どうして自分を作るためにしか女を必要としないのかしら…何か忘れてるわ」
とつぶやきます。

坂井は保田からレストランで今回の難波の件で労をねぎらわれていた。
一方の律子は西銀のアイディアが大通に筒抜けだったことで詰問されていた。そりゃそうだが無関係だと強く弁明する律子に、水沢部長は「今後も頼むよ」と何かすきっとしない雰囲気でねぎらう。縁談は断るように乾に頼む律子、「君は一生結婚しないつもりかい?」と問われて「自分で納得したら、結婚したいと思います」と答える。
倉井は調子に乗って西銀を退職。えらいでかい封筒の辞表を出して、水沢部長も「放っておけ」当たり前だけど誰も彼をよく言わないんだね。そんな律子を道男が訪ねてくる。実代から無心を頼む手紙を持ってきたんだが、その手紙を律子は破り捨ててしまう。児玉清のお芝居が下手すぎてステキです。
道男を帰した律子を倉井が待っていて、「アルバイトしない?キャッチフレーズだけやってくれりゃいいんだ」などと誘うんだけど、次の職場では彼は高給でスカウトされたんでやっかまれてしまい、同僚は誰も手伝ってくれないので困っているとの話。でも律子は倉井の顔を張って立ち去る。
あいつ(倉井)はどうせ大したことできない、なんて祐子の台詞を聞きながら帰宅しようとしていると乾から次の仕事の話が持ち込まれ、ちょっと明るい雰囲気。律子は久江と祐子とで飲みに行こう!と盛り上がったところに坂井から電話。弁解めいたセリフのあと
「もう一度会ってもらえないか」なんて言われるけど
「街でばったり会ったらまたお酒でも飲みましょう。笑い話にしてもいいわ。じゃ、さよなら。お元気で」
と律子は電話を切る。
夕暮れの街に出ていく三人の姿を追って映画は終わるのでした。


見てると「こんな奴いねーよ!」とツッコミたくなるキャラが(例:大塚道子のキャラ)連発で登場するのが第一印象。でも、この当時はまだ働く女性ってのは腰掛け的に会社にいたりする場合が多かったわけで、ここでの律子はじめとする女性たちが仕事にしがみついている姿はたぶん同時代的には変な感じだったろうなと思う。自分的にも、この人は何でここまで仕事にこだわるんだろうか?と考えてしまう。そう感じてしまうのは、自分も古いジェンダー観にとらわれているんかしら。劇中の律子ほかメインキャラが「どうして男はどう、女はこう」と語る言葉がこの映画で言いたかったことなのだろうなー。古いタイプの女性観を表現するキャラとして、まず若い水野久美演じるコマンチ(なんでこの愛称なのかは語られないけど)が置かれているのがちょっと面白い。それをダメ押しするのが森光子演じる実代というキャラクター。昔風の女性を森光子がやるのは判るけど、でもこの人が演じるとここまでだめんず押しの女でもこんな後ろ暗いのでなく、もっと前向きに明るい女性のような気もするんだがな。そんなわけでこの作品のキャスティングは意外な感じが強い。宝田明演じる坂井も、この人がやってるから微妙にさわやかになってるけど、まぁこれはこれでいいか。でも、だいたいあそこまでずるいやり方で仕事をとってきてるんだからそりゃ嫌われると思うが、なんか宝田明でやるとこの人物がものすごーい無邪気にひどい裏ワザ使ってるみたいで、そのくせもう一度会いたいなんて甘ったれたことを言ってるんだから周囲からするとこういう人物もあまり付き合いたくないかも。面倒見てる上司も稲葉義男だけだもん。この人が背広姿でなんかやってるとどうしても「ザ・ガードマン」になってしまうのは自分だけだろう。
まあ会社ってのはみんなの御奉公で成り立ってるんだからねぇ。とはいえそこでの仕事だけに人生の意義を感じるのも長い目で見れば危険ではある。そんな男性も多いし。律子もいずれは仕事だけで人生が終わってしまう人間になってしまうのかもしれない、という示唆もある、かな?これはいま思いついたけど。
でも見てるとやっぱり時代を感じるなぁ。オフィスでは喫煙おかまいなしだし、当時は軽いたばこなんてないのにそれでもみんなスパスパやってんだものな。出かけるのも運転手つきの社用車だし、みんな麻雀打ってるし。
今はどっこも禁煙。運転手さんつきの社用車なんて取締役社長でもないと使えないし、麻雀なんて若い人はぜんぜんやらない。
東宝だけにサラリーマンの描写は上手。出演者もそれに慣れてるし。伊藤久哉の出番が多いのが珍しいかも。石田茂樹もそう。典型的な中間管理職を上手に演じています。のちにウルトラマンの中の人になる古谷敏もちょこっと出演。
児玉清の芝居については、まぁねぇ(笑)三橋達也のダメ男キャラと違ってリアルすぎて笑えん。監督からしごかれただろうに、それでもこれかい!と言ってしまうと身もフタもないが。
監督の鈴木英夫は役者に厳しかったことで有名だけど、そのせいかえらいピリピリした雰囲気の作品を作ってた。サスペンスものには向いているひとで、後で見た「悪の階段」なんてのもあまり東宝らしくない佳作だと思う。ご本人はあまり気に入ってなかったみたいだが。このひとのカラー、大映ならわかる。佐原健二とか佐藤允がどえらくこきおろされたのは有名らしい。児玉清も自伝に悪口書いていたし。なんかの本人のインタビューでも、宝田明を「大根」と語ってたし。そのくせ女優にはどうも甘かったみたいだけどねぇ。女優は悪口言ってないみたいだもん。
チョイ役のバーの女の宮田芳子とか金貸しの件で原知佐子がとっちめようとする同僚のメガネの女社員(柳川慶子)とか、えらいキャラが立ってて出番が少ないのがもったいない気もする。クレジットも上の方だし。そういう意味では女優を使うのがうまい監督だったということになるのかも。
なにはともあれ、きちんとした佳作でありました。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

June 24, 2017

こころがゆれる

ここにきていろいろと入手したいDVDソフトがいろいろと(-_-;)
「毛の生えた拳銃」とか「裏切りの季節」とか、岡本喜八の「肉弾」に「近頃なぜかチャールストン」といったところ。
大和屋竺ものだと「愛欲の罠」なんてのもあったというのを今知った。…手に入れづらいなこれ。

いろいろと努力が必要な状況ではある。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

June 23, 2017

備忘録として

とりあえず見ているもの
「歌麿~夢と知りせば」と「プーサン」、「狼は天使の匂い」かな?
最近記憶力が悪くなってなぁ…

| | Comments (0) | TrackBack (0)

June 22, 2017

国際諜報局(レビュー)

せっかく高い金出して買ったソフトなので、グチだけ書いておいても仕方ないからちゃんとレビューもしておこう、うん。
いつのまにやらこんなことになってしまっていたのは少し悲しいけど。でもこれは本編ディスクのみで、2枚組じゃないし、うん(T_T)

でも、今にして思うとなんでこれを見たいとすんごく思っていたのか、思い出せない。ソフトの存在を知ってからもうだいぶ時間が経ってしまってるもんなぁ。ま、もともと昔の007シリーズが好きだったからたぶんそのスピンオフ的な作品なんだろうなと想像していたからに違いない。でも、007シリーズの共同プロデューサーだったハリー・サルツマンとアルバート・R・ブロッコリの間にはこの作品あたりから温度差が出てきてるんだろうなということはよく判った。比較的シリアス路線でいきたかったサルツマンと娯楽路線を進めたかったブロッコリ。のちにその流れの中で「女王陛下の007」が制作されることになり、これがいまいちヒットしなかったことで007シリーズはブロッコリが制作の主導権を握ることになってしまった。
007シリーズのアンチテーゼ的な作品なのに、肝心の007シリーズのプロデューサーがこれを気に入って制作したうえにこれが高評価という、なんだか皮肉な成り立ちだけど実際に見てみたら確かにかっちりした良い感じの作品でした。

Pdvd_001


国際諜報局 The Ipcress File(1965)
原作 レン・デイトン
監督 シドニー・J・フューリー
制作 ハリー・サルツマン
制作総指揮 チャールズ・D・カッシャー
音楽 ジョン・バリー
美術 ケン・アダム

例によって以下は思い切りネタバレ

朝のロンドン。駅から列車に乗ろうとしたラドクリフ博士(オーブリー・リチャーズ)が誘拐され、護衛についていた情報局員が殺された。
陸軍軍曹のハリー・パーマー(マイケル・ケイン)は監視対象の張り込み任務の交代で出勤したところロス大佐(ガイ・ドールマン)に呼び出され、ドルビー少佐(ナイジェル・グリーン)のチームへの異動を命じられる。
ロス大佐に連れて行かれた場所は「ドルビー職業紹介所」なるところ。まずロス大佐がドルビー少佐に状況を確認した会話によれば、この2年の間に126人の政府の研究者が辞めているが、このうち16人が辞めた理由や状況が不明であるということ。今回のラドクリフ博士は誘拐されたことが明らかなので、初めて科学者の行方不明についての手掛かりを得ることができる、ということでロス大佐はドルビー少佐の課にラドクリフ博士の奪還を指示する。ハリーは博士を護衛していて殺されたテイラーの代替要員として連れてこられたのだった。
ドルビー少佐はハリーの勤務評定を本人の前で読み上げるんだけど、それによれば
「反抗的、尊大、無秩序、犯罪的傾向あり。最後のひとつは役に立つかもしれない」
とハナからイヤミを言われて、案内されて連れて行かれたのはアストラ社なる花火の会社。さらにこの奥にあるS.E.T.Aテレビ広告社なる会社の編集室でドルビー少佐の課員を紹介され、任務を伝えられる。ラドクリフ博士を奪還できなければこの課は閉鎖されると告げるドルビー。
「博士を売りに出せる力があるのはヨーロッパに二人いるが、そのうちの一人は二か月前に逮捕されている。残る一人はエリック・アシュリー・グランツビー(フランク・ガティフ)暗号名はアオカケス。去年の10月にウイーンで目撃されて以後は姿を見せていない。ロンドンの潜伏場所をあたって、接触したものは我々が買うと伝えろ」
というわけで、ハリーは親しくなったジョック(ゴードン・ジャクソン)からこの課のしきたりなど教えられたけど、
「ドルビーのやり方は肌に合わない」
と単独行動開始。まず彼が向かったのはスコットランドヤード。知り合いのパット・キートリー(スタンリー・メドウズ)に頼んでグランツビーの駐車違反歴などを洗い出し、車のナンバーも確認するとグランツビーが駐車違反で何度か違反キップ切られたサーロー街へ。
グランツビーの車を見つけて張り込んでると現れたのはグランツビーの参謀役のイワツバメ(オリバー・マクギーヴィ)パーキングメーターの料金を追加して去っていく彼を尾行してみると、入った場所は科学博物館の図書館。パーマーはそこであっさりとグランツビーを発見し接触するのでした。
「我々は列車で紛失した大切な研究用の機器を捜しています。手を貸してほしい。取引したい」
「6時以降に電話を」
とグランツビーはハリーに電話番号を書いたメモを渡します。それを持って出たハリー、すぐさまその番号を電話ボックスから交換に確認したところそれは停止されている番号。
そばを通り過ぎていくイワツバメとグランツビーをハリーは追いかけて呼び止めます。それを眺めているメガネの男が一人いました。彼は図書館の中でもグランツビーを見張っていた男。イワツバメとハリーは乱闘したあげく、グランツビーともども逃げられてしまいます。

オフィスに戻るとドルビーから課員は報告を求められますが、誰も収穫なし。そんな中ハリーは「接触しました」と報告。使っていない電話番号を渡され尾行をまかれた旨伝えますが、
「報告書を出したらまた捜索に戻れ」とつれないドルビー少佐。
ジョックは「彼はきみの働きを喜んでる」と彼をほめますが
「妙な喜びかただな」とハリーは不満げ。

ハリーは買い物をして帰宅。すると点いていないはずの電燈が点いている。ドアを開けた形跡もある。春風亭昇太のようにハリーは独り者なんだもの。
銃を構えて中に入ってみると、そこにいたのは女性課員のジーン・コートニー(スー・ロイド)彼女が言うには
「ドルビーは新人を調べるの」
部屋の中をあらためられたハリーは、
「じゃあウィスキーの場所は?」
「判るわ」
「二つ頼む」
料理を始めるハリーはコートニーと身の上話など始めます。
コートニーの夫も情報機関で働いていたが東京で殺され、彼女の今の仕事は軍が世話したものでした。
ハリーも営倉から拾われてきた身の上であることを話します。
ベルリンにいたころにいろいろやらかしていたと語るハリー。
二人分の食事を作ろうとしてコートニーを一緒に食べようと誘いますが
「食欲がないの」と断られてしまいます。

あくる日オフィスでジョックから報告書の書き方など教えられていると、キートリーから電話でイワツバメが逮捕されたと教えられます、急いでスコットランドヤードに行ってみると、イワツバメは殺されていました。ハリーの名前を騙った男が先回りして彼を殺害していたらしい。
イワツバメの逮捕記録を見ると、容疑はスーツケースの不法所持。そのスーツケースは偽のハリーが持って行ったそうで、中身は電子機器だったと教えられます。逮捕された場所はサンダーソンの廃工場。
そこにラドクリフがいると踏んだハリーはスコットランドヤードの保安部を動員して廃工場に突入。しかし、中はもぬけのカラ。天井から下がった十字に組んだ鉄製の梁があるだけでした。ドルビーからは
「持ってもいないCC1権限を二度と使うな」
と叱責されてしまいます。
皆が撤収する中、ハリーがあたりを調べてみるとまだあたたかいストーブの中から燃やそうとして燃え残った録音テープを見つけます。そこには「IPCRESS(イプクレス)」との文字が。それを再生してみると奇妙な電子ノイズが聞こえるのだが、それが何なのかは判らないまま。

帰宅途中、ハリーがスーパーで買い物をしているとロス大佐に出くわします。買い物でたまたま一緒になった訳ではなくて、ロス大佐はドルビー少佐に内緒で捜査資料をマイクロフィルムに写して渡すようにハリーに命じます。断れば君は営倉に戻ることになる、と告げロス大佐は去っていきます。
帰ればコートニーと一緒にまた料理してるわけだけど、彼女はハリーを監視しているらしい。でも誰の命令なのかは彼女は教えてくれない。
本当は休みの土曜日に、ハリーはドルビーに近衛歩兵第4連隊のコンサートに連れて行かれます。グランツビーのメモはこのコンサートのチラシだったのでした。行ってみると、そこにグランツビーが現れドルビーは彼に取引を持ちかけます。
「研究用の機器に興味がある」
「陽子・陽子拡散の機器に?」
「君はその独占権を持っている」
グランツビーはその独占権を売ってもいい、と告げ25,000ポンドで商談が成立。しかしその場にもあのグランツビーを見張るメガネの男がいたのでした。

秘密の交換取引は無事に終わったかと思いきや銃撃戦が発生。ハリーは相手を撃ち、倒すのだがそこで死んでいたのはグランツビーを見張っていたあのメガネの男。実はCIAのエージェント。CIAはグランツビーを監視していたのでした。ハリーはラドクリフ博士の護衛を命じられ、彼に付き添い外出。それをまた別のCIA要員が監視しています。ラドクリフ博士は高エネルギーシンポジウムで講演をすることになっていて、ハリーが会場に連れて行くのですが博士は肝心の研究に関する記憶をすべてなくしていたため講演を始めた途端に絶句してしまいます。そしてCIAは今は仲間を殺したハリーを監視していることが判明します。

Pdvd_004

ハリーはグランツビーに返金交渉のために会っていたけど、交渉になりません。むしろグランツビーとの関係をCIAに疑われる状況。そんななかジョックはあることに気づきます。
謎の単語イプクレスはInduction of Psychoneuroses by Condition Reflex under Stress を短くしていたものでないかと。ジョックは「博士に会って実験してみる」とハリーの車を借りて博士のもとへ向かうが、その途上何者かに射殺されてしまいます。
Pdvd_005

「ジョックは自分と間違えて殺された」と考えたハリーは、ひとまずコートニーの家に隠れることにして一度自宅に戻りますがそこには彼を監視していたCIA要員が死んでいました。あわててオフィスに戻るとジョックから借りた本をはじめとする捜査資料を引き出しに鍵をかけてしまっておいたのに開けられていて中身はからっぽ。ハリーはドルビーに電話し「話したいことがある」と直接会うことにします。
現れたドルビーに、ハリーはCIA捜査員の死体が自宅にあったこと、捜査資料が盗まれたこと、そしてその犯人はおそらくロス大佐だと伝えます。イプクレスの謎が解けそうだったタイミングで自分を罠にかけようとしている。そしてロスは資料を見たがっていた。
ドルビーはハリーに姿を隠すよう指示します。死体もなんとかすると言い、夕食の約束の場所に向かい去っていきました。
ロンドンからしばらく離れるためにコートニーに見送られて出かけていくハリーですが、ハリーが出て行ってすぐコートニーはロス大佐に電話しています。ドルビーはそのころロス大佐に会ってハリーから聞いた話を伝えていました。ロス大佐はグランツビーを捕えるよう指示します。夜、大陸横断列車に乗ってロンドンを離れたハリーは車中で何者かに捕えられてしまいました。

ハリーが目を覚ますと、そこはいずこともわからない狭い牢屋の中。古い石造りの建物らしい。壁には今までそこに囚われていた人々の言葉が刻まれている様子。ハリーはベッドの下から曲がった古釘を見つけ、これで壁に何日経過したかを刻んでいく。出された食事もとらず数日ほぼ寝たまま過ごしていたハリーのもとに、彼のことを診察しに来た医者と共にグランツビーが現れます。
「なぜ誰も話さないんだ」とのハリーの問いに
「ここはアルバニアだからな」とはグランツビー。彼の母国だとのこと。
「俺は飢えや寒さにも耐えられる」と強弁するハリー。資料を見た、と続けると
「だから連れてきた」と彼がここにいる理由を教えるグランツビー。
「二日、様子を見てから施術だ」と部下に指示を出します。そしてハリーが目を覚ましてから一週間経過。
ハリーはすっかり衰弱状態。医者のもとに連れてこられて、イスに縛られてまた別の部屋に連れて行かれます。
連れてかれた広い場所には、あの廃工場で見た十字型の鉄製の梁がありました。それには灰色の半透過スクリーンで四方を囲んだ台が吊るされていて、ハリーはその中に入れられ台を吊るして部屋を真っ暗にしてから「施術」が始まります。
ハリーを取り囲む不思議な映像と共に、あの廃工場から回収したテープから聞こえた変な音が大音量で響く状況。体が衰弱しているハリーにはとても神経的に耐えがたいけど、イスに縛られているから耳をふさぐこともできません。静かになるとグランツビーが語りかけます。
「リラックスだ。私の声を聞け。私の声だけを聞け。君はイプクレスの音を忘れる。君はイプクレスの捜査資料(ファイル)を忘れる。自分の名前も忘れる」
「ハリー・パーマー、俺の名はハリー・パーマーだ」
「君に名前はない」
「俺の名前はハリー・パーマーだ!」
施術とは、映像と音とで感覚を以上にしたうえでの催眠術みたいなものらしい。
一生懸命抗うハリー、彼が縛られた手を動かしすぎてけがをしていて、その痛みが施術を妨げているとみたグランツビーは一度施術を中止し、けがをしないように対策をしたうえでハリーの寝入りばなに無理やり連行して施術をして強ストレス状況での施術を何日か続けるのでした。
すっかり衰弱度が進みもうあかん状態のハリー、かれこれ5日ほど連続で施術されていますがまだ何とか意識はぎりぎり保っている。でも今回の施術では握りしめていた古釘も手から落ち、指示通りに目をつぶる。
「君はイプクレスの音も捜査資料も忘れる。自分の名前も。ある声が聞こえてくる。君は必ずその声に従うんだ」
施術がうまくいっていると見たグランツビーは別の声で呼びかけます。
「君は国を裏切りここにいる。同盟国の捜査員を殺した。イプクレスの捜査資料を盗み英国の敵に売った裏切り者だ。復唱するんだ。この声が「聞きなさい」と言ったら必ず従う
復唱するハリー。施術はうまくいってしまったのか?指示通りに反応するハリーを見て、グランツビーは満足します。

しかし独房に戻されたハリー、実は施術は効いていませんでした。寝付いたところを連れにきた守衛たちを殴り倒し、拳銃を奪って脱走に成功します。実は倉庫だった建物の外に出てみると、そこには見慣れたロンドンの光景がありました。夕方なんだか夜なんだかよくわからない時間帯だったけど、彼は電話ボックスに飛び込みドルビー少佐に電話をかけます。
「どこにいる?」とドルビー。その隣には、なんとグランツビーがいました。
「試してみろ」とグランツビーに促され、ドルビーはハリーに語りかけます。
聞きなさい。ロス大佐に電話して倉庫に呼び出すんだ。電話を切ったら私の言ったことは忘れろ」

倉庫にやってきたドルビー少佐をハリーが待ち構えていました。
話したら殺す、とハリーはドルビーを銃で脅します。ドルビーを壁際に立たせたところにロス大佐が登場。このロス大佐も銃で脅し、ハリーはドルビーの隣の壁際に立たせます。
「君に何があった?」ロス大佐がたずねると
「どちらかがそれを知ってる」とハリー。
はたして、本当の二重スパイは誰なのか?コートニーを使ってハリーを監視していたロスなのか?
ドルビーがハリーに語りかける。
「私の声を聞け。ロスを撃て。裏切者を殺せ」
わなわなと銃口をロスにむけるハリー、しかしそこで古釘でキズつけた右手をそこにあった映写機に叩き付け、痛みで意識を保ちます。その言葉を知っている人間をこれで思い出すハリー。
隠していた銃をとりだそうとしたドルビーをハリーは撃ち、倒します。

「君の反抗心を頼りにしてたよ」とねぎらうロス大佐に
「おれのことをおとりにしていただろう。命と精神を犠牲にするところだった」とハリー。
「それも仕事のうちだ」
ロス大佐はハンカチを出し、ハリーの血だらけの右手を拭いてやるのでした。


007シリーズを支えたスタッフが制作陣を固めているんだが、それっぽい雰囲気はぜんぜん感じられない。
ハデな悪の組織も、秘密兵器も、水着のとても似合いそうな美女も高級リゾートも出てこない。冒頭の張り込みはアンパンと牛乳が似合いそうな雰囲気だし、ジョン・バリーの音楽はスローテンポの地味な楽曲だし、ケン・アダムによる美術は007シリーズよりもむしろ組織にいる個人の矮小さを強調するような感覚ではないかと思った。ドルビーの部屋はムダに広いし、ハリーたちのオフィスもムダに天井が高くてドアがでかい。「未知への飛行」のスタジオセットと何か相通じるものが個人的には感じられた。とはいってもセットなのか、ロケなのかはわからないけど。そのかわり、ハリーの自宅とか買物するシーンなんかは生活感がたっぷり。ジェームズ・ボンドとは違ってハリー・パーマーは自分で買い物をして自分で料理をして、そんなに高い服も着ていない。高級品も身に着けているわけでもない、庶民的な主人公。ハードボイルド探偵ものの主人公がマーロウみたいな現代の騎士物語からアル中だったり人生で失敗していたりというどこか問題のあるキャラが主人公になっていった流れと重なって見える。チームとしての行動が苦手なハリー・パーマーは見事にハードボイルドな人です。デイトンの原作自体が冒険譚ではないしな。むしろ007シリーズをネタにしてわかりづらい皮肉やら練りこんだものだってのに、それを007シリーズのスタッフが映像化しているというネタにネタを重ねた作品の成り立ち。
でも、シドニー・J・フューリーによる芸のない硬質な演出に、オットー・ヘラーによる画のつくり方(何かの中からのぞいていたり、陰影の強い画調、赤色を生かしたセンス)が相まってなかなかの佳作に仕上がっていると思います。
横着な労働者階級のサラリーマンスパイの主人公をマイケル・ケインが飄々と演じていて好評だったそうで、この後に2作品を制作するシリーズ展開を果たすうえ、30年近くたってテレビシリーズが2作品制作されている。外部では、「オースティンパワーズ」の主人公はハリー・パーマーのギャグだし、シリーズ3作目では父親役でマイケル・ケインがそのまんま登場して楽しそうに演じている。「キングスマン」でもこれらからインスパイアされていると思われる部分もあるし(メインキャラクターの造形とか)キングスマンのリーダーのアーサー役でマイケル・ケインも出演している。思いのほか敷居の低い人らしい。
マイケル・ケインはショーン・コネリー以上のスパイ役者になってしまったなぁ。
今回は特にオチがないなぁ、と思ってマイケル・ケイン以外のキャストの方々になんか面白い話はないかと思ったらロス大佐役のガイ・ドールマンは「プリズナー№6」で№2をやってた方だったのね。コートニー役のスー・ロイドは「アベンジャーズ」「セイント」にも出てるし、一番驚いたのがジャック・ドゥミのカルト作「ベルサイユのばら」でポリニャック伯夫人を演じてるでないの。
みなさん頑張っていました


| | Comments (0) | TrackBack (0)

March 20, 2017

驟雨

成瀬巳喜男の作品って、実はあまり見ていない
こないだ「乱れ雲」見たくらいだもんな

さっぱり語ることができないまま今まで過ごしてきました。

で、たまたまご縁があってお話をする機会があった、とある有名な映画ライターの方に成瀬の作品でおススメされたのがこの「驟雨」

ちょうど原節子が亡くなったころで、原節子の特集などあった時期にBSで放映されたのを録画してあったので、おススメに従って何とかして見ようと思いつつ時間が経ってしまい…

ついこないだ、やっと見ることができた。

とても軽やかな、テンポのいいい編集に驚きました。

驟雨(1956年)東宝
監督:成瀬巳喜男

並木亮太郎(佐野周二)と妻の文子(原節子)は結婚して四年。住まいの最寄駅は小田急線の梅ヶ丘駅。子供はいない。この二人で結婚して四年というのはなんか違うような気がするが。
せっかくの天気のいい日曜日だというのに、亮太郎と文子はどこにも出かけるでもなく家にいた。
文子はせっかくの日曜日なのにどこにも連れて行ってもらえないことに不満がある。あまりお金に余裕もない。そんな文子に対して胃が弱いくせして亮太郎は屁理屈こねてやりこめて、ぷいと亮太郎は出かけてしまう。
家を出た亮太郎が見たのは、隣の家に越してきた今里念吉(小林桂樹)と雛子(根岸明美)の夫婦。引っ越し作業中の、内向的な文子とは違ってはつらつとして元気のいい雛子の姿についつい目線がいってしまう。
根岸明美スタイル良いなぁ。
文子が亮太郎に、出かけるなら、と頼んだハガキは玄関に忘れられていた。駅前に買い物に出てみると、やっぱいろいろ欲しいものはある。電器屋をのぞくとトースターとかミキサーとか、魅力的だけどお金のことが気になって、ひやかすだけでおしまい。ちなみに電器屋は佐田豊
念吉はそのさなかちらっと見た文子が気になっていたみたいで、現れたあや子(香川京子)に文子の所在を聞かれて「近所に買物でしょう」と買物かごを下げて出かけたと答える。これで雛子にちょっとイヤミ言われる。

文子が帰ると、新婚旅行に行っているはずの姪のあや子が待っているではないの。
ちょくちょく来るので面倒見てあげてるノラ犬も待っていた。
いきなり泣き出したりするので、聞けば新婚旅行での夫の行儀の悪い振る舞いに我慢ができなかったので帰ってきたとのこと。
そこに念吉は文子に引っ越しのあいさつをしに訪れ、そばの無料券を置いて行った。
行儀の悪いところを具体的にあや子に聞いてみると、列車に乗ったらいきなりグースカ寝てたり宿の中居さんにコナかけたりしてるとか、けっこうくだらない理由が続く。
おなかがすいてるだろうから、と文子はあや子にもらったばかりのそば券を使って出前をとるのでした。
文子は「夫婦なんてそんなもの。もっとひどいこともあるんだし、そんなことであなたを愛していないということにはならないんじゃないの?」と納得させようとするんだけど、あや子は「古い人と新しい人とは一緒にしないで。愛されているかどうは重要じゃない。一番は自分が愛されて幸福かどうかということだわ」
この答えにやや目が点になった文子。
そこに亮太郎が帰ってくる。
文子は腹が減ったという亮太郎にまたそばの出前をとることにします。
で、すぐ話が進むかというと、ご近所の黒林夫人(中北千枝子)が夫の靴をおたくの犬が持って行ってしまったので探してほしいと長々と文句を言いに来る。その相手をするのは結局は文子ひとり。
あなたも靴を捜してほしいという文子に亮太郎は、たまの日曜日に俺が靴を捜すのか?と偉そうに取り合わない。
改めて文子が、あや子に一番イヤだと思ったことを聞いてみると、あや子が言うには、一番我慢ならなかったのが、夫がたまたま一緒になった自分の知らない友人と一緒に飲み始めてしまい、騒ぎ出したのでひとこと注意をしたら二人で飲みに出かけてしまった。朝まで帰りを待っていたのにそんな自分を見てにやにや笑っていたのだそうな。もう東京に帰りたいと言ったら、付き合いというものがあるんだよという答え。「あなたは私に恥ずかしいとは思わないの?」と聞いたら自分は何も後ろ暗いことはしていない、変に思うのは君の勝手だと答えられた、というお話。
そのあとは口もきかずに東京に戻り二人は別行動だという。
亮太郎はあや子の夫の立場に立って彼の代わりに理屈っぽく申し開きをしてあげる訳だが、ちょっと立場は苦しい。文子と亮太郎が日々の互いの言動についてあれやこれや言うようになり、文子があや子の夫の話として亮太郎のふるまいについて文句を言うと(なんでも興味のない顔をするとか不精だとか)それを聞いてあや子はちょっと困ってしまう。この間に亮太郎は着替えて隣の裏庭に目をやると雛子が体操しているのが見える。雛子の姿についつい見入ってしまう亮太郎。
「相談するべきではなかったのよ。でもいろいろ参考になりました」と話のオチをつけようとするあや子でありました。そこでにわかに雨が降り出して、念吉に言われてあわてて洗濯物を取り込むやらどたばたとする文子。
本編で驟雨が見られるのは実はここんとこだけですな。

翌朝、亮太郎は念吉と一緒に歯をみかぎながら雑談
念吉のヨメさん雛子の若さをうらやむ亮太郎に対して念吉は文子のつつましさをうらやむのですが、このくだりでそれぞれの男たちがもつ感情がよくわかります。
文子は雛子と一緒に買い物に出かけます。その途中に雨山夫人(東郷晴子)と行き会い、あいさつなどするんだが、雨山夫人はかなり髪が白くなってるんだけどその理由など雛子に教えます。その傍らでは幼稚園の遠足を園長(長岡輝子)がにぎやかに引率してる。
黒林夫人、片倉夫人(出雲八重子)、大串夏子(水の也清美)にその後行き会い、雨山夫人についていろいろくさす会話を山の手言葉で皆さん繰り広げるのがまた奇妙で面白い。そうこうしてるうちに亮太郎が帰ってくるのに出くわしますが、帰る道すがら亮太郎は雛子を映画に行こうと誘います。当然、双方夫婦でグループデートというつもりなわけだがその約束の日、文子はやはり行きたくないと不参加。お隣の念吉も頭が痛いと言い出して不参加なので映画には雛子と亮太郎の二人で出かけることになりました。
文子は一人で買い物に出かけるのですが、大村千吉演ずる下駄の露店のたたき売りの口上に聞き入って人の輪に入っていたら財布をスられてしまいます。やはり大村千吉の口上などに聞き入ってはいけない。
翌朝、亮太郎は上機嫌で前夜に見た夢など文子に語ります。そこで文子は財布をすられたことを亮太郎に伝えます。そのまま不機嫌な感じで亮太郎は出勤しようとしたところで念吉と出くわしますが、雛子が昨日お世話になったと礼を述べるのがあまり面白くない表情。園長先生はホウキ持って犬を追っかけてます。で、亮太郎を見て園長と雨山夫人があの犬はあそこの家のだとひそひそ話。チャボ食われたとかいろいろと迷惑してるとひそひそ噺。
亮太郎が出社すると部長(恩田清二郎)が昼休み前に集まるように号令。同僚の川上(加東大介)はどうせろくな事じゃないと言いますが、ほんとに部長の用件はろくなもんじゃなかった。提携先から営業部に人員が送り込まれてくるので4名の余剰の人員が生じるので退職希望をつのることになったという話。その代り希望退職の場合は退職金は割増されるという言葉に営業部社員の心は揺れるのでした。亮太郎は深刻な表情で貧乏ゆすりです。
その夜社員寮で川上ほか同僚(堺左千夫堤康久)と麻雀打って亮太郎は勝ちますが、やはりそこでの話題は会社を辞めるかどうかということ。退職金の割り増しつきなら…と心が揺れるサラリーマンたち。結局徹マン。駅まで迎えに出てた文子は、亮太郎の帰りをあきらめて家に帰りますがその途中、焼いも屋から焼いもを購入。
翌日、文子は亮太郎に日本橋の白木屋に呼び出されます。その白木屋の屋上では亮太郎は旧友の三輪(伊豆肇)と会っていました。ここの会話で、亮太郎は外国文学の専攻だったことがわかるわけで彼が理屈っぽいキャラなのも理解できます。プロレタリアートの嘆きも語るしな。「今は食うことが仕事」と言い放つことから、この人にも夢とかあったんだなと判ります。ちなみに三輪の奥さんは塩沢登代路(塩沢とき)けっこうブルジョアな暮らしのようで、買い物は車に…なんて夫に伝えてます。
そんな三輪夫婦の姿を見て気後れする文子でしたが、彼らが去った後に亮太郎のもとへ行きます。
すられた財布の件をわびると亮太郎、「カネは麻雀で取り返した」と返します。それを聞いてべそをかく文子。二人は連れ立って甘味処に入ります。三輪のことを聞かれて亮太郎、あれは親の後を継いだだけで苦労してない、田舎に帰れば俺だって…などとひがみを語りだします。で、割り増しになった退職金を持って田舎に引っ込んで暮らそうと文子に提案するわけだけど、彼女はあまり乗り気でないみたい。
文子が家に帰ると雛子が待っていて、園長先生に押し付けられた、犬にやられた鶏を渡される。買い取ることになっているということで雛子は園長先生にぐちぐち語られたことでちょい頭にきたものだから、そこで言われた文子と亮太郎の悪口をばらしてしまう。
自分からはあいさつしないだとか、焼いも屋が来ればすぐ買いに走るとか、安いから豆腐ばかり買っているとかいう話を聞かされて文子もカチンときてしまいます。でも豆腐は買う。
いろんなところで胃の心配されている亮太郎、念吉に文子の仕事を紹介すると言われてちょっとおかんむり。彼が帰ると川上はじめ同僚たちが待っていた。川上は近所の小森(松尾文人)という男を連れてきています。川上は「名案がある」と語るのでした。
酒を買いに出た文子、園長に呼び止められご近所の親睦を図る平和会議に出席するよう誘われます。
川上の語る名案とは、四人の退職金を合わせて串かつ屋をやろうというもの。どんな感じの店にしようかという話になったとき、モダンで上品な感じにしたい、ということで川上は文子みたいなつつましい感じでやればいいんじゃないかと言い出します。忙しいかもしれないけど文子に一人で店のサービスをやってもらうのがいい!なんてことで亮太郎以外は意見が一致。聞いている文子は面白そうにしていますが亮太郎は面白くない。そこに念吉がご近所会議に誘います。
会場の幼稚園に着くと、議題になってるのは犬の話。そこから始まって近所のいろいろ不平不満が語られます。結局は大した中身にならなかったみたい。
終わって文子が家に戻ると川上たちは亮太郎が帰したあとでした。文子を皆が外に出て働くようアプローチするのがとにかく面白くない亮太郎。文子は自分はその話を面白いと思ってたのに亮太郎がひがんでいると言います。文子は前々から共稼ぎしたいと言っていたわけで、結局は口論になってしまいます。「話がある」と言う亮太郎に背を向けて涙している文子、立ったまま飯をかっこんでました。「だっておなかすいてて泣きそうだったんですもの」
亮太郎は「おれは一人で田舎に帰る。君は残ってバーでもなんでもやっていればいい」と文子に告げます。
でも文子は「それもいいわね。二言目には田舎田舎というけど弟さんがやってるんですよ。長男だからって勝手に転がり込んで食べるだけは何とかなるだろうなんてそんな甘い考えだめよ。十万円の加算金がそんなに欲しいの?あたしにだってそれくらいのお金何とかなるわ」
と売り言葉に買い言葉。いつもの反応じゃなくて反論される亮太郎。こうなりゃ別居だってやむを得ないという亮太郎に「ひとが真面目に働こうと言ってるのに封建的だわ。田舎に行けばコメがぶら下がってると思ってるのね。胃袋がたるむと気持ちまでたるむものかしら」
などときつく言い返されてしまう亮太郎。なにか云いたそうな亮太郎=佐野周二の表情が印象的。

あくる朝、文子と亮太郎は会話もなく朝ごはん。そこにあや子から手紙が届き、夫とは何とかうまくやっているとの文面と夫とのツーショット写真が同封されていました。
亮太郎が縁側に向かい新聞を読んでると隣の家の庭で遊んでいた女の子たちの紙風船が亮太郎の家の庭に入り、「おじさん風船とって」と頼まれます。
拾ってぽんと叩いて返そうとすると、これがこれがなかなかうまくいかない。亮太郎がひとりで紙風船に苦戦してるといつのまにか文子も庭に出て紙風船をついて、結局は文子と亮太郎の二人で紙風船でもってラリー開始。
「もっと強く!」
「その調子!」
と亮太郎に気合をかける文子。そんな二人の姿を見て「昨夜ケンカしてたのに勝手なもんだ」と念吉&雛子は不思議そうに呟くのでした。


すごい軽やかなコメディといえばコメディ、でもとにかく不思議な感覚の物語ではあります。
まずツッコミ入れたくなるのが佐野周二と原節子の夫婦が結婚して4年目という点で、この二人どんだけ晩婚なんだと思うところはある。でも、まず見てて感心するのは映画的な画面のつくり。亮太郎は変に理屈っぽいキャラで、最初は「何だこいつ」と見てて思うんだけどこの人の人間的なものが物語の進行に合わせてどんどん判るつくりになっている。何かあると貧乏ゆすりするんだが、その時にちょっとくたびれた靴が画面に示されるというカットにもこの人の生活とか性格とかが表れてて、ホントに映画的な表現が多いなぁ。ムダな説明的なセリフとかはなくて、画をみれば判るようなまとめ方。ほかにもいっぱい細かいニュアンスを示す画面がいっぱいあるんだけど、実際にこれは作品を見れば理解できるだろうなぁ。こうやって文字にするのが大変なのよ。文子のことを自分で何とかしてやりたいという気持ちもうまく伝わらない、そんなちょっとかわいいキャラの亮太郎もそんな表現の積み重ねで示されてる。
奥様同士の会話の山の手言葉の連発とか、あや子が並木家に現れて文句を述べたらこれが文子の文句にすり替わってるような流れとか、買わされた鶏を鍋にして食べる様子にご近所の平和会議のくだりは本当に喜劇的。個人的には、文子=原節子が財布をすられてしまうきっかけになった露天商が大村千吉というところに妙に納得がいってしまい笑いましたが。
性的なものが露骨に表現されているわけではないけど、亮太郎が隣家の雛子をにこやかに眺める様子とか、逆に念吉が文子に見入ってしまう様子とか、ちょっと含みのある描写が面白い。
含みがあると言えば、なんでか尺をとっている会話もある。亮太郎と念吉の歯を磨きながらの会話とか、亮太郎が昨晩見た夢を語る、その内容とか。作品の流れの中でなぜか軽く流されるわけでなく「ある」わけで,念吉なり亮太郎のキャラをソフトに示す材料になってる気がするな。他にも何かをつなげるものになってるような感じがする。歯磨きのくだりは、それぞれのヨメさんのキャラを示す手掛かりになってはいるわけですが。
もともとは岸田國士の戯曲を何作か組み合わせて映像化したものだそうだけど、もとが戯曲だとあまり映画にするのに手を入れないような気がするがこれはそうでもないだろうな。
これ見てて、素直に原節子ってきれいだなぁと思ったのが、最後の方で立ったまま猫まんまみたいなのかっ込んでるカット。やっぱ昔の女優さんはきれいです。
小津ならこんな感じの映画を撮ることができただろうかなぁ。成瀬の実験精神をしっかり発揮した作品になってると思います。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

«カウンター